東海大学のゼミ・研究室

地球環境の悪化をくいとめ、私たちが生きていくうえで必要不可欠な自然の恵みを未来にわたって享受するために、国際協力が必要であることには誰も異論がないでしょう。環境問題に関する国際的な取り決めは、多国間で1,300件以上、二国間では2,200 件以上も存在します。では、そうした国際制度は、実際に功を奏しているのでしょうか。条約や協定は、その内容が多くの国々によって実行に移されることではじめて効果を発揮しますから、採択されただけでは問題解決にはつながりません。この研究室では、海洋生態系の保全や気候変動対策、南極の環境保護などを対象として、国際制度がどのように形成され実施されてきたのか、国レベルではどのような政策がとられてきたのか、また、そうした制度や政策は、人々の行動をどのように変化させ、問題解決に向けて効果を発揮しうるのか、について研究しています。

世界の海で獲られるマグロ。なかでも高級なクロマグロやミナミマグロといった刺身向けマグロの多くは日本で消費されています。マグロに限らず、水産物全体でみても日本の輸入量は世界第２位。一方で、国際社会そして日本国内においても、漁業が海の生き物や環境に及ぼす悪影響をできるだけ軽減しながら、持続可能な漁業を実現するためには多くの課題があります。特に商業的価値の高い魚は過剰漁獲がされやすく、乱獲が深刻化して初めて規制が本格化するケースもしばしば生じています。この研究室では、国際的な漁業資源管理の具体例に着目し、国際交渉の実態や各国の行動要因について研究しています。また、過去には世界一の漁業大国であり、現在でも多くの水産物を漁獲し消費する日本が、持続可能な漁業の実現に向けてどのような役割を果たしうるのか、検討しています。

捕鯨問題というと、「賛成か、反対か」の二項対立が強調されがちです。2019年には日本が国際捕鯨委員会（IWC）を脱退し、商業捕鯨を再開したことが注目を集めました。では、日本はこれまで捕鯨に関してどのような政策をとってきたのでしょうか。IWCの国際交渉では、どのような議論がなされてきたのでしょうか。鯨の保護ばかりを最優先しているといわれる反捕鯨国は、実際に鯨の捕獲数を減らすために行動してきたのでしょうか。この研究室では、捕鯨をめぐる国際交渉や日本の政策の実態を分析しています。また、映画や新聞報道といったメディアでは鯨や捕鯨がどのように描かれてきたのか、水族館における鯨類飼育に関する考え方や各国の制度の違い、「生き物をどうとらえ、どう扱うべきか」をめぐる考え方の多様性についても研究しています。

　海洋に溶存する微量気体成分や栄養塩の消長は生物の活動と密接に関わっています。 これらの物質を構成する炭素・水素・酸素・窒素などの安定同位体指標に着目し、温室効果気体や栄養塩の生物地球化学的な循環の解明を目指しています。微量気体成分や栄養塩について新しい分析方法の開発を行い、未踏領域の開拓に取り組んでいます。写真は海洋の植物プランクトンの増殖に必須の窒素化合物である硝酸イオンに含まれる、窒素と酸素の安定同位体を測定しているところです。このような微少量の硝酸イオン同位体の分析装置は市販されていないため、分析できる研究室はほとんどなく、分析するためには装置を製作することから研究が始まります。これまでの卒業研究などを通じて学生と一緒に液体窒素（写真下の液体）や超高純度ヘリウムガスを用いた自作のガス分離装置を作り、テストを繰り返して分析できるようになりました。現在は圧縮空気（写真中央の白い管）を使って分析装置の自動化を進め、世界最高精度の分析を目指して開発を続けています。

海沿いに広がる干潟や、浅い海に海草や海藻が茂る藻場は、生物の多様性を育む場、水質の浄化の場といった恩恵を私たちに与えてくれます。また、波浪の軽減や、海岸線の保護の役割はグリーンインフラと呼ばれ、コンクリートによる防波堤のようなグレーなインフラの役割を補完したり代替したりする事が期待されています。加えて、国連環境計画（UNEP）による報告書『ブルーカーボンレポート』では、海洋生物が隔離する炭素（ブルーカーボン）は陸上で生物が隔離する炭素（グリーンカーボン）の55％に相当すると見積もっていますが、そのうち50～70％は、藻場や塩性湿地、マングローブ林で貯留されており、地球上で最も重要な生態系であるとレポートしています。
私たちの研究室では、海洋環境の保全や地球温暖化の緩和に重要な役割を演じる干潟や藻場と言った沿岸域を対象に、リサイクル素材を使って新たに作り出すことや、効率的に観測するための観測方法の開発を行っています。

