大阪芸術大学

Contents01
音楽と社会をつなげ、プロとしてより豊かな未来を築いていくために

音楽と社会をつなげ、プロとしてより豊かな未来を築いていくために 【芸術学部 音楽学科】

■課題解決に挑む学問
芸術・表現・音楽>>音楽
■該当するテーマ
経済

音楽を取り巻くさまざまな社会的問題を考察

音楽を取り巻くさまざまな社会的問題を考察 現在、テレビやネットをはじめとするメディアコンテンツは、実に多様な音・音楽に彩られています。メディアの音や音楽は、その作り方やビジネス的価値観が大きく変化。AIの作曲家が誕生し、ゲームやSNSから生まれる音楽がヒットチャートを席巻することも増えてきました。そうした激動の時代のなかで新たな音楽が次々と生まれていますが、作曲された作品には著作権が発生し、演奏行為には著作隣接権が関わるなど、音楽活動は各種の権利問題と切り離して考えることができません。音楽は、社会・経済・法律といった領域と極めて密接に結びついているのです。「本研究では、社会に組み込まれた音楽がどのような制度や枠組みの中で成立し、社会の中で実践・流通していくのか、その背景と構造を明らかにします」と話すのは、音楽学科長の高田耕至教授。「さらに、そこから生じるさまざまな問題や事例を取り上げ、その解決のあり方を考察していきます」。

「音楽」を学ぶことは、「社会」を学ぶこと

「音楽」を学ぶことは、「社会」を学ぶこと 高田教授は、レコード業界での作編曲やプロデュースの傍ら30年に渡り放送メディアの報道番組等への楽曲提供に取り組んできました。その豊富な知見を活かし音楽と社会の関係性を研究。担当する「音楽社会学」や「情報音楽論」の授業ではオマージュと盗作の境界、それに伴う著作権問題、隷属的契約となり得るバイアウト(作品の権利を永久に譲渡し、作り手が自作を自由に演奏することが出来なくなるような状態)の問題、戦争と音楽の関係性等、多様な社会的課題を取り上げます。「音楽家の生存権とは単に表現の自由が保障されるだけでなく、その創作や演奏が正当に評価され経済的にも持続可能であることを意味します。しかし、音楽が社会の枠組みに組み込まれた瞬間に様々な問題が発生。それら問題を理解し批判的視点を持つことで、解決への糸口を探ります」音楽を社会構造の中で多角的に捉え直すことで、音楽家の生存を支える豊かな未来へ繋げていきます。

未来に向けて歩むべき方向性を見出す貴重なチャンス

未来に向けて歩むべき方向性を見出す貴重なチャンス 「“音楽”という言葉から演奏や作曲といった行為が思い浮かびますが、音楽はそれだけで完結するものではありません。演奏や創作に情熱を注ぐことと同時に、音楽を多様な視点から捉える俯瞰的な思考力も不可欠です」と高田教授。本研究では、自らの演奏や創作が社会のどの領域に位置づき、どのように貢献し得るのかを明確にし、自らを主体的にプロデュースしていく力へとつなげます。「大学で学んだその先には必ず“社会”という領域が待っているからこそ、本学での学びは自らの音楽表現が社会の中でどのような意味と役割を担うのかを真剣に考える貴重な時間になり、未来の音楽表現者として本気で歩み始めるための出発点になるはずです」。ネットでの個人発信がますます拡大・氾濫する時代において、この研究は音楽家の社会的責任や音楽家の尊厳についても改めて重要な課題を提示。未来に向けて歩むべき方向性を見出す、貴重な学びの機会になるでしょう。

Contents02
デザインで社会課題に光を当てる―冤罪を疑似体験できるカードゲームを開発

デザインで社会課題に光を当てる―冤罪を疑似体験できるカードゲームを開発 【芸術学部 デザイン学科】

■課題解決に挑む学問
芸術・表現・音楽>>デザイン
■該当するテーマ
豊かな暮らし

冤罪は他人事?若者の中で薄れゆく課題意識を変えたい

冤罪は他人事?若者の中で薄れゆく課題意識を変えたい デザインソフトを使ってモノを作ることだけがデザインではありません。生活・仕事・遊びを快適にする仕組みづくりもデザインの一つ。モノやコトのデザインは私たちに心地良さや喜びを与え、暮らしを豊かにしてくれるでしょう。そしてもう一つ、デザインの力で社会課題にアプローチしているのが、大阪芸術大学・芸術学部デザイン学科の清水柾行教授です。
「私のゼミ学生の一人が、カードゲームを通じて若者における冤罪(えんざい)への課題意識を育むプロジェクトを立ち上げました。冤罪とは無実なのに犯罪者として扱われること、無実の人物が犯していない罪で有罪判決を受けることです。研究室の学生が冤罪の被害者と家族ぐるみで接してきた体験から『ニュース記事の一つ』『自分とは遠く離れた他人事』として冤罪が受け流されている社会や、支援者の高年齢化によって若者の中で冤罪への課題意識が薄れている現状が見えてきました」。

犯人に仕立てていく、うわさや憶測の怖さを体感する

犯人に仕立てていく、うわさや憶測の怖さを体感する 「このプロジェクトでは、冤罪が起こる仕組みを楽しみながら体験できるカードゲームと、ゲーム後の対話ワークショップを行っています」と語る清水先生。ゲームは5人用で、大切な水晶玉が盗まれたところからスタートします。参加者は「おしゃべりおばさん」「おてんばむすめ」といったひと癖ある容疑者役ばかり。この中に「犯人」と書かれたカードを持つ人がおり、プレーヤーはその事実を隠してゲームを進めます。参加者は各容疑者にまつわる「うわさカード」と、事件現場について書かれた「証拠カード」をもとに犯人を推測。このターンを2回繰り返した後、結果発表を行います。「真実が明らかになるラストはゲームで一番盛り上がる瞬間です。断片的な情報から勝手にストーリーを組み立てやっていないのにやったことにする『うわさ』と『憶測』の怖さを体感できるでしょう。ゲーム後は、実際の冤罪事件をテーマに話し合う対話ワークショップを行います」。

「思い込みかも」とみんなが思えたら、今よりもっと寛容な社会に

「思い込みかも」とみんなが思えたら、今よりもっと寛容な社会に 「冤罪事件そのものではなく、冤罪が生まれる理由となる『思い込み』『勝手なストーリーの組み立て』といった誰の中にも潜む意識に焦点を当てているのがポイント。子どもたちには冤罪という言葉を記憶に刻んでもらったうえで、対話型のワークショップを通じて理解を深め、自分事として認識を強めてもらいます。このコンテンツが広がれば、SNSで問題視される勝手な思い込みや他者への不寛容が改善されるかもしれません。小学校や若い世代が集まる多くの場所で自発的に開催され、広がっていけば」と清水先生は期待をにじませます。
2026年2月には日本国民救援会全国版と読売新聞に掲載され、「自分たちにはできないアプローチ」「きっかけとしてすごく良い、面白い」と大きな反響がありました。「環境によって変化してしまう人間というあやふやな存在への理解が得られるはず」と清水先生。デザインの力で、より良い社会づくりに挑戦されていました。