【保健医療学部】
■課題解決に挑む学問
医学・歯学・薬学・看護・リハビリ>>医療技術学
■該当するテーマ
技術
患者さんにとってより良い治療を考える「チーム医療」
「チーム医療」という言葉を聞いたことはありますか?各領域の専門家が連携して、それぞれの治療技術を最大限に発揮しながら治療やケアに当たる医療のことです。例えば重い病気を抱えたときに、外科医は病巣を取り除く治療を行い、薬剤師はより良い薬物療法のため、副作用の確認や治療の注意点の説明を行います。
看護師は、患者さんの苦痛や不安の解決に向けた看護ケアを行い、心理士は患者さん本人だけでなく、その家族のサポートも行います。
このようにチーム医療では沢山の役割がある中で、病気の診断のスペシャリストとして存在するのが診療放射線技師です。正しい病気の診断は、診療における非常に大きな出来事です。例えば頭に痛みを抱える患者さんでも、その症状を言語化し、医師にわかりやすく説明するのは簡単ではありません。そのような判断に大きく寄与できるのが、診療放射線技師の仕事になります。
放射線治療や多種多様な放射線機器を扱う診療放射線技師
チーム医療における診療放射線技師の役割は、病気の診断に必要な医療画像を的確に撮影し、検査することです。肺の病気を診断するX線検査や胃の状態を見る消化管造影検査、体の断面を画像や内臓、血管、骨などの3D画像を撮影するCT検査、脳や血管などの柔らかい組織も撮影できるMRI検査など、診療放射線技師が扱う医療検査は多種多様にあり、医療機器を正確かつ迅速に使用する高度な技術が求められます。造影剤を血管に流し込み、その形や血流の状態を撮影する血管検査も、診療放射線技師が担当する医療検査の一つです。
また、多種多様な医療診断機器を正確に扱い、患者さんの身体の状態に関する正しい情報を入手し、医師に提供することが求められます。診療放射線技師が得た患者さんの医療情報は、医師が病気やけがを診断し、治療方針を決定するための重要な情報になるため、チーム医療においても大きな役割を担います。
先進医療とチーム医療に対応できる診療放射線技師を育てる
近年は画像認識技術の急速な発展とともに、大規模かつ質の高いデータ蓄積と、人間をしのぐとも言われる学習機能を備えたAI(人工知能)による医用画像診断補助が実用化されつつあります。医師の負担が大きく軽減され、診断精度が飛躍的に上がる一方、AIはデータに不備があると活用できないなどの課題もあります。医療現場では今後も診療放射線技師に対して、多種多様で進化の著しい医療画像診断機器を扱う技術と、高度な読影補助能力が求められています。
順天堂大学保健医療学部診療放射線学科では、医療現場のニーズを受け、医療現場での経験が豊富な教員が講義と演習を担当し、高度な検査技術を備えた技師を育成していきます。学内に6つの医学部附属病院を備え、最先端の医療と世界標準の医学研究を進めています。また、附属病院での実習を通じ、他職種と連携したチーム医療の経験を積み重ねることができます。
【保健医療学部】
人間は病気やけが、高齢による運動機能の低下などによって、立つ、歩く、座る、寝返りや起き上がりなど、日常生活を送るうえで必要な基本動作ができなくなる可能性があります。そして、どの年齢でもリハビリを必要とするリスクを多少なりとも抱えています。
また、理学療法士は、国内で気運が高まるスポーツの分野でも活躍の領域を広げています。スポーツ分野に携わる理学療法士の主な役割は、けがをした競技者のリハビリテーションやトレーニングです。その対象は一般のスポーツ愛好家から部活動で競技する学生、トップクラスのプロアスリートまで実に幅広く、けがから復帰までのリハビリテーションに密接に携わっています。そのほか、けがの再発防止や痛みの緩和、体の姿勢の安定や違和感への対処など、競技者のパフォーマンスを上げるためのさまざまな助言を行っています。理学療法の専門知識や技術に加えて、スポーツ競技のトレーニング、コーチング、栄養学などを学ぶほか、アスレティックトレーナーの資格を取得し、専門性を高めている人も少なくありません。
順天堂大学保健医療学部には理学療法学科と診療放射線学科の2学科があり、学科間に加えて他学部とも連携した教育研究体制のもと、高度先進医療やチーム医療、グローバル化に対応できる医療職を養成します。
