SOLUTIONS WEB 2025
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2025

北海道文教大学

Contents01
基幹産業の活性化とは?いかに生産性を高めるか、それが地域創生につながる!

基幹産業の活性化とは?いかに生産性を高めるか、それが地域創生につながる! 【人間科学部 地域未来学科】

■課題解決に挑む学問
経済・経営・商学>>経営学
■該当するテーマ
経済

地域の生産性をいかに高めるかに関して、多角的に調査研究!

地域の生産性をいかに高めるかに関して、多角的に調査研究! 地域創生・SDGsや地場の基幹産業振興、地域リーダー人財養成などを専門とする木村先生は、「地域の生産性をいかに高めるか」を調査研究しています。「その地域が何で成り立っているかは、地域によって違います。それが製造業でも建築業でも農業でも、基幹産業の生産性が低い地域は停滞しがちです」と木村先生は言います。「リンゴ農家は果実の品質を上げるために間引きをしますが、それを廃棄するにも費用が必要です。この状態では生産性が高いとは言えません。しかし間引きしたリンゴをシードルにする工場があれば、廃棄費用が不要になるだけでなく、商品化による利益が見込めます。つまり地域の生産性は上がります。リンゴ農家と廃棄品を使って工場を運営したい人をマッチングするのが、私の仕事の一つです」と木村先生。しかし、地域で生産性を上げ、雇用の場を創れる人財がまだまだ不足しています。「地域で働く担い手の養成が急務なのです」。

全体最適と部分・個別最適。地域創生に重要なのは?

全体最適と部分・個別最適。地域創生に重要なのは? 「多くのシャッターが閉まっている商店街では、一つの空き店舗に動きを創っても全体の底上げにはなりません。時代の移り変わりとともに商店街のあり方や役割も変化しています。今の商店街の役割を考えることが大切です」。商店街を盛り上げる際にすべての店を一つとして考える「全体最適」と、できる範囲で一番適した状態にする「部分・個別最適」があります。どちらも大切ですが、地域創生を考える場合は違う視点が必要です。「青森県八戸市にある『はっち』と呼ばれるミュージアムは、市民が企画したことを実現する場として、多目的スペースやギャラリーを設けるなど、整備しました。一部分に焦点をあてて最適を目指す『個別最適』を実践したケースです。市民のニーズを形にしたら人の流れが変わり、現在では産業・観光振興のため事業をともに行う場になりました。今後の地域創生を考えるうえで、市民との対話が重要です」と木村先生は言います。

学生の力を引き出し、伸ばすのが大学の役割!

学生の力を引き出し、伸ばすのが大学の役割! 基幹産業の生産性を上げるうえで人と人をつなぐ、地域で働く担い手であるリーダー・プロデューサーが必要。木村先生は「4年間の学びを通して、学生一人ひとりの能力を引き出し伸ばすのが大学」と言います。木村先生のゼミでは聴いた人が行動したくなるプレゼン方法をはじめ、良好な人間関係を築くうえで大切な自己理解・他者理解、「五感六育」、3C分析やSWOT分析などのマーケティング手法を体験的に学ぶ機会が豊富です。「例えばアメリカで1989年に出版されたスティーブン・R・コヴィー博士の『7つの習慣』では、個人や人間関係の効果性を最大限に高めるために実践すべき内容が紹介されています。私は学生たちに、そこに何か一つを加えるとしたら何が良いと思うのかを聴きます。最初は私の問いかけが必要でも、くり返すうちに自分で問いを立てられるようになります。そこで育まれた素養は、リーダー・プロデューサー人財として役立つことでしょう」。

Contents02
自分の価値観を超えた新たな発見をしながら、自分らしい生き方を考える4年間

自分の価値観を超えた新たな発見をしながら、自分らしい生き方を考える4年間 【国際学部】

■課題解決に挑む学問
国際・国際関係>>国際関係学
■該当するテーマ
共生

海外学生とのオンライン交流会で知る、考え方の違い

海外学生とのオンライン交流会で知る、考え方の違い JICAに30年勤務し、東南アジアの発展途上国を中心に海外赴任の経験が豊富な青先生は「国際協力・異文化理解」を研究しています。講義ではスリランカ人とインド人と日本人の学生間で、オンライン交流会も行いました。「わらしべ長者」の前半部分を全学生で共有し、後半の物語を日本人と海外の学生が一緒に考えたのです。「インドの学生は『1本のわらしべを他の物と交換した主人公は、神様との約束を破った悪い人』と発言しました。一方のスリランカ人は主人公が大金持ちになるというオリジナルと同じ結末に、『それを村人に施しました』との一文を加えて物語を終えたのです」と青先生は振り返りました。学生たちの考え方の違いがどこからくるのかが、気になります。「各国の幸せの考え方は生活習慣に根付いたものであり、文化の違う人同士が対話することで、おぼろげにわかってくるものです。こうした経験が、自分が何者かを知るきっかけとなります」。

