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【土木工学分野】河川堤防のリスクを察知! 暮らしを、地域を、生命を守る水工学

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松本研究室

担当教員 松本 健作 教授
学部/学科/コース 理工学部 /土木工学科
所在地 静岡県袋井市豊沢2200-2

このゼミ・研究室の研究テーマ

地域の再生
  • 地域の活性化
  • 防災対策
健康な生活の実現
  • 防災・防犯
持続可能な社会の実現
  • 異常気象
関連キーワード
  • 流動地下水
  • 深地温探査
  • 機械学習システム
  • 河川伏流水
  • EC振動

流動地下水の特定から危険地域を絞り込む

異常気象という言葉が毎年のようにニュースになる現代の日本。2004年は特に被害が大きく、土砂災害は2,537件にも上りました。国土交通省はこの年、堤防などの河川管理施設を対象に全国一斉の緊急点検を指示。しかし、現場からは「点検箇所が多く、人的な制約や時間的に厳しい」という悲鳴にも似た声があがりました。自治体の約8割から「予算制約があり十分な対策ができない」という回答も返ってきたのです。その後も激しく様変わりしていく自然の猛威に対して、少ない人員、少ない予算で点検やメンテナンスに取り組んでいく上での課題があぶり出されてきました。

こうした課題の解決には土木工学が対応するべきと話すのは、土木工学科の松本健作教授。松本教授が注目しているのは地中の「流動地下水」です。流動地下水は堤防の漏水や山地斜面の地滑りを引き起こすきっかけになりやすく、これを簡便な方法で探査/推定できれば防災につながるからです。

注目した方法は、地下1mの温度を測定して周辺と温度が違うゾーンを探る「1m深地温探査」です。複数の測定点のデータや現場の地形などから流動地下水の存在位置を高精度に特定するのですが、それには熟練の技術が必要となります。そこで松本教授は画像認識に広く使われる機械学習システムを用いて熟練技術者と同じように推定できるアプローチに挑戦しました。測定データの学習を繰り返すことでシステムの指定精度は高まり、テストでは熟練技術者に近い推定ができるところまできましたが、まだ課題も残っています。

河川伏流水の電気伝導度を測定するアプローチを考案

松本教授は別の絞り込み方法にも着手しています。流動地下水のなかでも注視しなくてはいけない「河川伏流水」。河川伏流水とは河川の近くに存在して、河川から浸透した水と混じり合う地下水のこと。一般的には河川の水位が上がると河川伏流水の流量も増え、場合によっては地下を流れる限界を超えてしまい、地表に湧き出してしまうこともあります。

これに対して松本教授は、河川伏流水の電気伝導度(EC:Electric Conductivity)を測定することでリスクを推定するアプローチを考案しました。利根川水系の桐生川堤防付近に観測孔を掘り、地下を走る河川伏流水のECを測定したところ、ある深さを境にECの値が大きく変動しました。そしてそのEC変化帯では、通常では一定値を示すはずのEC値が定まらずに振動し続ける「EC振動」という現象を世界で初めて実測。伏流水の流動場に水質の異なる河川水が局所的に混入し、激しくかく乱することが原因であると突き止めました。

この局所的に混入する河川水が、堤防決壊リスクとなる「漏水」を引き起こす。つまり「EC振動」を検知できれば河川堤防の弱点を見つけ出せるのではないか、というアイデアです。この方法が使えるようになれば、本格的な調査を行うかどうかを判断する一次診断として活用できるでしょう。

※電気伝導度(EC)…物質中の電気伝導のしやすさを表す指標

生態系の観察が防災のヒントに!?