日本の干潟は、戦後の高度成長期に埋め立てが進んだこともあり、約40％が失われたと考えられています。特に、東京湾や大阪湾といった大都市の海沿いの干潟はほとんどが埋め立てられました。干潟が失われたことによって、様々な恩恵が失われたわけですが、失われるだけでは無く、酸素の少ない海水がたびたび発生するようになるなど新たな環境問題が生じました。そのため、干潟や浅場を保全するだけで無く再生する事が試みられていますが、干潟を作る素材の確保に苦労しています。
静岡市西ヶ谷の清掃工場によって焼却されたごみは、高温で溶かされダイオキシン類を分解し、重金属が封じられることで安全なガラス状固形物である溶融スラグになります。この溶融スラグは日本で初めて農業用の肥料として認められました。溶融スラグは、砂質の干潟程度の粒径の物質です。そこでこのリサイクル材を使って、干潟を作り、水質への影響や、生物の定着の様子を観測し、アサリが着底して生存する様子を確認しました。今後、こうした素材で海草を育てるなど、失われてしまった沿岸環境を保全、再生するための研究を行いたいと思っています。

私たちが学ぶ駿河ベイカレッジは、景勝の地三保半島にあります。東の駿河湾、西の折戸湾に挟まれ、普段から潮の香りや潮騒の音に触れる事が出来る、海を学ぶにはもってこいの環境です。この恵まれた環境に加えて海洋調査船『望星丸』を使った海洋実習では眼前の海、駿河湾ばかりで無く黒潮を横断したり、遠く瀬戸内海や屋久島まで足を伸ばす事もあります。小型実習船の『北斗』や『南十字』、折戸湾に面する臨海実験所を使って、駿河湾や折戸湾での様々な実習、研究活動を行っています。それだけでは無く、卒業研究では『海』のあるところに赴き、その地域の海の抱える問題を考え、海洋環境を改善するための活動に参加し、実践的に学んでいます。私たちにとって『海』はもう一つの教室なのです。

海洋開発技術は、海底油田開発が牽引してきました。現在では、水深３０００ｍ近くの海底に油田の井戸を作り、様々な機械やパイプラインを設置することも可能になっています。海底油田のプロジェクトでは、石油を精製するための浮体式プラットフォーム、多くの井戸からの石油を輸送するための海底生産システム、海底と洋上を繋ぐライザーと呼ばれるパイプライン、人間が作業できない海中で長時間作業する水中ロボットなど、陸とは異なる多くの新しい技術が開発されてきました。現在日本近海でも増加しつつある洋上風力発電においても、これらの技術や知識が応用されています。
私達の研究室では、最新の海底油田開発技術、日本が世界をリードしてきた造船技術等について学びながら、より一層環境に優しく、持続可能な海洋利用を目指し、新しい海洋技術の研究を進めています。海底歩行ロボット、小型船のグリーン化やAIを用いた自律航行船などを題材に、３Dプリンターも活用して試作を重ねながら、新しいアイデアを試しています。本学は船と桟橋を所有しており、海でフィールド実験もしています。一緒に、新しいアイデアで海洋技術のイノベーションを起こしませんか？

海洋開発は、人間の経済活動に不可欠なものですが、その一方で、それまでに普通に存在していた自然が破壊されてしまう可能性もあります。開発前の自然の姿を覚えている地元の人からは、昔はこうだったんだよ、というお話を聞くことはできますが、映像やデータが無ければ、時間と共に記憶が風化してしまう可能性もあります。また、深海ではアクセスが難しく、そもそもどのように環境が変化していったのかを知ることは容易ではありません。
私達は、沿岸域から深海まで、その海域に興味を持った人なら世界中の誰でもがアクセスでき、海洋環境の変化を見える化できるような情報ネットワークの構築を目指し、新しい観測装置の開発と研究を行っています。Sky to Water Systemと呼んでいる観測システムでは、空から水中までのドローンを使って、例えば、サンゴ礁の映像と、気温、水温、水質などを同時に記録できる装置を多数展開します。このシステムでは、空中ドローンと洋上の自律ロボット船と水中ロボットが一体となってデータを収集します。そして、世界の異なる地域のデータを同時に取得・蓄積して、研究者以外の人もアクセスできるデータベースを作ろうとしています。
科学的データに加え、地元の人の意見も記録していくことで、地元の海を守り育てる活動にも貢献できるシステムを構築したいと考えています。

