高校生のための進学ガイド

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【入試対策】小論文編

読解力や論述力が総合的に問われる小論文の基本的な対策を解説!

大学・短期大学の学びでは、高校までの学習とは異なり、自ら課題を見つけ、掘り下げ、研究する力が求められます。この能力をはかるため、多くの大学で採用されているのが小論文試験です。学校推薦型選抜や総合型選抜で課される場合が多いですが、一般選抜で採用している大学・学部学科もあります。教科ごとの基礎学力だけでなく、読解力や発想力、思考力、論述力が総合的に試される小論文。「どう考え、読み手をどう納得させるか」「いかに分かりやすく論理的に書くか」がポイントです!

小論文とは?

  • 理由や根拠を示しながら自分の意見や主張を述べる小論文

    そもそも小論文とはどのような文章でしょうか? これまでに書いてきた作文とはどう違うのでしょうか? 一般的に、自分の体験や感想を表現力豊かに書く作文に対し、自分の意見や主張とその理由を論理的に述べるのが小論文です。作文に比べて、自分で問題を発見する力や考える力、説得力が求められます。入試で出題される場合、出題の形式や内容は多様です。特定のテーマが与えられる場合は、時事問題など一般的なテーマから専門分野に関するテーマまでさまざま。また、長文の課題文や表・グラフなどの資料を読み解くタイプもあれば、志望理由や自分の興味・関心のあることについて書く場合もあります。

  • 小論文の傾向と対策を知る

    小論文は大きく以下のようなタイプに分けられます。志望する大学・短大の過去問をチェックし、その傾向と対策をしっかり把握しておきましょう。

  • テーマ型の小論文

    与えられたテーマについて自分の意見を論述するタイプの小論文です。テーマは時事問題に関するものや、志望する学部・学科の分野に関するものなど多岐にわたります。社会問題や最近話題になったこと、志望する分野に関するニュースやキーワードなど、世の中の出来事について日頃から情報収集をしておきましょう。そして、それについて問題意識を持ち、自分の意見を考える習慣をつけることが、このタイプの小論文を書く基礎作りとなります。

  • 課題文を読んで論述する小論文

    比較的長文の課題文を読み、その内容を把握した上で、自分の意見を説明・論述するタイプです(英文の場合もあります)。まず大切なのは、課題文を注意深く読み、主張を的確に読み解くこと。それに対して自分なりの解釈を加え、意見を組み立てていきます。書く力ももちろん必要ですが、前提として求められるのが読解力。いろいろな種類の文章に触れ、読む力を鍛えましょう。

  • 図表やグラフを分析して論述する小論文

    資料として与えられた図、表、グラフなどを読み取り、分析した結果を論述するパターン。理系の学部や経済学部、福祉・教育系の学部など、入学後に図表などの読み取り能力が必要な学部に多いタイプです。入試によっては写真や絵など視覚的な資料が与えられる場合もあります。読み取る能力に加え、それをしっかり言葉として表現し、筋道立てて結論へと導くことが大切です。

  • 学部・学科への志望理由などを問う小論文

    志望理由を問うのは、その人が学部・学科の学問についてどの程度興味を持ち、自分なりの展望を持っているかを知るためです。学部・学科を志望する動機、入学してから勉強したいこと、その大学を志望する理由、卒業後の希望進路や学んだことをどう活かしたいかなどを、順序立てて論述していくと良いでしょう。志望理由を述べる上では、その大学の理念や教育方針を理解しておくことも必要です。

  • 採点者がチェックするポイント

    • 基本的な読み書きの力はもちろんですが、「問題を発見する能力があり、自分の考えを持っているか」「論理的に述べられているか」「創造力や説得力があるか」などが重要な採点ポイントになります。また、「行きたい学部・学科の学問について知識があるか」についてもチェックされます。このあたりを念頭に置きながら、自分が書いた小論文を採点者になったつもりで読み返してみましょう。

小論文を書く際のポイントと注意点

  • 構成や内容、文体など小論文の基本的な書き方を理解しよう!

    与えられた時間と字数の中で自分の意見を論理的に書くことは、なかなか難しいものです。ここでは、小論文を書く際のポイントと注意点をまとめました。ポイントを理解し、演習問題を繰り返すことで、小論文ならではの書き方に慣れていきましょう。また、書いたものは高校の先生など第三者に添削してもらってください。客観的に評価されることで、自分の弱点を知ることができます。ただし、やはり大事なのは自分自身の知識や経験を増やし、何事にも疑問を持つ姿勢や自分なりの価値観、語彙力を普段から培っておくことです。新聞や本などを読むことを心がけたり、いろいろな人に話を聞いたりして、引き出しを増やしましょう。

  • 何を問われているのか、出題の意図を的確に把握しよう!

