これからの“働き方

大学生の抑うつ症状に対するスマートフォン用アプリケーションを用いた効果検討

■学問大分類:人間・心理
■学問小分類:心理学
■提供:北海道医療大学 心理科学部臨床心理学科

心理的支援の必要性や広がり

COVID-19の感染拡大に伴うストレスや現代社会の様々なストレスを抱えた人々への支援を求める声が高まっている中、医療機関での心理職不足や心理的支援へのハードルの高さなど、利用しやすい支援体制の構築が課題となっています。こうした課題から、近年、効果が示されつつある、ICTを活用したゲームベースドの支援の継続のしやすさ、医療と共同したアプリケーションの様々な利用方法や効果について研究しているのは、北海道医療大学臨床心理学科の関口真有先生。心理学の学びや研究に大切なことは、人のこころや、困っている人・悩んでいる人の支援に関心があるかどうか。研究は一人でもできますが、様々な人と協働することでより良いものになっていきます。研究を通して、調べ、考え、自分の研究がどのように社会の役に立つのかを考えることは大切です。様々な人とディスカッションする中で、様々な気づきや研究の面白さを実感できるかと思います。

医療への貢献の可能性

COVID-19の流行により、今後メンタルヘルス支援は重要な課題となります。日本では、対面式の心理的支援が主流ですが、ICTを用いた支援と従来の心理的支援を掛け合わせることで、精神科医療における新たなシステム構築への一助となる可能性があると考えています。ニュージーランドにおいて、若年齢層に対するコンピュータ型認知行動療法として、SPARXが開発され、抑うつ症状に対して対面式の認知行動療法に劣らない効果が明らかにされています。日本でもSPARX日本語版が開発されていますが、それを用いた臨床試験は行われてきていません。そのため、日本の大学生に対してSPARX日本語版が適応可能かそして、SPARX日本語版がどのような効果があるかについて、明らかにされていません。そこで、関口先生たちの研究チームでは、SPARX日本語版が抑うつ症状を呈する大学生に対してどのような効果を示すか検討を行っています。

メンタルヘルスのためのスマートフォンアプリケーションの開発

SPARXは、ゲーム性を盛り込んだ、そして、効果が認められたスマートフォンアプリケーションの一つです。この研究は、数年前からSPARXの販売を行っている企業、様々な大学の先生方と協力して行っています。大学生を対象にSPARXを定期的に行っていただいて、行わない人たち(待機統制群)と比較した研究を行った結果、抑うつ症状の低減に効果が示されました。現在は、その結果を踏まえて、日本人に適したSPARXの活用方法について研究を行っています。従来の利用方法であるユーザーが自分のペースで実施する、あるいは、支援者からの何らかのサポートがありながら実施するなど、より多角的な効果がある利用方法の検討とSPARXの改善について検討していく予定です。

これからの“働き方

障害がある人とない人の『普通』とは?「アダプテッド・スポーツ」から考える

■学問大分類:福祉・介護
■学問小分類:福祉学
■提供:北海道医療大学 福祉マネジメント学科

障害者:マイノリティ、健常者:マジョリティ。しかし……

健常者という多数派に合わせた環境づくりの結果、世の中は障害者という少数派が暮らしにくく生きづらい状況となっている。例えば歩道のわずかな段差が、車イス移動には大きな支障をきたす。こうした中、「どのようにすれば障害がある人とない人の『普通』を同じものにしていけるのか」を探究しているのが北海道医療大学福祉マネジメント学科・スポーツ・マネジメントコース講師の近藤尚也氏だ。
スポーツをきっかけにして、活動領域を広げられるような取り組みを行っている同コースにおいて、近藤先生自身は「アダプテッド・スポーツ」を通じたスポーツ活動の普及に取り組んでいる。
「人がスポーツに合わせるのではなく、人に適応(=アダプ卜)させて、スポーツのルールや用具を工夫するという考え方です。パラリンピックで採用されている競技をはじめ、寝たきりの人でも楽しめるボール投げ運動なども、その考え方の一つと言えます」。