航海士が果たすべき役割は言うまでもなく、船種、船型、操縦性能の良し悪しにかかわらず、更にどんな劣悪な環境条件下でも、船舶を適切に制御して航海の安全を維持する技量を身につけ、人や財貨の移動を確実に達成させることです。逆に、船舶の性能や周辺環境に恵まれた状態であっても、操船者の技量が劣っており、判断ミスを起こせば、船舶が危険な状態に陥る場合があります。時には、時間的にも費用的にも大きな犠牲を伴い事故に至ることもあります。つまり、航海士、船舶と環境、この三者はいつもバランスの取れた状態で、航海士は困難な操船状況をも着実に処理できる優秀な能力と技術を備え、船舶は良好な性能を備え、操船が容易に行える環境を整えることが必要です。
しかしながら、船舶の操縦性能は船主や荷主による要望、輸送の目的に応じて船種船型が多種多様化しています。現在運航されている船型は全長50m程度の小型船から350m以上の超巨大船まで存在し、船型ごとに運動慣性の大きさは異なります。仮に同型船であっても、積荷の種類や状態などで喫水やトリムが変化して運動性能や推進性能などの操縦性能が異なります。このような状況の中で船舶の性能が一定の基準を保てるように船舶を設計することは困難と言えるでしょう。そのため、安全な航海を達成するためには、航海士の技量向上と周辺環境の改善を行う必要があります。
船舶運航に関する様々な規則は国際的性格が色濃く、船員の教育課程や資格、交通ルールなどは国際規格のもとで定められています。航海士の技量（知識、技術、能力、意識など）を向上させ、技量レベルを担保するための教育・訓練に使用されるツールとしては、教科書の他、動画教材、各種シミュレータ、実船などがあります。特に、航海学の分野教育の中で操船シミュレータや実船での訓練は重要な体験教材であり、学生の訓練には必要不可欠なものとなっています。これらを使用した技術教育は、理論と経験に基づいて合理的に行う必要があり、とりわけ日進月歩の過程にあるシミュレータ技術に対応した新たな教育・訓練手法の提案やその評価方法の開発などの取組を大きく進展させることが必要ではないかと考えています。
一方、人と船を取り巻き、船舶の運動や航海士の行動判断に影響を及ぼす環境の種類として、一つ目に自船の行動を物理的に制約するものが挙げられ、浅瀬や陸岸などの自然的な地形、護岸、防波堤、浮標などの人工的に建設、設置された施設があります。また、風、潮流、波などの自然外乱もあります。二つ目は自船の周囲に存在する他船や、それらの動きにより形成される交通流が挙げられ、やはり自船の行動に制約を与えるものです。三つ目は航海士に対して情報を与えるもので、これには法律、規則などのように航海士の操船行動を律するものや、海上交通に関する情報の提供と航行管制などを行う海上交通センター、そして、船体内部で操船者に情報提供する各種航海計器や船外に設置されている設備などのように船橋にいる航海士の操船行動の判断を支援する操船支援情報があります。
航行環境に依存した海難事故を減らすためには、航路・港湾における水域施設の設計計画や交通輻輳の緩和といった安全施策の立案が必要ですし、航海士の心理的負担を軽減するためは、航行支援システムの開発の他、そのユーザビリティを評価する方法論の検討も重要であると考えています。

水産学科のある清水キャンパスの目の前には駿河湾が広がっています。駿河湾は最深部が2500mに達する日本一深い湾であり、深海域が発達し深海性魚類が豊富なことで有名です。また、沿岸環境も岩礁域、藻場、砂浜、礫浜などがあり、富士川や安倍川などの大河川が流れ込んでいるなど多彩であり、様々な沿岸性魚類がみられます。では、どんな魚が何種くらい駿河湾にはいるのでしょうか？約1200種が生息しているといわれていますが、じつは正確な数は未だにわかっていません。なぜなら、駿河湾からは毎年のように新種や日本初記録種、駿河湾初記録種などが見つかりその数を増やしているためです。この単純なようで難しい課題の解決に向けて、本研究室では沿岸域から深海域までを対象として、調査船を使用するものからタモ網や投網を用いるものまで様々な採集調査を実施しています。

一般的な海産魚類は親（成魚）と子供（仔稚魚）で形態が大きく異なります。稚魚期には、お腹がピンポン玉のように膨らむ、眼や腸が体外に飛び出す、体が大きな棘で覆われるなど、成魚の形態からは想像もできないような非常に奇妙な形態を持つことも珍しくありません。また、形態だけでなく生息環境も成魚とは異なり、成魚が全く採集されない環境を仔稚魚期にだけが利用するということもよくあります。そのため、この成魚とは異なる形態の仔稚魚が何の子供なのか、そしてどのように形態を変え、どんな場所で成長していくのかについて研究しています。研究対象の魚は、沿岸性から深海性の種までと様々ですが、特に未だに情報の少ない深海底生性魚類の仔稚魚期の形態や鉛直分布の解明に力を入れており、毎月、大学の調査船を用いて水深1000m以深の深海域でネット採集を行っています。

