これからの“働き方

就労支援の支援者がメンタルヘルス不全にならずに働ける管理職・組織の研究

■学問大分類:医学・歯学・薬学・看護・リハビリ
■学問小分類:リハビリテーション・作業療法・理学療法
■提供:北海道文教大学

障がい者の就労支援を行う人の、支援に関する知見を広めるために

障がい者が一般企業等で働くことを支援する就労系障害福祉サービスを利用し、職業訓練などを受けて仕事についた人の数は年々増加し、2020年には初めて2万人を超えました(厚生労働省資料)。障がいや重い疾病があっても働ける環境が徐々にですが増えてきています。「そこには、国の制度やそれに基づく企業の体制づくりといった状況の変化に加え、就労系障害福祉サービスで働く支援者の努力も忘れてはなりませんが、一方でその支援者自身が安定的に働ける環境が必ずしも整っているとはいえません」。そう問題提起するのは、作業療法学科の大川浩子先生です。こうした福祉サービスに従事する人たち(エッセンシャルワーカー)のなかには、うつ病に代表されるメンタルヘルス不全の状態となり、離職してしまうケースが少なくないのだそうです。そこで、実態を調査し、「支援者のための支援」に関する知見を得て広めていくことを目指して、研究を行っています。

若手支援者への調査で見えてきた管理者へのアプローチの重要性

「障がい者の就労支援などに携わる方が仕事を続けられなくなる背景には、さまざまな要因が関係しています。」と大川先生。職場の人間関係といったことに加え、福祉の仕事に対して思い描いていた理想と勤務する事務所などとの考え方のギャップ、さらに結婚・出産といったライフスタイルの変化等々が重なって精神的に負担となり、職場に行けなくなってしまう……。そうした例も見られるといいます。「さらに、そうして辛くなっている自分の気持ちに気づけない、周りのことに気づかず心のバランスがとれなくなると、結果として辞めてしまうことにつながりやすいですね」。そこで、大川先生は、離職が多い若手の支援者向けの調査や、不安やストレスを軽減させるワークショップなどを実践してきました。そのなかで浮かび上がってきたのが、現場の支援者だけでなく、施設や事業所の管理者にもアプローチをする必要性。信頼する部下が元気に働ける環境づくり。その知見も見逃せないのだと話します。

自分自身が働き、生きるための視点が身に付く作業療法士の世界

大川先生は就労支援を行っている施設や事業所の管理職へのアンケートをスタートさせました。職員の業務内容、人材育成、管理職自身のストレスの状況やワーク・エンゲージメント(意欲や熱意)を尋ねるためです。「以前行ったインタビュー調査では、複数の事務所などを運営する法人か、1事務所のみを運営する法人かといった規模や地域によっても、管理職の人の課題に差がありそうだと分かってきました。さらに状況を把握したうえで、管理職向けの研修プログラムなども開発したいと思っています」。障がいや病気があっても働けるためには、その支援に従事する人たちが健全に働き続けられることが大切なのだと大川先生は話します。「作業療法でいう作業(生活の全ての活動)の一つである仕事に着目し、就労支援に関心を持ちました。人の人生に関わる、作業療法士ならではの視点を活かせればと思っています」。自分自身が働き、生き方を考えるための視点や知識も身つく分野だと、その魅力も教えてくれました。

10年後のまちづくり

社会教育としての子育て支援~大人が学び、地域で支える環境をつくるために~

■学問大分類:教育・保育
■学問小分類:保育・幼児教育
■提供:北海道文教大学

地域で子どもを見守る環境が希薄になり、増える孤立した子育て

戦後間もない第1次ベビーブーム期(1947〜1949年)に年間約270万人だった日本の出生数は、2019年には同87万人と1/3以下に減少。当然ながら、子どもと接する機会も減っています。「地域で子どもを見守る環境が希薄になっていることに加え、核家族化が当たり前となるなか〝孤立した状態〟で子育てを行っている家族も増えているんです」と話すのは、社会教育としての子育て支援を研究する、こども発達学科の吉岡亜希子先生。子どもの不登校、虐待問題などがクローズアップされるたびに保護者が責めらるケースがありますが、逆に大半の母親、父親は当然ながら一生懸命、子どもと向き合っています。「それは当然としても、子育てというのは本来、保護者だけでできるものではないんですね。両親、先生、地域の人たちなど周囲の大人がみんなで支えるという環境が必要です」。そのための学びの機会をつくるということが、吉岡先生のテーマです。