「する」だけでなく「支える」「みる」といった視点からも関わる

「障害のある人との共生をめざす現代社会で、障害がある人の活動範囲の狭さ(制限)を改善したいと考えています」と話す近藤先生。プレイヤーとして「する」だけでなく、「支える」「みる」といった視点からもスポーツに関わることで、活動領域そのものを広げている。
例えば「支える」観点で考えると、人や設備、場所、機会とさまざまな物事を整えていく必要があり、スポーツ分野以外との連携も必要になる。スポーツを入口にして、さらに別分野に関わりを広げていくことも目的としているのだ。
これまではゼミ単位ではなく、大学内で興味関心のある有志を募り、パラスポーツをサポートするサロンに参加したり、企業などが求める障害のある方へニーズを知る機会の設定に取り組んできた。児童館や高齢者施設などからスポーツ活動へのニーズを受けて行う取り組みもある。今後、学生が自主的に「機会」をつくり、企画運営に取り組むようにしたいとも話された。

障害があるから・障害がないから、といった固定概念を取り払う

障害のある人が増加していくなかで一人ひとりの活動が制限されることには、社会全体にも大きな悪影響がある。逆に、障害者が取り組みやすい余暇や楽しみをサポートしていけば、全体の活動が広がっていく。さまざまな分野と繋がりを持つことで、障害があるからこそわかる視点も生まれ、障害が有る・無いの垣根を越えた考え方のもとに活動できるようになるだろう。
「共生社会の観点からも、障害者が支えられるだけではなく、支える側になる視点を持ってもらえるよう、これからもサポートしていきたい」と話す近藤先生。この研究に向いている学生像として、次のように話された。
「『自分が得意なこと』を『行動と結びつけることができる』人は、きっと興味関心を持って学んでいけるでしょう。障害を理解し、工夫することの大切さを知ることで、できる・できないだけの物差しではなく、どうすれば実現できるのかという柔軟な考え方を習得できます」。

10年後のまちづくり

病院だけじゃない。さまざまな現場で求められる言語聴覚士

■学問大分類:医学・歯学・薬学・看護・リハビリ
■学問小分類:言語聴覚学
■提供:北海道医療大学 リハビリテーション科学部言語聴覚療法学科

子育て支援や誰もが過ごしやすいまちづくりも役割の一つ

言語聴覚士は、疾患や障害などにより言語・コミュニケーションや食べたり飲んだりする(摂食・嚥下)ことに支障をきたしている人に対してリハビリテーションを行う職種です。その多くは病院で働いており大人を対象としたリハビリテーションを行っています。しかし、現在は子どもの発達支援を行う場で働く言語聴覚士も増えてきており、子育て支援や誰もが過ごしやすいまちづくりの一役を担っています。子どもの発達支援の現場では、言語・コミュニケーション(ことば)の発達の遅れや障害に対して支援が行われています。ことばの獲得は、生まれながらにヒトが有する生得的な面と、ヒトが育つ環境の面の相互作用により発達します。したがって、ことばの発達の支援は子どもに対する直接的な介入だけではなく、子どもの生活にかかわる大人を含めた支援環境を適切なものにしていく必要があります。

言語聴覚士の可能性

北海道医療大学リハビリテーション科学部言語聴覚療法学科の小林健史先生は、ことばは、日々の安心感のある生活の中における適切なかかわりの中で育まれていきますので、大人を含めた子育て環境(支援体制、社会資源など)が非常に重要と話す。市町村で行われる乳幼児健康診査に言語聴覚士が参加することで、ことばの発達の遅れやそれに伴う親の子育ての不安を早期に発見し、スムーズに支援を開始できる体制を整えることで、ことばの発達の促進だけではなく、虐待予防を含めた子育て全般の支援の一役を担うことが出来ます。例えば、保育士さん、特別支援学校の先生を考えている方なども、この分野を学ぶことで、一歩踏み込んだ、より専門的なスキルを身につけることができると思います。