民間人も宇宙へ行けるようになりました。少し前は夢でしたね。様々な宇宙食も開発され、バラエティーが増えてきました。今後ますます増えていくのではと思います。さて、宇宙食の製造にあたって考案されたのが「HACCP」に基づく衛生管理です。なぜなら、病院のない宇宙で食中毒は命取りになりかねませんので。現在、我が国ではHACCPが制度化され、食品関連事業者はHACCPの衛生管理に取り組んでいます。私たちの研究室では、HACCPやSDGsの課題達成を目標に掲げ、産官学連携のもと、大きく三つのテーマで研究開発に取り組んでいます。
1. 食品で問題となる微生物制御：主に熱や薬剤に耐性のある芽胞細菌やヒスタミンを産生する細菌の制御について、古典的な手法から最新の技術を用いて研究を行っています。世界であまり研究されていない芽胞細菌の研究は食品業界でも注目を浴びています。学会発表や論文作成は大変ですが、情報提供は業界発展の一助であると認識し、ゴールを目指して学生の皆さんとともに取り組んでいます。
2. マグロの特徴のマッピング：日本人が大好きなマグロ。マグロといっても、種類や部位、漁獲海域などによって食味は異なります。できれば自分好みのマグロが食べたくはありませんか？しかし、多様なマグロがどういった品質かは目利きでなければなかなか分かりません。そこで、官能評価と物理化学的解析を駆使して、消費者が一目で分かる各種マグロの特徴のマップを作る研究を行っています。この評価システムが完成すれば、自身の嗜好に応じてマグロを選ぶことが可能になります。海の恵み、マグロという貴重な資源を無駄なく最大限活用することを目指しています。
3. 地域に特徴的な食品の開発：静岡市、根室市、宮古市などの自治体や企業と、地域の食材や飲食品を用いて、新規商品の開発や改良などを行い、地域振興に取り組んでいます。なかなか短期間で商品化することは難しいですが、これまでに複数のレトルト食品や冷凍食品、海底熟成食品などを開発してきています。ふるさと納税返礼品、お土産売り場や実際の店舗で開発した商品は販売されているものもあります。商品の企画から製造・販売までを企業とともに取り組み、一連の過程を通じて食品業界の仕組みを学びます。

サメ類は一般的な硬骨魚類と比べ高寿命で、大人になるまでの期間が長く、1回の産卵・出産数が少ないため、一度生息数が減ると回復までには時間がかかります。そのためサメ類は絶滅の恐れのある種も多く存在しています。サメ類は海洋生態系の高次に位置しており、生息数が減ると生態系のバランスを崩してしまい、人類が利用している生物種にも影響を与える可能性があります。サメ類の多くは水産物としての漁獲対象種ではないため、分布や生息数など不明な点が多く、繁殖様式も卵生から胎生まで多様であり、年齢や成長、食性などまだまだ生態がわからない種が多く、それらの保全状況を評価できていません。大学のそばにある駿河湾は外洋性から深海性まで、様々なサメ類が生息しているため、これらサメ類の生態を明らかにするための研究を行っています。

我々人類がより良い生活をするために、様々な化学物質を作り利用しています。これら化学物質は、より安定性を求めて作られており、一度環境に放出されるとなかなか分解されない物質が多く含まれています。これら化学物質のうち、微量でも毒性を持つ物質があることが知られ、一度体内に入ると分解されず、脂質などに蓄積してしまい、生体内で濃縮されることが知られています。環境に放出された化学物質は、大気や水の循環で終局的に海洋に集積するといわれています。海洋生物は食物連鎖を通してこれらを順次濃縮していき、高次捕食者であるサメ類は高濃度で汚染物質を蓄積していまいます。駿河湾はその周辺で人の活動が活発で、人間活動のすぐ近くに深海が広がっている、世界的にも珍しい環境にあります。深海にまで広がっている汚染物質について、サメ類の蓄積特性や影響を明らかにするための研究を行っています。