障がいのある子どもたち&保護者とも交流し学ぶチャレンジド教室

「子育て支援というと、子どもへのアプローチを思い描くかもしれませんが、社会教育としての子育て支援は、大人たちの側が何を、どのように学ぶべきかを問い、創造していくことが目的」。そのために吉岡先生が実践しているのが親同士や親と子育て支援者、教育者などが手がける子育てネットワークの分析です。北海道文教大学でも、「チャレンジド教室」を実施しています。これは、特別支援学級などに通う子どもたちに来校してもらい、活動を行うプログラム。「学生が主体的に企画・運営を行い、障害のある子と触れ合い、支援教育について実感をもって学ぶとともに、保護者とも交流します。保育士・幼稚園教諭、教員を目指す学生にとって、保護者との人間関係づくりも大切な経験になるんです」。また、3年生のゼミでは、不登校の子どもたちが通うフリースクールを訪問。どうすれば一緒に楽しい時間を過ごせるか、自ら企画し、実践するなかで支援への理解を深めています。

自分の持ち味を伸ばしながら主体的に行動する力を身につける

「学生には、実際の現場に触れ、当事者の子どもたち、保護者の方々、支援者のみなさんの感覚のようなものを感じてもらうことを大切にしています」。その上で、自らの頭で考え、主体的に行動できるようになってほしいと吉岡先生は話します。大人が学び、地域の人々が関わるなかで子どもは育つものであり、そうしたつながりをどう構築するかを考えることが、まさに10年後のまちづくりにとって大切なこと。そこには、多様な人がいます。「だからこそ自分の持ち味を見つけ、伸ばしていくことが大切です。元気で活発な子もいれば、おとなしくて目立たない子もいます。保育や教育に関わる、いわゆる〝先生〟も多様でいいのです。しかし、自分の良さは、往々にして自分には見えません。だからそこ、いろいろな人と出会う機会をつくってください」。直接、教育に携わらなくても、誰かのために力を発揮したいという方なら、きっと沢山の気づきや学びがある分野です。

エネルギーと世界

気候変動などの環境問題から、世界の枠組み、国々が関わる政治を学んでいく

■学問大分類:国際・国際関係
■学問小分類:国際関係学
■提供:北海道文教大学

世界共通の地球環境問題を知る鍵は「国際政治」にあった!

地球環境問題という言葉を聞かない日はありません。なかでも気候変動にともなう海面上昇、砂漠化、頻発する自然災害などは世界共通の問題となっています。その解決のために自然エネルギーを推進すべき、という議論も盛んですが、ことはそう単純ではない、と話すのは国際教養学科の宮本融先生です。「気候変動の問題は、石油など化石燃料の使用というエネルギーの問題ですが、①地球環境に関する国際政治、②石油を中心とするエネルギーをめぐる国際政治--つまり、各国の思想や国同士の関係性まで認識しなければ、本質を捉えることができません」。地球環境問題も、各国・各地域で現象や深刻度が異なるさまざまな問題が関係しています。世界が複雑に結びつくなか、それらが私たちの日常生活にも影響を与えます。「国同士の関係性などが激変する今の時代、世界の枠組みを理解しなければ、〝どこを向いて走ればいいか〟がわからなくなってしまうのです」と、宮本先生。

歴史的関係、イデオロギー、人々の考え方を知るということ

地球環境問題を典型的な題材として、国際的な問題の構造、国際政治学の理論的枠組みへの理解を深めていくことを宮本先生は学びのテーマとして取り上げています。「国や地域の歴史的関係、イデオロギー、その国の人々の考え方なども知ることで、激変する状況の先を見通す力が身につき、たとえばビジネスチャンスもつかんでいくことができるんです」。1997年に採択された京都議定書(気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書)では、アメリカが主導的な役割を果たしました。そこには、理想主義を大切にする政治的風土があると宮本先生。「アメリカで地球環境問題を国際政治の中心課題に押し上げた科学者や政治家、行政官の思惑や闘争を理解することにより、政治における公益と自己実現という私益の両立をどう図るべきか、といったことを考えるヒントが得られます」。ビジネス、公共サービス、個人においても国際政治は遠い世界の話ではないと話します。

