デザイン・芸術・写真分野の職業
アートナビゲーター
中村 宏美さん
Profile![]()
活動開始年
2006年
出身
埼玉県
学生時代専攻していた学部学科
芸術学部
今の職業を目指したきっかけ
子どもの頃から絵を描くことが大好きでした。画家になる夢はかないませんでしたが、デザインの専門学校で学び、洋服の生地のデザインを行うテキスタイルデザイナーとして就職。その後、デザイン関連の企業やメーカーで勤め、自身の会社を立ち上げました。40歳を過ぎた頃、「美術史や理論をしっかり学び直したい」と一念発起して芸術系の通信大学へ入学し、学芸員資格を取得。卒業後、美術検定1級に合格し、アートナビゲーター※として認定を受けました。それ以前から、国立西洋美術館や東京都現代美術館などでボランティアの解説を行っていたのですが、ある日、美術館で解説をしていると、途中から参加した方が「おいくらですか?」とお財布を出されたんです。無料だとお伝えすると不思議そうな表情をされて。そのとき、「解説を有料のサービスとして届ける仕事があってもいいのではないか」と思ったんです。今振り返ると、その瞬間が事業として本格的にアートナビゲーターを始めるきっかけでした。
※「アートナビゲーター」は一般社団法人美術検定協会の商標です。
Q.仕事内容を教えてください。
幅広いジャンルを横断し、
アートの魅力を伝える
主な仕事は、美術館で作品の見方を解説したり、美術史の講座で講師を務めたりすることです。解説では、旅行会社と契約し、1泊2日のバスツアーに同行して地方の美術館を巡る場合もあります。移動中のバスでは美術館が建てられた背景や作家の人生などをお話しし、現地では作品や美術館建築の見どころを解説します。解説員にもさまざまなスタイルがあると思いますが、私の場合は専門分野を一つに絞らず、日本美術や西洋美術、古代から現代まで、絵画・彫刻・建築といった多様な領域を横断しながらアートの魅力を伝えています。そのほか、アート関係のコラム執筆や、企業研修として作品を用いたワークショップを行うこともあります。
Voice!
フランス語の資料を読むために、3〜4日に1回は早朝にフランス語のレッスンを受けています。実はフランス語は19歳の頃から学んでいるのですが、まだまだ勉強中です……。
Note1
参加者が自分の言葉で作品を考える時間にする
大切にしているのは、知識を一方的に伝えるのではなく、ツアーや講座の参加者が自分で作品について考え、言語化できる時間にすることです。その原点は、子どもたちが自由に現代美術を鑑賞するプロジェクトに参加した経験にあります。参加者同士が意見を交わしながら作品を見る「対話型鑑賞」の方法が、今の活動にも生きています。無理に発言を促すのではなく、参加者がどう見て、何を感じているのかを丁寧に観察し、誰もが安心して思ったこと・考えたことを話せる雰囲気づくりを大切にしています。
Note2
直感的な気づきを美術史の知識へつなげる
作品を見たときの感想を「思ったまま」で終わらせず、美術史の知識と結びつけることも重要です。例えば縦長の風景画を見て、「空が高いことを描きたかったのかな」と感じるかもしれません。これは専門知識がなくても思いつく“直感”ですが、実は美術史の研究でも同じ指摘がされているんです。まずは自分の感覚で作品を観察し、その直感的な気づきと専門的な知識を結びつけていく。そうすると、アートに詳しくない方でも作品をより深く楽しめるようになります。その接続がアートナビゲーターとしての腕の見せどころです。
Q.1日のスケジュールは?
オンライン講座がある日の1日!
\スタート!/
9:00
オフィスでの作業開始
自宅兼オフィスで作業。美術書などを参考にしながら、パソコンで講座のスライド資料を作ったり、原稿を書いたりします。
10:00
オンライン講座(午前の部)
90分間のオンライン講座を実施します。参加者に向けて、美術史や作品の見方などを解説します。
12:00
お昼休憩
近所の散歩コースを歩いて気分転換をしたり、本を読んだりします。また、この時間を利用して美術館へ足を運ぶこともあります。
15:00
午後の作業開始
午後の仕事を再開します。オンラインでの打ち合わせなどが入ることもあります。
20:00
オンライン講座(午後の部)
日中仕事をしている方でも参加しやすいよう、夜の時間帯のオンライン講座を行います。本日もお疲れ様でした!
Q.お仕事に必要なスキルは?
「人を好きになること」と「好きな対象を見つけること」
美術史の知識などは後からでも学べます。高校生のうちに身につけておいてほしいのは、「人を好きになること」です。アートナビゲーターは、美術館や作家と、鑑賞者の間に立ち“橋渡し”をする仕事。相手の気持ちに寄り添い、何に興味を持っているのかを感じ取る力がとても大切になります。また、画家や彫刻家など、誰でもいいので「好きな対象を見つけること」も大事。そこから、その人が生きた時代や歴史、文化へと興味を広げていけば、知識の引き出しはどんどん増えていきます。
Q.お仕事の魅力を教えてください。
アートを通して、
人の感性を豊かにできる
参加者の方から「楽しかった」「作品を見るのが面白くなった」と言っていただける瞬間が、何よりのやりがいです。アート鑑賞は、ある意味で“自分探し”でもあります。ただ「きれい」「面白い」と思うだけでなく、「どこが好きなのか」「なぜそう感じるのか」を自分の言葉で考えていくと、人の感性や表現力は豊かになります。アートの力を通して、人が学び続けるきっかけをつくり、人生をより楽しくするお手伝いができることが、この仕事の魅力だと感じています。
高校生へメッセージ
コツコツと続け、自分で考える力を養って
もし仕事を「生きがい」にしたいと思うなら、できるだけ自分が嫌いにならない分野を選んでください。好きなことなら、たとえ失敗しても必ず自分の経験として積み重なります。そして何より大切なのは、コツコツ続ける姿勢。継続できる人には誰も敵いません。
これからのAI時代には、「自分で考える力」がより重要になると思うので、好きな画家から歴史や文化へと興味を広げていくような学び方を、ぜひ実践してみてください。応援しています!
※撮影は 、KUポートスクエア(神奈川大学みなとみらいエクステンションセンター)で実施。
※記事内容は、2026年3月取材時点のものです。