深海には様々な生き物たちが生息し、駿河湾ではそれらを対象とした深海底曳網漁業が営まれています。その漁獲物にはサメ類も含め、我々人類が水産物として利用せず投棄されている生物がいます。投棄されている生物の中には数や大きさがそろわないため未利用な種がおり、今後資源としての利用が期待できるものもいます。安定して利用するためには、深海に生息する生物種の季節変動や水平・垂直分布などを明らかにする必要があり、さらにどの程度の種が利用され、どの程度投棄されているか明らかにする必要があります。我々が無駄なく持続的に利用できるよう、深海生物群集の群集構造を明らかにし、群集内での食う食われるなどの種間関係についての研究を行っています。未利用資源の利用価値を見出すことで、地域の活性化にもつながることが期待できます。

スポーツは人を健康にし、生活を豊かにすると言われます。また、人と人を繋ぎ、地域社会の連帯感を向上させたり、経済効果を生み出すなど、社会的にも様々な価値があるとされます。それらを実現するためには、「スポーツを経営する」という営みが重要です。
近年、地方自治体と関係組織等がネットワークを形成しながら、スポーツの普及振興・環境づくりを進めています。スポーツの諸価値を最大化し、スポーツを活用した町づくりを成功させるためには、地域特性に応じたスポーツ経営の仕組みが重要であると考え、地方自治体が策定するスポーツ基本計画を研究しています。その他、競技力向上や各種目の普及策、スポーツ施設の経営、スポーツイベントなどに関する調査・研究をしています。

日本を訪れる観光客、異なる文化や自然を体験するために日本の外へ出ていく日本人。また、外国にルーツを持つ住民の割合が増え続け、多文化共生社会へと変化しつつある日本。異なる文化と文化のコミュニケーションに欠かせないものが、言葉です。身振り手振りを介したコミュニケーションも意思疎通にはもちろん役に立ちますが、お互いに使い、理解できる共通の言葉があることで、交流にどれだけの幅と深みが加わるか、はかり知れません。当ゼミでは、英語力のアップを図りながら、異文化コミュニケーションにおけるさまざまな事象について「読み」、「聞き」、「考え」、「ディスカッション」して、異文化理解・多文化共生の観点から、自分が「もっと知りたい」テーマを探し、卒業研究に取り組んでいきます。

「文化」には、言語・音楽・料理など目に見えるものと時間の感覚・空間の感覚・コミュニケーションスタイル・意思決定方式など目に見えない文化があり、非常に多くの要素を含んでいます。それらすべてが一致することはめったにありませんから、自分の周りは、家族や親しい友人を含めてほぼすべてが異文化だと言えます。つまり、私たちは、日本において、日常生活の中で、外国文化を有する人と接することがなかったとしても、広義には異文化の中で生活していると言えるのです。その中で、トラブルのない円滑なコミュニケーションをとるのは容易ではなく、うまくいくほうが奇跡的なことかもしれません。しかし、自分を構成している文化的な要素を理解し、自分の周りの異文化（つまり、自分の周りの人）がどのような文化を有しているのか知ろうとするプロセスは私たちの視野を広げ、生活を豊かで興味深いものにしてくれます。

人工知能(AI)は、新しい学習手法の提案(ディープラーニング)、ビッグデータの利用、コンピュータの性能向上などの理由から、ネットワークの大規模化が可能となったことで、これまでできなかったような難しい問題にも対応できるようになっています。

これらとは別の考えとして、インターネット上にはすでに多くのノウハウが保存され、また各種専門家もネットワークで接続されていると考えると、インターネットそのものが知の集合体であり、AIであるともいえます。人間同士の会話で、たとえば「パソコンは何を買ったらいい?　レポートやプログラムが書けて、あまり重くなくて画面が大きいのがほしい」と聞かれたら、「あまり」「大きい」などのあいまいな情報を人は理解し、知識があれば提案できます。
あいまい情報を数値化する手法としてファジィ理論があり、人とコンピュータとの言語によるインターフェースとして利用することで、AIの普及段階での活用が期待されます。私の研究室では、“人にやさしいAI”の開発を目指し、人間同士のやりとりのように、目的の情報にたどり着くファジィ検索システムの開発を行っています。

今後のAIについて考えると、たとえばgoogleは、AI用のきれいなデータ分類やネットワークの構成作業にもAIを導入し、データサイエンティストが数カ月かけて処理していた作業を1日にできる技術を開発済みです。大きなブレークスルーがなくても、また、いったん注目度が下がっても、さまざまな分野での自動化・効率化の主力として普及していくと予想されます。

日常生活では業務のマニュアル化が進んでおり、その分野は将来AIに切り替えられる可能性があります。人の創作物の中に、本当にゼロから作ったものがあるのか。先人の作品から学び、何らかの影響があることを考えると案外独自性は少ないのかもしれません。

