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【土木工学分野】地震にも津波にも強い建物を目指して! 新型建築素材からワークショップまで

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崔琥研究室

担当教員 崔琥 教授
学部/学科/コース 理工学部 /建築学科
所在地 静岡県袋井市豊沢2200-2

このゼミ・研究室の研究テーマ

地域の再生
  • 震災復興支援
  • 防災対策
持続可能な社会の実現
  • 環境破壊
関連キーワード
  • 耐震ブロック
  • キーブロック
  • 加速度センサー
  • 防災力

施工不良が起きにくい新型の耐震ブロックを考案

2018年の大阪北部地震地震において、ブロック塀が倒れて児童が亡くなる事故がありました。これを受け、全国の自治体は助成金を出してブロック塀の撤去を推進しようとしています。しかし、建築学科の崔琥教授は多少の違和感を覚えています。「ブロック塀は、指針どおりに造れば倒れません。(前述の動きは)個人的には納得できない面があります」。しかし、安全性を確認するのはかなり難しく、きちんと施工したという話を信じるしかないとも話します。

そこで崔教授は、施工不良が起きにくい新型の耐震ブロックを考案しました。ブロックは、上の段と下の段で半ブロック分ずらしながら積み上げます。ブロック同士をつなぐのはブロックと同じ材質でできた「キーブロック」と呼ばれるH型の部品。このキーブロックを左右、および上下のブロックをつなぐようにはめ込みます。ブロックが上段と下段で互い違いになっていること、キーブロックでブロック全体がつながっていることで、高い耐震性能が得られる仕組みです。またモルタルを使わないので、組み上げるのも簡単です。「これで十分、優れた耐震性を発揮します。検証のため、高さ2mの塀を造って振動台で実験したところ、既存ブロックの塀は倒れましたが、新型ブロックの塀は倒れませんでした」。

モルタルで接着しないので、ブロックは、ばらして再利用することも可能です。また、モルタルを使わないことは、国際展開でも有利に働く可能性があります。水分の凍結が起こる寒冷地ではモルタルの施工に手間がかかり、ロシアなどでは嫌われています。また、東南アジアでは専門工ではなく住民自らが施工します。水も専門工も必要としない耐震ブロックは、海外でも注目を集めるに違いありません。

スマートフォンを用いた建物の被害評価とは?

崔研究室では、耐震ブロックを含め、建築物の耐震性や耐津波性の評価を大きなテーマに掲げています。韓国の大学で学んでいたときから、安全で強い建築物を造ることには興味を持ち、テレビで阪神・淡路大震災を見た時に耐震の研究に進もうと決め、日本に留学することにしたと言います。

「東京大学の助教時代には東日本大震災がありました。津波によって建物が破壊される映像を見た時、既存の建築学には、水害に対する知見がほとんどないことに愕然としたのです。所属研究室で国の研究費を得て耐津波性の評価に取り組み、成果は国のガイドラインに反映されています。静岡県から要請を受け、国のガイドラインを実際の建物に適用するための耐津波性診断マニュアルも作成しました」。

崔教授が本学で取り組んでいるテーマの一つが建物の被害評価であり、スマホ内の加速度センサーを使うユニークな研究も行っています。例えば自宅の1階と2階の壁にスマホを貼り付けておけば、地震によって生じた加速度が分かります。この加速度に質量を乗じた値から建物にかかる力(荷重)が判明し、加速度を2回積分すると動いた距離(つまり建物の変形)が分かります。荷重と変形によって建物がどのくらい損傷したのかが推定できるのです。

この研究は、崔教授が日本損害保険協会の委員会で思いついたものです。「地震保険の損害評価には3段階あり、それに応じて保険金が支払われますが、契約者と損保会社の間でもめることが少なくありません。正確なデータがあれば、そうした紛争は減るでしょう」。近く、学内でスマホによる損害評価システムの実験を始める予定です。

地域ごとに必要な診断と防災力アップを

企業と地域、本学の三者で進めている防災力向上の活動も、研究テーマの一つです。中部電力の支援を得て、袋井市の長溝地域で防災をテーマにしたワークショップを行いました。

第1回:地震災害について知る
第2回:地域の現状を把握する(まちあるき)
第3回:地域の現状を見える化する(図上訓練、マップ作成)
第4回:地域の課題を抽出し解決方法を検討する
第5回:避難所運営ゲーム(HUG)を実施する
第6回:総括および今後の取り組みについて

崔教授は「学生も参加し、成果を基にした論文を書きました。また、ドローンによる撮影や、国土地理院のデータを基に高低差を含む詳細な地図作成も進めており、研究にもつながりそうです」と期待していました。

