
医療・歯科・看護・リハビリ分野の職業
臨床検査技師
国立研究開発法人
国立成育医療研究センター
臨床検査部
竹内 優希さん
Profile
入職年
2023年
出身
新潟県
大学時代専攻していた学部学科
医学部 保健学科 検査技術科学専攻
今の職業を目指したきっかけ
中学生の時に「職業について調べる」という課題があり、当時見ていた医療ドラマの影響もあって医療職について調べました。その中で興味を持ったのが、臨床検査技師。細かい作業が得意という自分の性格にマッチした臨床検査技師に魅力を感じました。実際に病院で働く姿を見て、検査を通して患者さんの治療に大きく携わっていることを知り、なりたいという思いが強くなりました。目標とする職業が早く決まったので、大学受験時も臨床検査技師が目指せる学部学科に絞って出願。受験科目も将来仕事で役立つ科目が良いと考え、生物を選択しました。
Q.仕事内容を教えてください。
正確な検査や緊急時の輸血準備などで
安全な医療をサポートする
現在、私は輸血部門に所属しており、おもに患者さんから採取した血液を検査する「検体検査業務」と、輸血用製剤の管理から検査までを行う「輸血検査業務」を担当しています。とくに患者さんと供血者(輸血用血液製剤)との適合性を確認する「交差適合試験」は、不適合輸血による副作用を未然に防ぐためにも重要です。また、手術や分娩などで予期せぬ出血が起きた際に行う緊急輸血にも対応しています。こうした緊急性の高い場面では、迅速な判断と準備を求められます。出血状況や状態に応じて臨機応変に対応しています。そのほか、乳児や幼児の患者さんが多い当センターでは、少量の輸血に対応するため血液製剤を小さなバッグに小分けにしたり、輸血による妊婦の副作用を回避するために自己血輸血の準備を行ったりといった病院の特徴に合わせた業務も多いです。

Voice!

学生の頃に思っていたよりもずっと業務範囲が広くて複雑で、「毎日同じ」ということがないんです。臨機応変な対応が求められる場面も多く、最初は命に向き合うことに慣れなくて、足がガクガクしていました。今は緊急輸血にも落ち着いて対処できるよう、仕事終わりに翌日の準備を済ませておくなど、できることを早めに済ませ心に余裕を持つようにしています。
Note1
心電図、聴力、血液…
あらゆる種類の検査を担当
臨床検査技師の仕事は非常に多岐にわたります。当センターでは、私が所属している輸血部門のほか、細菌検査、病理検査、生理機能検査、採血室、検体検査という全部で6つの部門があります。実は、健康診断などで行う心電図、聴力、血液や尿、便の検査も臨床検査技師の仕事です。病院にもよりますが、患者さんの採血を技師本人が行うことも珍しくありません。そのため、幅広い知識を身につけて技術を磨く必要があり、輸血部門ではさらに緊急時への対応能力や、リスクを先読みする力も必要になります。
Note2
学会でのタスク・シフト/シェアの発表が
学術奨励賞に
入職2年目に、学会で医師の働き方改革「タスク・シフト/シェア」に向けた発表を行い、学術奨励賞を受賞しました。発表の内容は、社会問題にもなっている医師の長時間労働を減らすことを目標に、細胞調製という医師が行っていた業務を臨床検査部へ移行するための取り組みについてです。細胞調製は、専門の講座を受ければ技術的にはできるようになります。しかし、実際に業務を行うためには、無菌状態で温度を一定に保てる部屋が必要なんです。そのために専用の部屋を整備し、質が高く円滑な業務運用も検討して、約1年かけて実現しました。
Q.1日のスケジュールは?
日勤の日の1日!
\スタート!/

8:15
出勤・始業
夜勤担当者から前日の引継ぎを受け、1日の輸血スケジュールを確認します。

8:30
精度管理
測定機器の精度や測定環境に異常がないかを確認し、問題なく検査が行えるよう準備をします。毎日、検査開始前に必ず行います。

9:00
午前業務
各種項目の検査、手術血準備、当日輸血への対応をしていきます。採血業務がある日は、午前中は採血をして、午後に輸血業務に戻ります。

12:00
お昼休憩
頭を使う業務が多いのでしっかりと休憩します。休憩用の部屋で昼食をとりながら技師同士でたわいもない会話をすることでリラックスできています。病院内のパン屋やコンビニで買って食べることが多いです。

13:00
午後業務
午前と同様に各種項目の検査や翌日の輸血準備をします。日によっては、移植関連業務があるため、細胞調製や必要物品の準備をします。

17:00
終業
業務終了です。勤務体系は二交替制で月に3回ほど夜勤を担当しています。お疲れ様でした!
Q.お仕事に必要なスキルは?

すべての検査に必要なのは
意外にも「会話力」と「観察力」
臨床検査技師の仕事は黙々と数字や検体と向き合う個人作業だと思われがちですし、実は私もそう思っていました(笑)。実際に働いてみて感じるのは、検査項目によって求められるスキルは異なりますが、すべての検査に共通して大切なのは「会話力」と「観察力」だということ。検査の方向性を決めていく上で技師同士の密な情報共有は欠かせず、患者さんの協力が必要な検査もあるため、コミュニケーション力がとても重要になってきます。また、検査の結果から医師に最適な提案をする際にも、意見をきちんと正確に伝えないといけません。「観察力」という面では、検体そのものに対する注意はもちろん、患者さんに対して「採血を嫌がるお子さんにどんな言葉をかけてあげたらいいか」などの細かい気配りも常に意識しています。
Q.お仕事の魅力を教えてください。
命と向き合う現場だからこそ
緊張感と共に大きなやりがいを感じる
臨床検査技師の仕事は高度な専門性が求められるため、その知識を活かして医師に助言をする機会もあり、より良い選択肢を提案できた時は「自分の行動が命を救うことにつながっているんだ」と強く実感できます。とくに出産では、産後出血などで緊急輸血が必要となることも少なくありません。大きなリスクを伴う作業ですが、絶対に間違ってはいけないことを正確にやり遂げられた時は、達成感も大きいです。その分、プレッシャーも大きく、緊張感が走る場面もしばしば。しかし、命の危険と隣り合わせにあると感じることが、むしろモチベーションの向上につながっています。一方で、小児の検査では、また違ったやりがいも。今までできなかった検査ができるようになることで成長を感じ、嫌々ながらも頑張って検査を受けてくれる子どもたちの姿を見ると、「私も頑張らなきゃ」という前向きな気持ちになります。

高校生へメッセージ

まずは小さな一歩から!挑戦することで、夢が近づく
進路を考えると、「やりたいことは何だろう」「どうすれば夢を実現できるだろう」と悩む人も多いのではないでしょうか。そんな時は、新しいことに目を向けてみたり、興味のあることに挑戦してみたり、自分の視野や可能性を広げるアクションを起こしてほしいと思います。小さなことでもとにかく行動に移
すことが大切。一歩を踏み出せば、おのずと次の二歩目、三歩目へとつながります。はじめは小さな一歩かもしれませんが、目標を見つけることや夢の実現に近づくはずです。いろんなことに興味を持って、思いきり挑戦して、夢をつかんでください!
※記事内容は、2024年12月取材時点のものです。