現在、世界規模で多くの野生動植物が絶滅の危機にあり、１日に１００種以上の生物が絶滅しているといわれています。農学部 農学科では、地球環境や湿地の生物を守る上で欠かせない「ミズゴケ」の人工栽培に取り組んでいます。ミズゴケは、自重の20倍もの水を直接外から体内に吸水できるため、雨があまり降らない地域でも水が確保され、砂漠化の進行を抑えます。日本ではランなどの園芸資材として主にカナダから輸入されていましたが、乱獲が横行し、現在はカナダでも絶滅が危惧され輸出が禁止になっています。私たちの研究室では、ミズゴケの栽培法の確立をめざして、国内企業と産学連携による共同研究に取り組み、今から１０年ほど前に初めて安定的な人工栽培・増殖技術の開発に成功しました。ミズゴケは希少野生植物のベッド、ゆりかご的存在で、ミズゴケの乱獲による湿原の消失は即、希少野生植物の絶滅につながりかねません。休耕田などでミズゴケの栽培が進めば、農家の収入増にもつながり、地下水涵養の促進、水質の浄化や地球温暖化対策にも効果があると思います。ミズゴケの研究は動植物を含めた湿地全体の機能の回復と活用にもつながるため、これからも研究を進めていきます。

私たちの研究室では、人と野生植物との共存を図るための環境に配慮した新しい農業・生活スタイルに関する研究や、絶滅の危機に瀕する植物の保全に関する研究を行っています。主な研究内容は、作物の原種や絶滅の危機に瀕する野生植物を対象に、フィールドでの環境調査から遺伝子レベルでの特性評価と環境保全に関して研究を進めています。特に力を入れているのが、「地球環境の改善や薬効機能をもつ野生植物の探索と人工栽培・増殖研究」、「希少なランや食虫植物の保全と進化に関する研究」、「機能性成分を有するウリ科植物の新品種育成のための遺伝子研究』です。これらテーマは全て植物を通じて地球環境の改善や健康に役に立つ研究です。生物多様性の保全といった大きなテーマを様々な角度から研究していますので、実に多くの研究テーマが存在しています。ですので、卒業研究では、１人１人の研究はちがっていますが、みんながどこかでつながった研究をしています。時には、協力して集約することで、多くの研究者が「不可能」としていた植物の人工増殖を「可能」にするような、そんな大きな成果につながることもあります。研究者と共同で、すでに絶滅したとされていた野生植物を見つけた学生もいます。学生がチームを組みつつも個別に役割を持ち、その成果が地球環境や社会の貢献につながっていることが実感できる研究分野だと思います。研究の魅力は、やはり植物の未知なる可能性を探求できることでしょう。その先にある、農業の活性化や地球温暖化の抑止、生物多様性の存続を見据えています。例えば、地球環境を大きく向上させることが期待できる植物の研究では、これまで非常に難しかった栽培・増殖を成功させました。これにより、山間部だけでなく都市部でも安定した栽培・増殖が可能であることを立証しました。この研究の成果は、屋上緑化や壁面緑化は建物にかかる土壌の重量が問題になりがちですが、新たな栽培方法の開発によって軽量のため建物への負荷が少ない技術を提供することができました。そのため都市のヒートアイランド現象の緩和にも有効であると期待が高まり、国内外の研究者の来訪、企業との共同研究が進行しています。このような研究を通じて、最新の情報や国際的な人材交流ができるところも魅力です。キャンパスとしても環境の研究には大変恵まれており、こんなに動植物を体験的に学べる環境は、日本中を探しても他になかなかないでしょう。だからこそ、この恵まれた環境を活用し、そこで得た知識や人とのつながりを様々な場所で活かして欲しいと思います。

当研究室では、学生が自らの疑問に気付き自、ら問題解決に向けて取り組む環境づくりに力を入れています。卒業研究は約１年半かけて取り組む大学生活の集大成です。今までの経験を振り返って思い起こした「なぜ？」や、大学での学びの中で見つけた「なぜ？」の芽を研究テーマに繋げることが出来たら面白いと思いませんか？
当研究室では、「誰もが知っていること。しかし、その理由を誰も知らないこと。」このような素朴な疑問を見つける作業から卒業研究をスタートさせます。疑問を研究テーマへ昇華させていくなかで重視しているのがディスカッションです。「科学の場では学生も教員も垣根なく議論する」私が育った研究室の風土をそのままに、学生と教員が対等な立場で話し合い、互いにホワイトボードへ考えを書き出しながら、研究目的や実験デザインを共に創ってゆきます。学生間でのディスカッションやコミュニケーションも盛んなため、各々の個性を存分に活かせます。実際に、学生自身が疑問を持ち主体的に問題解決するプロセスを踏むことで、毎年多くの学生が飛躍的な成長を遂げています。
皆さんには、昔から不思議に思っていることはありますか？あなたの「なぜ？」を一緒に研究してみませんか。