更に桐生川堤防付近の観測孔の生態系を調査したところ、多種多様な地下水生生物群が見つかったのですが、不思議なことに30mしか離れていない別の2ヶ所の観測孔から見つかった生物群は、生物種の数も個体数も大きく異なっていました。観測孔は30mしか離れていないが、生物にとっての環境が異なっているのです。「地下水生生物を調べることで地盤特性を推測できないか」。この松本教授ならではの柔軟なアイデアやユニークなアプローチは、「新しい研究分野を役立つものにしたい」という思いの証でしょう。

土木工学には「土質力学」「構造力学」「水理学」という三つの力学分野があります。川の氾濫や土砂災害が大きな問題となってきた日本では、「土」と「水」の研究者がその垣根を越えて協力し、より深くメカニズムを解明することが強く求められています。

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【建築学】健康に良く省エネも実現する空調システムを追求

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鍋島研究室

担当教員 鍋島 佑基 准教授
学部/学科/コース 理工学部 /建築学科
所在地 静岡県袋井市豊沢2200-2

このゼミ・研究室の研究テーマ

技術の革新
  • イノベーション
持続可能な社会の実現
  • 環境破壊
関連キーワード
  • デシカント・ローター
  • 脱離サイクル

効率良く快適な湿度に調整する仕組みとは!?

建物内を快適な空間にしようという機運が高まる中、鍋島佑基准教授は「デシカント空調システム」に注目しています。デシカント(desiccant)とは乾燥剤のことで、水蒸気を吸着する素材を湿度調整に使います。

「デシカント空調システム」を用いて蒸し暑い夏に冷房と除湿を同時に行なっているときの流れをイメージすると、外からの湿った空気をデシカント・ローターに通すことで水蒸気を吸着し乾燥します。湿度調整が終わった空気を温度調整機構に送り、温度を下げた後、室内に供給。一方、水蒸気を吸着したローターは半回転し、熱した空気(エアコンの排熱や太陽熱など)を吹きかけて、水蒸気を脱離し外に放出します。

通常のエアコン(コンプレッサー方式)でも除湿はできますが、「結露」を原理に水分を取り除くため、過剰な冷却と加熱という相反する処理によってエネルギーの無駄が生じます。また、空調機内部に結露があるとカビが発生したりメンテナンスの手間が増えるなどの問題が生じるのです。

デシカント空調システムは、これらの問題を解消します。外気導入が前提なので、コロナ禍の室内換気にも対応。室内の空気だけ温度を下げる従来のエアコンとの差別化になっているのです。

普及促進のカギ、素材の低価格化に挑戦

普及のネックは価格で、特にデシカント・ローターの素材です。鍋島准教授は複数の吸着剤で性能を調査しています。一般空調が対象とする温度・湿度範囲であれば、吸着剤に能力差があってもデシカント空調システムにとっては、ほとんど性能差がないことが分かっています。

そこで、鍋島准教授は、あるデシカント・ローターに温度・湿度センサーと無線モジュールを取り付けて、ローター内部の吸着・脱離の様子を可視化することに着手。約10分で1回転させていたときは、ほぼ吸着能力いっぱいの水蒸気を吸着・脱離していましたが、2分で1回転にすると、吸着する量が能力いっぱいになる前に脱離サイクルに移ってしまう様子が確認できました。

これによって、ローター開発に一つの指針が得られます。多くの水蒸気を長い時間かけて吸着する高価な素材よりも、適度な量の水蒸気を短い時間で吸着・脱離する素材がローターには向いているということです。

工夫次第で、空調システムのスタンダードに

また、除湿能力を上げるには、素材だけでなく実装技術の工夫が大事なのかもしれません。1時間に除湿できる水分量は(1サイクルで吸着できる水分量)×(1時間あたりのサイクル数)で決まります。除湿能力を上げるためサイクル数(回転数)を上げたくなりますが、素材の特性に合わせて回転数を最適化する必要があります。

素材が広い面積で空気と接するよう、素材の加工やローターの作り方を工夫することも重要。安い素材でも工夫次第で性能を伸ばせる可能性はありそうです。

デシカント空調システムは何社かが製品として販売していますが、導入しているのはカビの発生を問題視する食品加工の工場や美術館、室内環境への関心が高い病院や学校、オフィスなどです。価格が下がれば一般のオフィスや家庭にも導入され、蒸し暑い東南アジアも大きな市場になるでしょう。室内建築に携わる人は、デシカント空調システムの特性と価格動向を知り、適切な提案ができる必要があるかもしれないと考えています。

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