【薬学部 医療薬学基礎領域 薬物治療学】
高齢化社会の進展とともにがんや慢性疾患が増加しており、それに伴う「痛み」や「しびれ」、治療の副作用に苦しむ患者数も年々拡大しています。近年では、全身に激しい痛みや倦怠感が広がる線維筋痛症も、若年層に発症する病として話題になっています。これらの症状は、「食べられない」「眠れない」というように生活の質(QOL)を大きく低下させるだけでなく、治療の継続を困難にする重要な要因に。また、強力な鎮痛薬は高い効果を発揮する一方で、副作用や使用を続けるうちに作用が効きにくくなる耐性の問題があり、安全に使い続けられる治療薬の開発が求められています。ますます進化していく高齢化を背景に、自立して健やかに生活する「健康寿命」の延伸が急務になっている現代。そのためにも、「治療効果を保ちながら副作用を減らす医療」や「患者がより良い生活を送りながら治療を続けられる医療」の実現が、重要な社会的課題になっているのです。
本研究室では、痛み・しびれといったQOLを低下させる症状の改善を目指して、基礎研究と臨床研究を連携させた取り組みを行っています。一つが、モルヒネなどの強力な鎮痛薬をターゲットに、オピオイド受容体の新しい作用機構やその制御分子に着目し、細胞レベルでの基礎研究を進めること。もう一つは、実際のがん治療の現場で生じている患者の声と医療従事者の疑問であるクリニカルクエスチョンを起点に、臨床データと基礎研究を組み合わせて病態を解明し、新たな治療法開発につなげること。主にオピオイド受容体や鎮痛薬メカニズムの基礎研究を専門にする藤田先生と、血液検体を用いた臨床研究を基に基礎研究を展開する宮野先生が情報交換を行いながら、「分子レベルの理解から臨床応用へ」とつながる研究を推進。痛みや治療副作用の発生メカニズムを分子・細胞レベルから解明し、その知見をもとに新しい治療薬や治療戦略の開発を目指しています。
今後は、痛みや治療による副作用の分子機構解明をさらに進めるとともに、臨床データとの連携を強化し基礎研究成果を実際の治療へと還元する研究へ発展させるほか、新規治療薬の開発だけでなく、既存薬の新しい使い方を開発するドラッグ・リポジショニングや、漢方薬を含めた多様な治療法の可能性も探求していきます。薬学部では3年生後期から卒業研究が始まるため、本研究室に所属し両先生と共に新たな発見を目指したり、臨床に貢献できるような知見を得ることが可能。また、研究活動を通じて実験技術やデータ解析能力だけでなく、課題を発見し解決する力、論理的思考力、チームで研究を進める協調性などを身に付けることができるでしょう。生命現象や医療に関心があり、将来は「人の役に立つ研究をしたい」と考える人、基礎実験と臨床課題の両方に興味を持ち、他者と協働して幅広い視点で物事を考えられる人にとって、最適な学びの環境が広がっています。
【医療科学部 臨床検査学科】
病気の診断や治療を行う際に必要な臨床検査。その中で、尿や便、髄液など、血液以外の体液を採取して調べるのが「一般検査」であり、尿検査もその1つ。
宿谷先生が専門に研究しているのが、顕微鏡を使う尿沈渣検査。採取した尿を遠心分離機にかけて液体と個体に分け、液体を取り除いた残渣物(固形物)を顕微鏡で調べ病気の有無や状況を判断します。対象となるのは、健康な状態の尿では見られない赤血球や白血球、腎臓や膀胱のがん細胞、感染症を引き起こす細菌など。成分を確認し、潜んでいる病気を見つけ出すことが大きな目的です。
まだまだ未知の領域が広がりさまざまな可能性を秘めた尿検査ですが、今後大きな課題となってくるのが人材の育成です。特に人の力によって行う沈渣検査では、病気の発見が検査を行う臨床検査技師の技術にかかっていると言えるからです。
【医療科学部 臨床工学科】