ほ乳類の子は親によって育てられます。誰もが知っている当たり前のことですが、その重要性について研究しています。幼少期の親子関係が乱された動物を詳しく調べると、母親の子育ては栄養を与えるだけでなく、仔の心身の発達においても大切であることが分かってきました。例えば、仔が養育者から受けるケアの質や時間が極端に減少した場合、仔の行動やホルモンが変化します。さらに、その影響は一時的ではなく、成熟後も持続します。私たちの身の回りにはペット, 産業動物, 動物園動物など、多くの動物が暮らしていますよね。育つ環境の重要性を研究することで、異常行動の改善策や予防法の考案へと繋げます。これから生まれ育つ動物環境づくりへ役立て、人と動物が共存共栄する社会の創造を目指します。

この他にも、行動学的な側面から褐毛和種（あか牛）の気質を調査しています。熊本県阿蘇地方をドライブすると、のんびりと草をはむ「あか牛」と遭遇することがあります。広大な草地で放牧を主体とした褐毛和種の飼育方法は草原や生態系の維持にも役立っており、地域に根付いた循環型農業の一つです。正式には褐毛和種という和牛で、霜降りが少ない淡白な赤身肉が特徴的です。その他にも、病気に強い、暑さに強いなどの特性があると言われますが、特に、体の大きな動物を扱う上で気質は非常に重要です。褐毛和種は穏やかな気質であるとされていますが、その詳細や科学的根拠は不明です。私たちは、褐毛和種の対人反応やストレス環境下での行動特性を調べています。褐毛和種の特性解明を飼育管理法へと発展させ持続可能な農業の促進に貢献します。

人と同じように乳酸菌にも個性があります。本研究室では様々な食品から乳酸菌を単離・同定し、それらの機能性を研究しています。例えば、乳酸菌が持つ小さなRNA（small RNA）が免疫に及ぼす影響を調べたり、炎症を抑える乳酸菌を探索したり、菌体表層にあるタンパク質や菌体外多糖の多機能性を解析したりしています。また、それらの乳酸菌を使って野菜や果物、植物性ミルクなどを発酵させて、発酵により新たに生み出される機能性物質の探索を行っています。このように発酵食品や乳酸菌の機能性を解析し、新たな機能性発酵食品の創出を目指して研究を行っています。

チーズは乳酸菌を使って作られますが、カマンベールチーズや青カビチーズのようにカビや酵母も一緒に発酵に関わっているものもあります。ヨーグルトのように乳酸菌同士の共生関係はよく知られていますが、乳酸菌と白カビなど異種間の共生関係についてはまだ良くわかっていません。本研究室ではチーズに含まれる乳酸菌と白カビ・酵母との共生関係について研究しています。驚くべきことにそれぞれを単独で培養したときと比べて、2つを混ぜて培養したときは、白カビ・酵母は生育が良くなり、乳酸菌は死ににくくなります。何故このようなことが起こるのか、そのメカニズムを研究しています。

今、乳酸菌は様々な商品に活用されていますが、「乳酸菌を商品に使いたいけど、どのようにすれば良いか分からない」という声をよく聞きます。本研究室では、1,000株以上の菌を保有しており、機能性を明らかにした乳酸菌を用いて、農家とコラボレーションして発酵トマトソースを作ったり、企業と共同で発酵カシスパウダーや後発酵茶などを開発したりしています。このように大学での研究成果を地域社会に還元するために、大学発のベンチャー企業を立ち上げ、その取り組みを加速させています。研究成果が実際に産業に活かされることで学生にとってもやりがいと学びに繋がっています。

東海大学農学部のホームページ
https://www.u-tokai.ac.jp/ud-agriculture/
食生命科学科のホームページ
http://www2.kuma.u-tokai.ac.jp/bioscience/
食品バイオ化学研究室のホームページ
http://www2.kuma.u-tokai.ac.jp/~kinolab/