    ・まず、落ち着いて出題内容をしっかり理解することから始めましょう。何が要求されているのかをきちんと把握することが大前提です。

    ・課題文や資料がある場合は、その内容を的確に読み解くことが大切。筆者が何を主張しているのか、資料から読み取れることは何なのかをじっくり見ていきましょう。

  • 書き出す前に自分の意見や考えをまとめよう

    ・課題文やテーマに対し、どのような意見を主張するのかを決めましょう。

    ・その意見を主張する理由をいくつか挙げてみましょう。さらになぜそう思うのか、根拠を箇条書きにしてみましょう。

  • 考えた構成に沿って、論理的に書き進めよう!

    ・自分の考えをどのような流れで論述していくのか、構成を考えましょう。
    「①何についてどう考えるのか②その理由③まとめ」の三段構成が基本です。
    ・メモした内容をもとに、実際に小論文を書き進めます。

  • こんなことにも注意しよう!

    ・段落の書き出しは一字下げる

    ・主語と述語の関係にずれが生じていないか、接続詞は正しく使われているか、誤字・脱字がないかを確認

    ・倒置法など、文学的でまわりくどい表現は避ける

    ・指定された文字数の範囲を守る

小論文の書き方

  • 基本は構成(型)を作ること

    「序論・本論・結論」の構成は、分かりやすくよく使われます。まず、序論では問題文章を踏まえて問題提起をします。その上で、自身の考えの大きな方向性を主張します。続いて本論では、序論で述べた自身の主張の根拠を説明していきます。ここでは、小論文の内容に説得力を持たせるため、可能であれば主張の基にした事実なども踏まえながら、客観的な文章になるよう心がけます。そして、最後に結論として、自身の主張を再度提示します。

    • 【序論】私の教育観は、家庭がどんな状況であっても、子どもがその子らしく過ごせるようにサポートし、その子らしさを生かした教育を行うことである。

    • 【本論】年代ごとの傾向はあるにせよ、子どもはそれぞれ違った性格を持っている。

    • 【結論】子ども一人ひとりと丁寧に向き合い、誰もがその子らしくのびのびと輝くことができるよう見守りたい。それが私の理想とする教育観である。

  • 「問題提起・反論(反対の意見)・持論(自分の意見)・理由・結論」を作る

    この型では、自身の主張の説得力をより高めるため、あえて自身の主張に対する反論を用意します。まず、問題提起でこれから論述する問題の内容と自身の主張の方向性を述べた後、反論として自身の主張に対抗する主張を提示します。その上でその反論がなぜ無効なのかを述べつつ、持論に入ります。持論の理由を、客観的なデータなどを適宜引用しながら書いていきます。そして最後に、結論として自身の主張を再度提示し、文章を終えます。この型で注意したいのが、持ち出した反論の説得力を残さないこと。反論の方に説得力がある状態では、いくら自身の主張の根拠を説明しても、持論が持つ説得力が弱くなってしまいます。

    • 【問題文章】高等学校への電子辞書の持ち込み禁止について、あなたの意見を述べなさい。

    • 【問題提起】高等学校への電子辞書の持ち込みは禁止すべきだろうか。

    • 【反論】調べたかった語の周辺にある語も覚えられるため、紙の辞書を使うべきだ。

    • 【持論】しかし、私は紙の辞書を使うよりも電子辞書を使う方が効率的に勉強を進められると考える。

    • 【理由】また、先日私の通う高等学校でも電子辞書の持ち込みが禁止されたが、紙の辞書を使うようになると授業の進みが遅くなり、生徒が電子辞書を使っていた時は1時限内に終わらせられていたプリントが終わらせられなくなった。(略)電子辞書の中にも、検索結果に類語検索が含まれ、関連語句を併せて覚えられるものがある。(略)

    • 【結論】以上の理由から、私は高等学校への電子辞書の持ち込み禁止には反対である。

過去の傾向を知ろう!学部・学科別の対策すべきテーマと例文

  • 【法学】憲法9条などのほか、時事的なテーマが課されることも

    法学部では、民主主義や倫理観、憲法9条、権利と義務などといったテーマが課されることが多いです。こうした論述では、憲法など諸制度に対する正確な理解が必要不可欠。また、時事的な問題に関して意見を求められるような課題が出る場合も。試験本番で焦らないためにも、普段から新聞やニュースをチェックし、世間で話題になっている内容や争点を確認しておきましょう。

  • 例題

    • 憲法9条の解釈を基に自衛隊の戦地派遣についての課題を分かりやすく説明しなさい。

  • 【経済学、経営学、商学系】所得や地方創生といったテーマに加え、最新のテクノロジーに関する問題も

    経済や経営にまつわる学部では、格差や税金、所得、地方創生などに関する意見を問われることが多くあります。こうしたトピックについて論じる場合には、グローバルな視点が必要となる場合も。また、人工知能(AI)やドローンといった最新のテクノロジーが経済にどういった影響を与えるのか、などのテーマが出題されることもあります。

