商学部

人口減の課題解決に向けた、ヒトの流れの最適化とは

商学部・山田 航先生
商学部・山田 航先生

ヒトの流れの本質を掴み、望ましいあり方を考える

ヒトの流れの本質を掴み、望ましいあり方を考える

「国際労働移動研究」は、人々はなぜ生まれ故郷を離れ、国際間を移動するのかといった問いから、移動後の社会ではどのような影響があるのかという国際労働移動がもたらす社会経済的影響など、ヒトの移動の様々な側面に注目するものです。
国家の発展に伴い、人々は「出稼ぎ」や「留学」など様々な理由で国際間を移動します。この移動は、個々人の目的に応じて意志決定されているようでいて、実は国家の開発発展の程度や制度政策、文化的背景によっても大きく左右されるものです。このような複雑なヒトの流れの本質を掴み、「社会にとって望ましい国際労働移動のあり方はどういうものか」といった、ヒトの流れの最適化について探求しています。

人口減少は、女性や高齢者の活躍、AIの活用だけでは補い切れない

人口減少は、女性や高齢者の活躍、AIの活用だけでは補い切れない

少子高齢化に伴う人口減少によって、日本は働き手と国内需要が同時に減少するという課題に直面しています。現在、女性や高齢者の活用、AIによる生産性向上などで働き手の減少に対処しようとしていますが、それだけでは国内需要の減少を避けることは困難です。国際関係の緊張や感染症の世界的な拡大から、外需依存のリスク認識が強まる中、貿易などに過度に頼ることも望ましいとは言えません。そのため人口維持への成果が見込める、出生率の改善や国際労働移動などによるヒトの流入(増加)を検討する必要が出てきています。
国際労働移動研究は、本来人口維持を目的とはしていませんが、ヒトの流れの効率化の追求で、人口減少へのアプローチが可能と考えられます。例えば、近年は労働力不足を補うヒトの移動だけでなく、インバウンド需要のようなサービスの輸出先としての側面や、より適切な国際マーケティングを可能にする役割にも注目が集まっており、ヒトの流れが効率化すれば、ヒト・モノ・カネ全体の活性化に寄与すると考えられています。
モノ・カネはスムーズな流通が望ましいように、ヒトも滞りなく流通できるシステムが必要であり、そのシステムを正しく機能させることで人口減少、特に働き手の減少と国内需要の減少の両面に対応できる可能性があります。

国際ビジネスに求められる多様性への対応力を養成

国際ビジネスに求められる多様性への対応力を養成

国際社会では今、異なる文化・価値観を持つ人々が創る新しい価値に注目が集まっています。例えばGoogleは、多様性が生み出す価値を最大限に活用するべく、事業チームを構成する上で性別・年齢・文化の異なる人材を配置しています。これは外国人(移民)を受け入れる利点という政治的な意味ではなく、ビジネスの現場や人々の生活の実感としての成果(多様性の良さ)が認識されているからだと思います。多様性は今後さらに重視されていく見込みで、ヒトの流れが人々へ与える変化を明確にし、国際労働移動の結果として生み出される多様性が、社会に良い作用をもたらす条件を明らかにしていく必要があります。
こうした国際労働移動研究に取り組むにあたり、特別な資質は必要ありません。あえて言えば、自分と異なる文化的背景を持つ人々に関心を持つこと、そして、課題があれば解決しようという意志を持っていることだと思います。
ヒトの流れに注目するこの学びを深めるには、様々な環境、価値観の違いなどがもたらす影響への理解が必要です。ここで養成された多様性への対応力は、異文化への受容力を備えた人材が求められる国際ビジネスの現場で活かせるでしょう。

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