4年間で1,000時間の徹底した実学重視の教育を展開

4年間で1,000時間の徹底した実学重視の教育を展開 国際学部では、学生が4年間で1,000時間の実習体験を行うことを推奨しています。1年次にはニセコなど外国人が多く訪れる地域にあるホテルでの実践研修を、2年次は北米やオーストラリア、アジアの中から選択できる海外短期留学を、必修科目として用意。さらに学生が希望すれば、カンボジアやスリランカといった開発途上国の課題解決に取り組む研修にも参加できます。青先生は「実学教育の重要なポイントは、与えられた課題をこなすことではありません。学生が主体的に動くことが求められるのです」と言います。「学生が主体性をもって取り組む場を増やすため、短期留学だけでなく、海外でのボランティア活動、インターンシップの充実など、大学の支援体制を整える予定です」。大学内に留まらず、国内外のさまざまな現地に足を運び、体験を通して五感を使って学ぶことによって、視野が広がるとともに知識を深められそうです。

自分らしい生き方をするためには、「問う力」を育てることが大切

自分らしい生き方をするためには、「問う力」を育てることが大切 「問う」ことにためらいを感じる人は、案外多いのではないでしょうか。その理由として、問いに正解がある場合は特に、「質問することは自らわからないと宣言するものだ」との思い込みがあるのかもしれません。青先生は「自分らしい生き方をするためにも、問い続けて欲しい」と言います。「現代はさまざまな情報が流れますが、玉石混交です。偏った常識や誤解に基づく、誤った情報も多く含まれています。あらゆる情報の中から、正しいであろう知識や知恵を選択することは、とても重要なのです」と青先生は話します。「正しいことを知り、理解するためだけに『問う』わけではありません。『問う』ことで、人のもつ固定概念や価値観を超える意味もあるのです。自身の価値観を超えて新たな発見をすることは、自分にとって違和感のある体験となる可能性があります。実践を通して世界を知ることで考えを広げ、自分らしい生き方を発見してほしいと思っています」。

Contents03
歩行や動きを変えるインソールを活用し、心身ともに健康な未来の実現を目指す

歩行や動きを変えるインソールを活用し、心身ともに健康な未来の実現を目指す 【医療保健科学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻/人間科学部 理学療法学科】

■課題解決に挑む学問
医学・歯学・薬学・看護・リハビリ>>リハビリテーション・作業療法・理学療法
■該当するテーマ
豊かな暮らし

靴のインソールがバランス能力に与える効果について研究

靴のインソールがバランス能力に与える効果について研究 運動器の専門理学療法士でもある高田先生は現在、地域の高齢者を対象に靴のインソールがバランス能力に与える効果について研究しています。バランス能力とは静止したり動いたりしている時に姿勢を保つ、または不安定な体勢から速やかに回復させる能力のことです。「地域で行う公開講座では参加した高齢者の方に片足で立っていただき、バランスを見たうえでフラフラしないように、学生とともにインソールを調整しています」と高田先生は言います。「普段の生活スタイルや姿勢、歩き方のクセにより、足の裏に体重がうまくかからないことが、フラフラする原因です。一人ひとりに合うように足の裏にゴム板を貼ることで、バランスが改善されます」。難聴があり20年片足立ちができなかった人に合うインソールを提供したところ、できるようになったケースもあったそうです。「インソールを活用することで、良い姿勢を保てるようになります」と高田先生は話します。

