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コロナを取り巻く学問

日本が直面する大きな問題である「少子高齢化」。
出生率の低下による少子化と、高齢者の割合が相対的に
増加する高齢化の同時進行により、
さまざまな問題が生じています。
このような問題に、NGUの学びがどうアプローチできるのか
9つの学部の学問分野から考察してみましょう。
経済学部
少子高齢化で探る「住み良い地域」の条件とは?
経済学部
経済学部・赤松 礼奈先生
全国的に少子高齢化や人口減少が進んでいます。なかでも地方の山間部では、都市部への人口流出も相まって、人口減少や住民の高齢化が急速に進行中。自治体としての機能を維持できないほど厳しい状況の地方もあり、賑わいや活気まで失われつつあります。その地域に暮らす人々は「問題意識をもってはいるけれど、どうしていけばいいのかわからない」場合がほとんどで、解決策を持つ人はあまりいないようです。私のゼミでは、そうした地域における課題の発見や解決策を考えるほか、こうしたなかで「住み心地を良くする」方策を研究しています。
現代社会学部
若い世代のケアラーを取り巻く支援の在り方とは
現代社会学部
現代社会学部・澤田景子先生
少子高齢化に伴う家族員数の減少、共働き世帯やシングル世帯の増加等、家族が介護にかけられる人員や時間が減少しています。こうした中、ヤングケアラー・若者ケアラー・ダブルケアラーといった若い世代が介護に直面し、多くの困難を抱えています。ところが、従来の制度においては、こうした若い世代のケアラーは想定されていません。結果として実態が把握されず、適切な支援もなく、孤立しているケースが多々あります。若い世代のケアラーは今後も増加が見込まれており、支援の在り方について速やかに検討し、課題を解決する必要があります。
商学部
人口減の課題解決に向けた、ヒトの流れの最適化とは
商学部
商学部・山田 航先生
少子高齢化は人口構成のバランスの変化を示し、その要因は様々で単純に善し悪しを判断できません。しかし人口減少は国内需要や働き手の減少につながり、需要と供給に影響します。商業全体の活度を低下させる課題であり、ヒト・モノ・カネの流れの鈍化まで引き起こします。「国際労働移動研究」はヒトの流れが対象ですが、近年は労働力としてのヒトの移動だけでなく、インバウンド需要の拡大や、より適切な国際マーケティングを可能にするキーパーソンの役割に注目が集まり、この研究成果はヒト・モノ・カネ全体の活性化に寄与すると考えられています。
経営学部(2024年4月開設)
日本から世界へ、データで課題解決の可能性を示す
経営学部
経営学部・齋藤 邦彦先生
出生率、高齢者人口比率、平均寿命、人口ピラミッド、移民政策や人口流入率など……。これらは経済指標と関連しており、それぞれの「データ」を正確にとらえて分析することで、少子高齢化進行の予測と対処に役立ちます。政策決定や企業戦略の策定に活かせるだけでなく、「少子高齢化が進む中で、経済の持続的な成長や社会の安定をどのように保つか」などの道筋を示すことも期待できるのです。多くの国々が少子高齢化に頭を悩ませる中、この傾向が最も顕著な日本において「データの活用によって解決策を生み出せる」ことを示し、世界の規範となることを目指します。
法学部
少子高齢化社会を変える・導く、民法のチカラ
法学部
法学部・山岡 航先生
財産であるはずの土地の所有者不在。認知症高齢者による事故の、家族責任の有無。高齢者を狙った悪徳商法。これらは少子高齢化や人口減少により、社会の「しくみ」がうまく機能しないことから発生した問題です。社会の土台である法律が対応し切れていないことも理由にあげられます。そんな法律のなかでも、私たちに最も身近な法律は民法であり、物の売買から家族のつながりまでのルールを定めるものです。民法の学びでは、私たちに身近なところから少子高齢化による社会の機能不全への対処まで、どのようなしくみが必要か、そのしくみを支えるルールとは何かを探求します。
外国語学部
AIを駆使した外国語教育の新たな扉を開こう!
外国語学部
外国語学部・天野 幸輔先生
少子高齢化は、日本社会に深刻な影響を与えています。子どもを対象とする学校教育の現場はもちろん、高齢者を対象とする学びについても同様です。なかでも私が注目しているのは、英語教育への影響です。日本では、たとえ都会でも「英語を話さねば乗り切れない状況」はほとんどありません。それにもかかわらず「英語を使うことに対する恐怖心」があるのはなぜか? 学習者が英語を使うことに自信をつける方法とは? その方法があるなら、幼児期、学齢期、青年期、老年期、いつから、どのような場で開始すると効果的か? あらゆる面から、教育と少子高齢化は切り離して考えることができないのです。
国際文化学部
動物の生態からヒトの生物学的メカニズムを探る!
国際文化学部
国際文化学部・柴崎 全弘先生
世界全体の出生率は、過去50年間にわたって低下し続けています。その主な要因とされているのが人口密度。174か国を舞台に69年間(1950~2019年)にわたる人口密度と出生率との関係を調べた研究によると、「人口密度が高い地域ほど出生率が低い」という傾向が確認され、その結果としての高齢化が明らかにされています。また人間以外の動物においても、面積当たりの生存数によって各個体の成長と繁殖のスピードに変化が生じることがわかっています。こうしたことから「動物の研究から人間の少子高齢化問題を解決するヒントが見つかるのではないか?」という期待がもたれています。
スポーツ健康学部
元気な高齢者と子どもの関わりが、社会を変える?
スポーツ健康学部
スポーツ健康学部・四方田 健二先生
かつて地域の子ども達は、自分たちの兄弟姉妹を連れて広場や空き地で遊んでいました。そこには年齢の異なる子ども達が一緒に遊ぶ中で、体格や体力の違いに配慮した遊び方を考えたり、社会性を養ったりする意義があったのです。ところが近年では兄弟姉妹ほか、近隣の子ども全体が減少し、同学年の友達とだけ関わることが増えています。他方で、高齢化は退職後や子育て後の人生が長くなることも意味しています。高齢期の心身の健康や体力、生きがいが不可欠であり、幼少期から高齢期までの生涯を通した運動、スポーツへの継続的な取り組みの重要性が高まっています。
リハビリテーション学部
「長生きが幸せ」と言い切れる社会づくりに貢献
リハビリテーション学部
リハビリテーション学部・平野 孝行先生
世界一の平均寿命を誇る日本。「長寿めでたし、長生きが幸せ」と言いたいですが、手放しでは喜べません。いわゆる寿命と、健康上の問題など無く自立した生活を過ごせる「健康寿命」との差が10年ほどもあり、この差をいかに縮めるかが個人にとっても社会にとっても大きな課題です。また、65歳以上の高齢者が総人口に占める割合「高齢化率」は、現在の日本では29%に達しています。2015年には日本人の4人に1人は65歳以上であり、2036年には3人に1人が65歳以上と予測されています。高齢者を支える現役世代が減少する中、医療や介護などの社会保障制度を維持するためには、健康寿命の延伸がますます重要です。