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未来の地球環境を守る回路設計の革新。低消費電力と超高速処理を両立する挑戦

【システム理工学部/肥川 宏臣 教授】

■課題解決に挑む学問
工学・建築>>電子工学
■該当するテーマ
環境

AI時代の爆発的なデータ処理を『省電力』で加速させる

2026年春、関西大学システム理工学部では、エレクトロニクス(電子工学)をグリーンにデザインする「グリーンエレクトロニクス工学科」を開設しました。そんな本学科において、注目を集めているのが情報回路システム研究室。自己組織化マップ(Self-organizing map: SOM)の応用とハードウェア・アクセラレータに関する研究に取り組んでいます。この研究室を率いるのが肥川宏臣教授。大学時代にはデジタル回路の研究に没頭。恩師の「研究を頑張れば海外旅行に行けるぞ」という言葉に背中を押され、通信や制御に不可欠な「PLL(位相同期ループ)」という回路の研究で、未知の世界へと飛び出しました。今やスマートフォンや自動車、AI技術に欠かせない電子回路は、私たちの生活を支える基盤です。肥川教授は「この分野で新しい回路を考えることが、世界をより良く変えていく」と確信しています。

「速さ」と「省エネ」を両立する、究極の専用アクセラレータ開発

現代はAIやIoTの進化によって、膨大なデータを一瞬で処理することが求められる時代。しかし、多くのコンピュータは「プログラムを読み込み、解読し、実行する」という手順を踏むため、どうしても処理に時間がかかってしまいます。そこで肥川教授が取り組んでいるのが、特定の処理を直接実行する専用回路「アクセラレータ」の開発です。汎用的なコンピュータと異なり、一つの目的に特化することで、処理スピードは劇的に向上し、回路そのものもコンパクトに設計できます。例えば、ニューラルネットワークの一種である「自己組織化マップ」を高速で動かすための専用回路を研究。ただ回路を作るのではなく、いかに「シンプルに、省スペースで」構築するかが、教授のこだわりです。複雑な計算を専用回路に任せることで、デバイスが賢くなるだけでなく、無駄なエネルギーを削ぎ落とすことができる――これこそが、肥川教授の掲げる「スマートな回路設計」です。

FPGAを活用した最新研究。電子回路の進化で持続可能な社会を

現在、肥川教授の研究室では「FPGA(Field Programmable Gate Array)」という、後から設計を書き換えられる特殊な集積回路を使って、アクセラレータの実装を行っています。研究の先にある目標は、技術の向上だけに留まりません。回路を小型化し、消費電力を極限まで抑えることは、実は地球温暖化の抑制に直結しています。世界中で稼働している膨大な電子機器の電力を少しずつ減らすことができれば、地球環境への負荷は大きく変わるはず。情報システムが高度に発展し続ける中で、低消費電力な回路設計は、経済成長と持続可能な社会を両立させるために必要不可欠なピースとなります。肥川教授が少年の頃に抱いた「もっと良くするには?」という問いは、地球全体の課題を解決する情熱へとつながりました。現在は、自らの手で未来のスタンダードを創り出し、持続可能な社会を支える次世代の技術者が育つことを期待しています。

巨大地震による被害者を減らすため、街やビジネスの仕組みを変えていく。

【社会安全学部/奥村 与志弘 教授】

■課題解決に挑む学問
総合・教養>>総合政策学
■該当するテーマ
健康・安全

南海トラフ巨大地震で想定される被害とその課題とは

日本は近年、令和6年能登半島地震など大規模な地震に見舞われてきました。そして、近い将来発生が懸念される南海トラフ巨大地震は、死者数29万8千人という、東日本大震災を大きく上回る被害が想定されています(令和7年3月政府発表)。地震被害といえば、津波や建物倒壊による「直接死」を想像しがちですが、発災後の生活環境の悪化やストレスが原因で発生する「災害関連死」にも警戒が必要です。過去の災害データに基づく試算では、災害関連死の犠牲者は5万2千人と推計されました(この推計は、直接死とは別に算出されたものである)。また、近年は外国人観光客の増加や在宅勤務の普及など、私たちの生活様式が急速に変化しています。その中で通り一遍の災害へのそなえや災害時の対応を教えているだけでは、多様な人々の行動を適切に変容させることはできません。こうした状況の中で、私たちはどのようにすれば未来の大災害にそなえ、被害を減らすことができるのでしょうか。

災害へのそなえが暮らしの中に組み込まれる仕掛けが必要

関西大学社会安全学部の奥村与志弘教授は、「防災の考え方を日常の街や製品、サービスに組み込むことが重要です」と指摘します。そのため、多分野の企業が防災・減災の取り組みに積極的に関与する必要があると考えています。例えば、大都市における津波避難の一案として、オフィスビルの1階から3階までをカフェやレストランなど誰もが立ち入り可能な用途にすることが挙げられます。平常時には街のにぎわいを生み出す一方、緊急時にはカフェが非常口となり、誰もが高層階へ避難できます。また、電気自動車は移動可能な非常用電源として活用できるほか、住宅にも蓄電池設備を導入することで災害時も電気の使用が可能になります。ほかにも、貯水機能のある水道管や固定器具付きの家具など、日常で利用するサービスや製品の中に、災害による犠牲者を減らすための仕掛けを忍び込ませることで、日常の快適さと災害への安全性を両立させることが可能になります。

大災害から少しでも多くの命を救う方法を模索する

こうした新しい防災・減災の価値観を社会に広め、ビジネスとして発展させるために、奥村教授は2022年に「うめだ南トラ研究会※」を設立。関西大学の研究者や企業、行政関係者が参画しています。「アイデアを創出し、社会実装にまでつなげることを一つ一つ積み重ねることが、日本の未来を大きく変えていくと確信しています」「この取り組みは、防災力の向上だけでなく、地域や企業の成長の新たな原動力にもなるはずです。私はこれからも、大災害から少しでも多くの命を救える方法を模索し、災害大国・日本が目指すべき道を考えていきます」と奥村教授は語ります。人との出会いを通じて、新たな価値観や仕組みを生み出し、社会課題の解決に貢献する。その第一歩が、社会安全学部での学びと経験の中にあります。
※『南海トラフ巨大地震を見据えた大阪梅田地区の安全・安心イノベーション』研究会

  • 学校ID.GK001660
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