国際政治の知識が、社会変革にもつながる活動の力になっていく

国際政治について学ぶことにより、エネルギーに代表されるような世界的な関係性の知見を得ると同時に、政治的な視点をもって社会にアプローチしていく方法も身につけてほしいと、宮本先生。「たとえば地域における市民活動を、企業や行政を巻き込みながら進めていくためには、前述のように公益と私益をいかに両立させるかといった視点が大切になります。そのための〝教材〟としても国際政治への理解を深めることは有効だと思います」。たとえば、宮本先生が国際政治学(博士課程)をおさめたタフツ大学(米国ボストン)では学生が学内・地元でのエネルギー消費の実態調査を行っているそうですが、そうした自治体や企業にも関連し、社会変革にもつながるよう活動を行うための知識を学ぶことで、実践できる力と、問題に目を向ける習慣が身につくのだと話します。「大学で身につける教養としての知識を、自分なりに実社会に生かしていってほしいと願っています」。

産業・企業を支える研究と活動

廃棄物として捨てられる加工副産物の価値を見直し、環境に配慮した食を提案

■学問大分類:栄養・食物
■学問小分類:栄養学
■提供:北海道文教大学×食品業界

日本の食糧基地で廃棄されるバイプロダクトの利活用で地域に貢献

食物の栄養価を指標とした食料自給率が200%を超え、日本の食糧基地と称される北海道。「多くの食品加工企業が事業を行っており、さまざまな商品が開発されています。一方、その加工段階で多量の副産物(バイプロダクト)が発生し、相当量が未利用のまま廃棄されていることが課題だ。」と話すのは健康栄養学科の山森栄美先生です。再利用されない理由は、輸送・二次加工のコストの問題などさまざまですが、「副産物には栄養価の高いものもあり、アイデア次第で利活用が可能です。廃棄食材の機能性など新たな価値を見出し、発信することで食品産業、そして、ひいては地域に貢献したいと考えています」。SDGs(持続可能な開発目標)が企業活動を行う上での重要な指標の一つとなるなか、副産物の有効活用について相談を受けるケースも増えているのだそうです。世界的なテーマにまさに直結する、環境に配慮した食の提案が今、大学に求められていると山森先生は話します。

企業と連携し、互いに専門性を持ち寄って新たな価値を生み出す

食品加工企業などと連携協定を結び、副産物の利活用の可能性を探ることが山森先生の研究テーマの一つ。たとえば、健康飲料として人気の豆乳。その製造過程で、大豆の搾りかす=おからが出ます。一部は家畜の飼料として供給されているものの、大半は産業廃棄物となっています。ところが、このおからには思わぬ機能性がありました。「おからの加工品をサンプルとしていただき、調理特性や物性について実験、官能評価などを行った結果、素材由来の機能を活かした食品加工に使えることがわかりました。天然の材料としての商品化、流通が期待されます。」これは、研究が行われている一つの例ですが、おからを予め扱いやすい形状に加工するなど、企業側でも商品化を見据えた検討を進めているそうです。専門性を持ち寄って新たな価値を生み出す。産学連携のメリットを活かした研究であり、地域の課題解決を考える地道で、しかし影響力の大きな研究です。

学生も商品開発に参画。広い視点を持つ管理栄養士へと成長できる

副産物の有効活用による廃棄物の削減と、環境問題への貢献--。まさにSDGsに直結するテーマですが、実はそれだけでは片手落ちなのだと話す山森先生。「食を考えるなかで、大切なキーワードは健康とともに〝おいしさ〟です。本学は、鶴岡新太郎・トシ夫妻が、北海道の栄養改善を目指して開校。当初から重要視していたのが、〝おいしさを犠牲にしない〟ということでした」。建学の精神は今も引き継がれています。学内には「商品開発研究会」という組織があり、かねてよりスーパーなどの相談をうけて弁当などを提案・開発。そこでも、おいしさがテーマとなっており、副産物の利活用においても、おいしく食べられるということの周知が大切なのだと教えてくれました。副産物を利活用する商品の提案には、学生も参画。環境に配慮した商品の開発に携わることで、卒業後も広い視点で食を捉え、その解決法を自ら考え、実践できる管理栄養士へと成長できる環境といえます。