青山学院大学 私立大学

人類文明の持続可能性の観点からエネルギー問題を考える

【経済学部/岸田 一隆 教授】
■課題解決に挑む学問
総合・教養>>教養学
■該当するテーマ
環境
議論はされているがコミュニケーションは成立していない

天然ガス、原油、石炭、原子力、水力、風力、太陽光。私たちが日常生活や社会活動を維持するためにはこれらのエネルギーが不可欠ですが、資源に乏しい日本では、そう遠くない将来、国民の一人ひとりがエネルギーに関する重要な選択を迫られます。例えば、脱原発を進めるのか否か。それを決めるのは国や政治家だと思われるかもしれませんが、日本では国民に選択権があります。しかし今、原子力エネルギーに関する議論は二極化しています。推進派も反対派もそれぞれの主張を繰り返すばかりで、相手の意見を聞くつもりがないように見えます。それは専門知識を持つ科学者と
一般市民の関係についても同じことが言えます。つまり、議論はなされているがコミュニケーションは成立していないという状態です。では、どうすればコミュニケーションによってエネルギー問題を解決し、持続可能な社会の実現を目指すことができるのでしょうか。
人間が倫理観・価値観をどう形成し、どう変えてきたかを学ぶ

「そのためには、人類文明のあり方から考え、人間がどのようにして倫理観・価値観を形成し、どのように変えてきたか。そして集団の合意形成をどのようにして成し得てきたかを学ぶ必要があります」エネルギー問題を人類文明の持続可能性の視点で研究している青山学院大学経済学部の岸田一隆教授はそう話します。どうすればコミュニケーションの手法としての倫理観・価値観を変えられるか。どうすれば世の中を変えられるか。岸田教授は全学共通の「エネルギー論」や「科学・技術史」「科学コミュニケーション」に関する科目を通じて前提となる知識を提供したうえで、そう問いかけます。そして学生たちは近い将来、エネルギーを選択する当事者として1つではない答えを探します。共感・共有を大切にしているため、授業は教授がどんな質問にも答える質問コーナーを挟みながら進行。物知りになるのが目的ではないので、試験では文献の持ち込みを許可しています。
授業とアド・グルの活動を通じて正しい選択ができる人を増やす

青山学院大学には、学生が教員を選びサークル感覚で参加できる『アドバイザー・グループ制度』(通称:アド・グル)があり、岸田教授は人類文明の持続可能性について考えるグループを主宰。これまでに、高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する研究開発施設『幌延深地層研究センター』、国内最大級のメガソーラー『ユーラス六ヶ所ソーラーパーク』の見学ツアーなどを実施。年に一度は業界の著名なゲストを招いての勉強会も行っています。こうした活動と授業を通じて、エネルギーに関する正しい選択ができる人を増やす。それが、エネルギー問題を解決し、持続可能な社会の実現を目指すための岸田教授の答えです。「時間はかかりますが、これが最善の策。ここで学んだ皆さんから健全なコミュニケーションが広がり、幼いお子さんを持つ親御さんたちが当事者として議論に参加できるようになれば社会は変わる。そう信じています」
- 学校No.124