現場との連携や必要な視点

言語聴覚士としての学び・研究を進めていくには、現場で働く保健師さんをはじめとする行政の方々との適切な連携のあり方を考えること、また、子どものことばの発達にかかわる具体的な支援法についてさらに研究を進めていくことが重要。小林先生は、連携については大きなまちのモデルではなく、小さなまちでの取り組みが非常に参考になります。支援法については、訓練室で行われる指導だけではなく、家庭でどのようにしてことばを育んでいけばよいかを、事例の特徴ごとにまとめるといったことが目標であると考え、日々研究や調査を進めています。

10年後のまちづくり

リハビリにおける近赤外分光法(NIRS)を用いた作業課題時の脳活動を探究

■学問大分類:医学・歯学・薬学・看護・リハビリ
■学問小分類:リハビリテーション・作業療法・理学療法
■提供:北海道医療大学 リハビリテーション科学部作業療法学科

日常動作や認知活動を脳活動の面から解析

エビデンス。それは証拠や根拠という意味を持つ言葉であり、様々な場面で用いられている。リハビリテーションの臨床においても、他の医療分野と同様に、エビデンスに基づく医療が重要である。とは言え、リハビリのなかでも人が普段日常で行う「作業」に着目した作業療法は、裏付けを示すのが難しいものである。
「普段から行っている動作や認知活動を脳活動の面から解析することは、リハビリの実践にも重要です。ところが多くの脳活動計測手法は、寝たまま・座ったままの状態でしか行えません。つまり『作業』とは馴染まないのです。そこで注目を集めているのが近赤外光分光法(NIRS)。この手法を用いることで、様々な動作・認知活動中の脳活動を調べることができます」。
こう話すのは、北海道医療大学リハビリテーション科学部作業療法学科の桜庭聡先生だ。

「利き手交換」における動作スキル向上を確認

例えば脳卒中後遺症で利き手に重度の麻痺を呈した場合は、「利き手交換」を余儀なくされる。しかし食事の「箸操作」は重要な動作であり、非利き手では難しい。実際に非利き手で行った時の脳活動変化はどうか、動作と関連するのか。検討した結果、非利き手の箸操作は習熟と共に素早くなり、前頭前野の領域で活動が上昇したという。非利き手で6週間トレーニングを行うと、動作スキル向上を裏付ける脳活動上昇が得られた。
「臨床場面では、脳卒中後遺症などで箸が上手く使えず食事が大変な患者さんが多くいます。利き手交換は麻痺手の根本的な解決にはなりませんが、自分で食物を食べることに繋がり、トレーニングによる脳活動の変化は、それが有用か否かを推し量る指標になり得ます。研究を重ねることで、より有用な訓練方法を提案でき、質の高いリハビリを可能にします。患者さんの自分の家に帰りたい気持ちに応えるためにも、非常に重要な課題です」。

データや状況から可能性を見いだし、仮説を検証する面白さ

箸操作や書字動作など、日常動作の脳活動を捉えることは重要である。本来あるべき脳活動とトレーニングで強化される脳活動が一致すれば、エビデンスの高いリハビリに繋がるからだ。日常的動作だけではなく、認知的な活動(注意機能や記憶機能など)のトレーニング効果も検討できる。一人でも多くの患者さんが、なじみのあるご自宅等で生活できることを念頭に置いた研究と言えよう。
「脳の活動は実際には目に見えませんが、見えない現象を推定し、理解することが苦で無ければ楽しめます。また、身のまわりに疑問を持ち、興味を持てる方もこの研究に向いています。今あるデータや状況から様々な可能性を考え、仮説を検証することはとても面白いからです」という桜庭先生。こうした考え方は研究だけではなく、リハビリの場面でも役に立つはず。身のまわりで起こっている多くの事象から本質を抽出し、自分に必要な情報を得る洞察力にも繋がるとも話された。