健康寿命を延ばすだけでなく、気持ちも元気でいることが大切

健康寿命を延ばすだけでなく、気持ちも元気でいることが大切 高田先生は整形外科で実際に患者さんと関わる機会も多いですが、「子どもの世話にはならない」と話す高齢者と多く出会ったそうです。「高齢者が自立して暮らすためには、動ける体である必要があります。しかし実際には膝や腰に痛みを感じ、歩く機会が減っている患者さんも少なくありません。関節の動きなども確認しながら体が安定するようにインソールを作製し、それを使って動けると思ってもらうことが大切なのです」と、高田先生は強調します。「インソールを活用することで歩行や動きが変わるだけでなく、気持ちが若返ったり明日の希望が持てたりすることも、健康寿命を延ばすうえで重要なことです。世界を見ても平均寿命は延びていても、健康寿命は比例して長くなっているわけではありません。インソールが健康寿命を延ばす一端を担えるよう今後も研究を続け、理学療法士にできる社会貢献を実践し続けたいと考えています」。

トップアスリートの関わった経験を活かした学びを実現する!

トップアスリートの関わった経験を活かした学びを実現する! 高田先生は陸上選手をはじめとするトップアスリートにも、オーダーメイドインソールを作製・提供しています。「アスリートは足を大切にしていますが、インソールを用いて軸足を安定させることでパフォーマンスが上がった実績が多々あります」。しかし、姿勢や走り方が異なるアスリート一人ひとりに合ったインソールを作製するのは簡単なことではありません。「インソールとなるゴム版を思う通りに切ったり削ったりするためには、スキルが必要です。本学にはインソールを削るグラインダーの機械が7台あり、くり返し練習することができます。また私が関わったアスリートのさまざまなデータを使った講義も、他では学べないことの一つでしょう」と高田先生。「私が用いている入谷式インソールは、足の環境を整えることで体幹に良い影響を与えるとの発想から生まれています。専門領域の学びを深め、職人技を身に付けたい人と一緒に研究していきたいです」。

Contents04
予防的リハビリテーションの観点から、生活習慣病と体幹機能の関係を研究

予防的リハビリテーションの観点から、生活習慣病と体幹機能の関係を研究 【医療保健科学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻/人間科学部 作業療法学科】

■課題解決に挑む学問
医学・歯学・薬学・看護・リハビリ>>リハビリテーション・作業療法・理学療法
■該当するテーマ
豊かな暮らし

人生100年時代に役立つ、予防的リハビリテーションの取り組み

人生100年時代に役立つ、予防的リハビリテーションの取り組み リハビリテーションと聞くと、ケガや病気によって身体機能や日常生活が失われた人を回復させる訓練をイメージする人が多いかもしれません。「近年は病気やケガを前もって防ぐ、予防的リハビリテーションが重視されるようになっています」と金子先生は話します。「人間の体は運動不足が続くと、筋肉が衰えたり関節が硬くなります。それが内蔵機能や体力が落ちる原因となり、ケガや病気になるリスクを高めるのです」。世界保健機関(WHO)が発表した「世界保健統計2024年版」によると日本人の平均寿命は男性が82.39歳、女性は87.16歳、健康寿命は男性が71.93歳、女性が74.4歳でした。平均寿命と健康寿命の差が男性は10.46歳、女性は12.35歳もあるのです。「この年数の差は、不健康な生活を送る期間を指します。医療費の負担増や生活の質が低下するなどの問題を防ぐ意味でも、予防的リハビリテーションの取り組みは大切です」。

運動器疾患や生活習慣病と姿勢の悪さの関連について研究する理由

運動器疾患や生活習慣病と姿勢の悪さの関連について研究する理由 金子先生の研究テーマの一つに「生活習慣病と体幹機能の関係」があります。日々の食事や運動、休養、喫煙、飲酒などの積み重ねによって発症する生活習慣病の原因として、姿勢の悪さが上げられるのではないかと仮説を立てています。「パソコンやスマートフォンなどを利用するにあたり、背中を丸めるといった不良姿勢になっている人が多いです。姿勢が悪いまま長時間にわたって情報機器を使用することで肩甲骨や関節の位置が悪くなり、運動器疾患や生活習慣病を助長している患者さんが増えているのです」と金子先生は言います。さらに良い姿勢を保つうえで重要なのは体幹にあると考え、ピラティスを含めた運動療法を用いて、運動器疾患の改善や予防についても研究を進めています。「体幹機能の改善が運動器疾患や生活習慣の予防につながれば、健康寿命を延ばせるかもしれません。医療費や介護費用の削減にも役立つのではないかと期待しています」。