このほか、崔研究室では、海外における学校の建物の耐震性評価も進めています。日本の学校はほぼ100%耐震補強が完了していますが、韓国や中国などでは未だ十分な対応が採られていません。そこで、これらの国に出向き、基本的な状況把握を始めています。

一方、日本では津波発生時に住民が避難できる建物が多数選定めた津波レベルで倒れないかどうかの診断を実施していない自治体も見受けられます。一刻も早くこうした診断が実施できるように働きかけていきたいと話されました。

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【土木工学分野】河川堤防のリスクを察知! 暮らしを、地域を、生命を守る水工学

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松本研究室

担当教員 松本 健作 教授
学部/学科/コース 理工学部 /土木工学科
所在地 静岡県袋井市豊沢2200-2

このゼミ・研究室の研究テーマ

地域の再生
  • 地域の活性化
  • 防災対策
健康な生活の実現
  • 防災・防犯
持続可能な社会の実現
  • 異常気象
関連キーワード
  • 流動地下水
  • 深地温探査
  • 機械学習システム
  • 河川伏流水
  • EC振動

流動地下水の特定から危険地域を絞り込む

異常気象という言葉が毎年のようにニュースになる現代の日本。2004年は特に被害が大きく、土砂災害は2,537件にも上りました。国土交通省はこの年、堤防などの河川管理施設を対象に全国一斉の緊急点検を指示。しかし、現場からは「点検箇所が多く、人的な制約や時間的に厳しい」という悲鳴にも似た声があがりました。自治体の約8割から「予算制約があり十分な対策ができない」という回答も返ってきたのです。その後も激しく様変わりしていく自然の猛威に対して、少ない人員、少ない予算で点検やメンテナンスに取り組んでいく上での課題があぶり出されてきました。

こうした課題の解決には土木工学が対応するべきと話すのは、土木工学科の松本健作教授。松本教授が注目しているのは地中の「流動地下水」です。流動地下水は堤防の漏水や山地斜面の地滑りを引き起こすきっかけになりやすく、これを簡便な方法で探査/推定できれば防災につながるからです。

注目した方法は、地下1mの温度を測定して周辺と温度が違うゾーンを探る「1m深地温探査」です。複数の測定点のデータや現場の地形などから流動地下水の存在位置を高精度に特定するのですが、それには熟練の技術が必要となります。そこで松本教授は画像認識に広く使われる機械学習システムを用いて熟練技術者と同じように推定できるアプローチに挑戦しました。測定データの学習を繰り返すことでシステムの指定精度は高まり、テストでは熟練技術者に近い推定ができるところまできましたが、まだ課題も残っています。

河川伏流水の電気伝導度を測定するアプローチを考案

松本教授は別の絞り込み方法にも着手しています。流動地下水のなかでも注視しなくてはいけない「河川伏流水」。河川伏流水とは河川の近くに存在して、河川から浸透した水と混じり合う地下水のこと。一般的には河川の水位が上がると河川伏流水の流量も増え、場合によっては地下を流れる限界を超えてしまい、地表に湧き出してしまうこともあります。

これに対して松本教授は、河川伏流水の電気伝導度(EC:Electric Conductivity)を測定することでリスクを推定するアプローチを考案しました。利根川水系の桐生川堤防付近に観測孔を掘り、地下を走る河川伏流水のECを測定したところ、ある深さを境にECの値が大きく変動しました。そしてそのEC変化帯では、通常では一定値を示すはずのEC値が定まらずに振動し続ける「EC振動」という現象を世界で初めて実測。伏流水の流動場に水質の異なる河川水が局所的に混入し、激しくかく乱することが原因であると突き止めました。

この局所的に混入する河川水が、堤防決壊リスクとなる「漏水」を引き起こす。つまり「EC振動」を検知できれば河川堤防の弱点を見つけ出せるのではないか、というアイデアです。この方法が使えるようになれば、本格的な調査を行うかどうかを判断する一次診断として活用できるでしょう。

※電気伝導度(EC)…物質中の電気伝導のしやすさを表す指標

生態系の観察が防災のヒントに!?

更に桐生川堤防付近の観測孔の生態系を調査したところ、多種多様な地下水生生物群が見つかったのですが、不思議なことに30mしか離れていない別の2ヶ所の観測孔から見つかった生物群は、生物種の数も個体数も大きく異なっていました。観測孔は30mしか離れていないが、生物にとっての環境が異なっているのです。「地下水生生物を調べることで地盤特性を推測できないか」。この松本教授ならではの柔軟なアイデアやユニークなアプローチは、「新しい研究分野を役立つものにしたい」という思いの証でしょう。

土木工学には「土質力学」「構造力学」「水理学」という三つの力学分野があります。川の氾濫や土砂災害が大きな問題となってきた日本では、「土」と「水」の研究者がその垣根を越えて協力し、より深くメカニズムを解明することが強く求められています。

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