心臓手術を行う時には、いったん心臓を止める必要があります。その際、肺と心臓の代わりに酸素を含んだ血液を全身へ送り出すのが「人工心肺」です。患者の生命を維持するには、臓器が必要とする酸素を適切に届けられるよう血液の「量」と「濃さ」の管理が非常に重要。これまでは、患者の体の表面積から算出した血液量を一定に保つ管理方法が一般的でしたが、時に合併症である腎障害が発症してしまうことも。その原因として、手術の出血などから貧血状態になり、腎臓への酸素供給量の低下が考えられていました。海外では従来の人工心肺管理と、酸素供給量を調節しながら血液を送り出すという新しい人工心肺管理の比較検討が行われてきましたが、対象となる患者のほとんどが大柄な欧米人。そこで、向田先生をはじめとする研究チームは、貧血になりやすい小柄な体格での検証が行われていないことに着眼し、日本国内の症例を用いた検証をスタートさせました。
本研究の対象は、順天堂大学医学部附属順天堂医院で人工心肺を使った心臓手術が行われる患者300名。体表面積から算出した血液量を維持する従来の管理を行うグループと、つねに酸素供給量が基準値以上になるように血液量を調整する新たな管理を行うグループにランダムに分けました。そして、手術終了時、術後1日目、術後2日目に急性腎障害の発症の有無を評価したところ、従来の管理では30.4%、調整管理グループでは14.6%と、発症リスクが0.48倍に低下するという結果に。酸素供給量を指標に血液量を調整する新しい人工心肺管理は術後の急性腎障害の発症を抑制することが明らかになり、特に貧血が進行するほど有効であることを発見。入院日数の減少や術後経過の向上など、さまざまな面で人の健康に貢献できるようになりました。この成果を受け、欧米のガイドラインでも推奨。向田先生たちの研究が世界のスタンダードとして認められました。
現在も合併症のない人工心肺管理についてさらなる研究が進められており、血液量のほか適正な体温など「患者さんに適した人工心肺管理とは?」を追求。大学病院から提供されるデータをもとに学生と一緒に統計解析にかけて臨床研究を進めるほか、今後は動物実験による基礎研究にも取り組んでいく予定だそう。人工心肺装置など高度な医療機器を操作する臨床工学技士は、人の命に関わる医療の最前線で、医師とディスカッションをしながら治療に関わっていく重要な役割です。
【健康データサイエンス学部】
医療の進歩により治療の選択肢は飛躍的に増加したが、同時に最適な治療法を選ぶのは容易ではない。複数の治療法を組み合わせると選択肢はほぼ無限となり、どの治療法がどのようなリスクや利益をもたらすか、他の治療法との併用でリスクが軽減できるか、また治療完遂の道筋が明確かどうかなど、様々な角度から検討する必要がある。このような状況において、生物学や医学における現象を統計学的手法で分析・解釈する「臨床統計学」の役割はますます重要になっている。臨床統計学は、生命科学研究の質を保証するのみならず、確立されていない治療法に対するアンメットニーズ※の解決や、未病段階での予防策につながる対策の確立にも寄与すると期待される。
順天堂大学において、医学・医療に特化した「臨床統計学」の研究を行うのが大津准教授の研究グループである。これまでに、大動脈解離寸前の患者に対し人工血管などのデバイスを用いた長期安全性の評価や、妊娠中の女性に焦点を当てた医療の質向上を目指す研究が進められてきた。このような事例は、転院などや研究自体の困難さにより患者の長期データ収集は容易ではない。したがって、一例として日常生活で使われているデータ(例:健康診断の記録・診療記録・保険請求データやウェアラブルデバイスからのデータなど)を研究として活用することで、医療の安全性や質の向上を目指すのである。こうした研究を推進するには、医療システムの知識、データ収集の方法、エビデンスの導出、論理的思考やチームワークなど、様々なスキルの習得が不可欠である。
大津准教授は「医師をはじめとする先人たちの努力により、日本の医療の質は世界的にも高い水準を維持している」と語る。リアルワールドデータなど大規模なデータを適切な統計手法で解析することで、日本の医療システムの強みを客観的なエビデンスとして示し、国際的に十分評価されていない現状を変えていく考えである。今後は、日本の医療システムから得られた知見を定量的に評価し、国際的なアンメットニーズ※への示唆として医学研究者と連携しながら発信するなど、様々な形で医療のさらなる発展に寄与できる点が大きな魅力である。同時に、適切な統計手法を用いて情報を判断し、他者に説明する力は、将来どの分野に進んだとしても、情報過多の現代社会を生き抜くための強力な武器となることは間違いない。