  • 例題

    • 人工知能(AI)が世界の経済に及ぼす影響について、あなたの考えを述べなさい。

  • 【文学、教育学系】文化や文明に関する具体的な問題が多い

    歴史や芸術、語学、コミュニケーションなど、文化・文明に関する課題が主となります。加えて、人の生き方や価値観について意見を述べさせるような問題も。こうした課題は専門的な文学論や哲学を扱うものを除いて、問題文章が具体的であり専門知識がなくてもある程度書けることが多いので、小論文の中では比較的取り組みやすい方だと考えられています。しかし、その分他の受験生よりも高く評価されるためには、思考力や文章力が必要です。

  • 例題

    • 学ぶことの意義について、あなたの考えを示しなさい。

  • 【情報学、環境学、理学、工学系】エネルギーやテクノロジーなど、毎年変化するトピックに注意

    情報系や環境系など理系学部の入試で出題される課題は、エネルギーやテクノロジー、自然災害、インターネットなどをテーマにしたものが多くなります。経済・経営系の学部以上に、最先端のテクノロジーはチェックしておく必要があるでしょう。また、近年起こった自然災害に関して現状や課題を予習しておくのもいいかもしれません。

  • 例題

    • バーチャルリアリティ(VR)の活用について、そのメリットとデメリットを説明しなさい。

  • 【医学、看護学、福祉学系】

    医療・看護・福祉系の学部では、高齢化やコミュニケーション、最新の医療などがテーマになることが多いでしょう。生活習慣病のような具体的な症状に関して、正確に事実を記述したり意見を求められたりする場合も。また、最近ではテクノロジー関連の問題も増加しています。

  • 例題

    • インフォームドコンセントについて、あなたの考えを自由に論じなさい。

  • 【体育学、芸術学系】

    体育・芸術分野の学部の試験では、文系の学部と同様に文化や文明に関係する問題が出題されます。加えて、精神・哲学などといった抽象的なテーマが出る場合も。

  • 例題

    • 「センス」とは何か、あなたの考えを論じなさい。

要約文の作り方と要約のコツ

  • 要約文とは「事実背景→課題解釈→主張」の流れをまとめた文章

    試験では、小論文とともに問題文章の要約文の提出を求められることもあります。要約文とは、その文章を読んでいない人が読んでも、文中で述べられていることが分かるように説明するものです。元となる文章に含まれる事実背景と課題、その課題に対する主張という流れをコンパクトにまとめる必要があります。

    • 要約文を作るための4STEP

      • ①問題文章の段落ごとに内容を把握する

      • ②段落が問題文章全体の中で「問題提起」「具体例」「筆者の主張」のうちどの役割を果たしているのか判断する

      • ③「問題提起」と「具体例」を除き、「筆者の主張」を取り出す

      • ④問題文章全体の流れに基づきながら筆者の主張をつなぎ、まとめる

  • 要約のポイントは「ズレ・漏れ・ダブりをなくし、具体例を省くこと」

    要約文を作る際にまず気をつけたいのが、もともとの文章と要約文の内容にズレが生じていないか、ということです。特に問題文章が長文の場合や問題文章に反論が含まれる場合には、テーマや筆者の主張を見失ってしまいがちです。そうならないように、問題文章の主旨を問題用紙の隅にメモしておいて、要約文とのズレがないようにしましょう。また、筆者の主張や根拠など含めるべき情報が漏れていないかどうかも確認が必要です。また、反対に同じ情報が何度も書かれているのも、要約がなされていないことになるのでNG。主張を分かりやすくするための具体例も、要約には含めないのが基本です。

小論文の添削方法

  • 作文と小論文の違い

    小論文とは、筆者の主張や意見があり、その根拠が論理的に述べられた文章のことです。対して、作文とは筆者の体験や感想・考えを述べるもので、特に客観的な根拠は求められません。小論文では論理性や説得力の高さが評価されますが、作文では文章の流れや感性の豊かさ、表現の巧みさがポイントになります。

  • 受験対策における評価ポイントは一貫性・認識齟齬の有無・論理的根拠

    小論文の基本として評価されるのが、文章に一貫性があること。一つのテーマについて一つの主張をもとに論じるのが理想的です。もちろん、前提となる知識や問題文章そのものの認識に誤りがないかどうかも重要です。また、主張の根拠が客観的かつ論理的に述べられているかどうかも評価ポイント。主張があっても根拠が客観的なものでなければ、その文章は小論文ではなく作文であると見なされてしまいます。さらに、読み手を納得させるためには、根拠が論理的かつ分かりやすく示されている必要があります。

  • 試験では文字数の条件も確認しよう

    実際の試験では、文字数に関する条件も課せられます。国公立大学で800~1,500字以内、私立大学で800~1,200字以内、短期大学で600~800字以内、専門学校で400字以内を目安に考えてください。指定されている文字数から、マイナス40文字以内で書き上げるのが基本です。文字数が大幅に余っていると、減点の対象になってしまいます。