自分の好きな領域を活かし、患者さんと自分を幸せにする

自分の好きな領域を活かし、患者さんと自分を幸せにする 作業療法士は心身の機能回復である医療分野から、患者さんの生活支援に代表される福祉分野までトータルに支援する仕事です。病気やケガを治す急性期、身体機能の快方と日常生活に必要な動作の改善を目指す回復期、生活をサポートする維持期と患者さんの状態は移行します。「どの段階においても作業療法士が関わることで変化が起こり、それが患者さんの幸せにつながります」と金子先生は話します。「作業療法分野は、一人ひとりの“好き”が仕事になる領域です。それがゲームでも料理でも音楽でもかまいません。自分の好きなことが活かされ、作業療法を受ける対象者だけではなく、自分自身の人生も豊かにしてくれる仕事なのです」。金子先生は学生に教えるうえで、体験ファーストであることを大切にしています。「私が経験してきた臨床の実践を学生に体験してもらい、学問への好奇心を高めるとともに、作業療法の楽しさを伝えていきたいと思っています」。

Contents05
北海道の振興果樹であるアロニアを使った食品開発の研究が秘める可能性

北海道の振興果樹であるアロニアを使った食品開発の研究が秘める可能性 【人間科学部 健康栄養学科】

■課題解決に挑む学問
栄養・食物>>栄養学
■該当するテーマ
健康・安全

北海道が生産量No.1で機能性食品なのに生食が難しいアロニア

北海道が生産量No.1で機能性食品なのに生食が難しいアロニア バラ目バラ科に分類されるアロニアは耐寒性と耐熱性に優れており、生産量は北海道が国内No.1で、スーパーフードとしても知られています。「抗酸化作用が高いポリフェノールが血糖値の上昇を抑制したり、天然色素であるアントシアニンが目の機能を改善したり、メタボリックシンドロームを予防したりする効果があるとされているのです」と、小塚先生は話します。健康効果が期待できるアロニアは糖度が12度以上あるものの、甘味を上回る酸味や渋味を感じるため生食には向かないとされています。「アロニアは健康寿命に寄与する可能性が高い果実です。生食では食べにくくても、おいしく食べられるように加工することができるのではないかと考え、研究を進めています」。かつてはブルガリアから輸入していたジュースを用いて研究していましたが、現在はアロニアの産地として有名な北海道伊達市産の果実を仕入れて使用しているそうです。

アロニアの配合量や加工過程を工夫し、お菓子作りにチャレンジ!

アロニアの配合量や加工過程を工夫し、お菓子作りにチャレンジ! 伊達市の給食センターでは、アロニアごはんが提供されています。「白米にアロニアを混ぜて炊くとモチモチした食感と、フルーティーな酸味が感じられる味になります」。しかし白米に慣れているため、見慣れないごはんには手をつけない児童も少なくなかったそうです。そこで2024年度の小塚先生のゼミでは、アロニアを使ったカップケーキ作りに挑戦。「アロニアの体によい成分は残しつつ、酸味や渋味を抑えておいしくするための加工条件について調べることから始めました」と、小塚先生は振り返ります。果汁の量によってカップケーキの膨らみ方が変わったり、色味をよくするために配合するベイキングパウダーの量やpHを調整したりと、試行錯誤をくり返しました。「食べたくなるカップケーキを作るためには、見栄えを良くすることも大切です。何種類もの試作品を作り、『風味』『香り』『見た目』の3項目を5段階で評価し、果汁や香料の添加量を割り出しました」。

企業とコラボした食品の商品化や地域活性化も期待できる!

企業とコラボした食品の商品化や地域活性化も期待できる! アロニア果汁を使った食品は、一般的なレシピで使ったものより血糖値が上昇しにくくなります。アロニアが持つさまざまな機能性により、糖尿病や高血圧に悩む人でも安心して食べられる食品ができる可能性も高いです。「先輩の研究を活かして、新4年生はアロニアを使ったお菓子を試作販売する予定です。研究成果は出るまでには時間がかかるので、先輩の検証結果を参考に、後輩がブラッシュアップする流れができることを期待しています」。またアロニアを使った商品がヒットすることは、地域の活性化にもつながるかもしれません。「アロニアの生産農家も高齢化が進み、後継者問題が深刻化しています。アロニアを活用した商品を地域の特産品にできれば、生産に興味を持ち、農家を受け継ごうと思う人が出てくる可能性もあります。新しいものを作ってみたいと考える人たちと、今後も地域に役立つ研究を続けていきたいです」と、小塚先生は話してくれました。