地域創造学科では、スポーツやデザインの力で地域・社会コミュニティの課題解決へと結びつけ、リーダーとして地域貢献できる人材の育成を目指しています。3年次になると、学科所属の教員から、専門性に沿った少人数ゼミナールがスタートします。地域づくり、健康スポーツ、デザイン等から選んだテーマに沿って情報を収集し、実験や調査、成果物の作成を行い、卒業研究へむけて学びの集大成を形にします。健康科学・運動生理学について学ぶ塚本研究室では、子どもの体力・運動能力及び生活習慣、自律神経系活動との関連について検討しています。子どもたちを取り巻く生活環境の変化を背景にして、心と体の両面に関わる様々な健康課題が生じており、体調不良や疲労感などの不定愁訴、肥満・痩身傾向児の出現率が増加しています。このようなことから、運動・栄養・睡眠状況、身体活動量、自律神経系活動等の実態調査を行うことで生体情報を数値化し、学校教育を通じた運動習慣・生活習慣の見直しについて検討しています。学生たちは、近隣小学校の体力運動能力テストの補助、地区センターでのコーディネーショントレーニング塾を企画・運営等、座学を実践へと結びつけています。

世界が抱える諸問題を考える上で、アメリカの影響を無視することはできません。研究室では、アメリカ文化に関する書籍や資料（ビデオ教材など）をはじめ、YouTubeやTED Talksなどを教材として用い、自然災害や環境問題、人種差別から、アメリカを中心とする音楽や文学、映画まで幅広い分野におけるアメリカの役割・影響について英語力を鍛えながら学びます。その中で知り得た情報を仲間と共有・意見交換を行うことで、異なる視点や考え方について学びます。また、学生は各自で調べたことや感じたことなどをまとめたポートフォリオを作成し、そこから卒業研究のテーマを決めています。卒業論文の作成・発表では、英語によるパワーポイントの作成と、効果的なプレゼンテーションスキルの向上、研究成果を英語で発表する能力を養うことで、学科で目指す「国境なき社会人」の育成を目指しています。

地球上には様々な生物が暮らしています。生物たちは、長い歴史をかけて、姿や形を変えていったり、生息環境に合わせた特徴を獲得する、あるいは新たな場所へ生息域を広げていく、といった進化により多様化していきました。一方で、近年は人間の活動によって、生息環境が失われるなど、マイナスの影響を受けているものも多く、個体数が減少し、絶滅が危惧されているものも増えています。
当研究室では、遺伝的変異や生息状況、行動パタン、外来種問題など様々な面から、爬虫類や両生類のことを調べています。これらの研究によって、爬虫両生類に関する進化の歴史を明らかにしていきます。また、生物だけでなく、彼らが暮らす環境全体を含んだ包括的な自然環境保全にも貢献したいと考えています。

海洋食物連鎖の出発点は植物プランクトンです。この生物は光合成を行い、海洋生物のほぼ全てを支えるほどの膨大な有機物を日々生産していますが、目に見えないくらい小さな生物であるため、我々が普段認識することはありません。
植物プランクトンが生産する代表的な物質のひとつに糖類があります。特に細胞外に排出される糖類は粘性が高いため、海洋では粒子同士をくっつける接着剤のような働きをしています。巨大化した粒子は沈降速度が増加するため、海洋表面付近の糖類濃度は表層から深層への有機物輸送効率に強く影響します。一方、糖類正味の密度は海水よりも軽いため、植物プランクトンが大増殖した海域では海洋表面に糖類の膜が形成されることが考えられています。海洋表面への物質蓄積は海洋ー大気間の二酸化炭素交換速度を低下させるため、地球温暖化の進行速度にも影響を及ぼすことが懸念されています。しかしながら、植物プランクトンがどのような条件下で糖類をどれくらい生産するかは未だ殆ど理解されていません。そこで、野坂研究室では海洋調査と、調査海域で優占した植物プランクトンの培養実験を行うことで海洋での糖類循環や植物プランクトンの糖類生産メカニズムを解明することを目標に研究を行っています。

現代社会においてプラスチックは必要不可欠なものとなっています。例えば、私の身につけている服や不織布マスクもプラスチック繊維で出来ていますし、メガネのレンズもプラスチック製です。もはやプラスチック製品無しでは生活が不自由になるほどです。
原材料が比較的安く、加工しやすいプラスチック製品ですが、自然界では大変分解されにくいことが知られています。海洋ではプラスチックゴミが年々増加しており、最近ではニュースなどでも大きく取り上げられるようになりました。海洋のプラスチックゴミは波などの影響で破砕され、サイズがどんどん小さくなっていきます。鳥や魚類などがプラスチックを誤食することは以前から話題になっていましたが、最近ではプラスチックのサイズが更に小さくなり、海洋生態系の底辺付近に位置する動物プランクトンにもその影響が及んでいることが分かってきました。
マイクロプラスチックは栄養価の無い物質ですので、動物プランクトンが誤食することで成長阻害を受ける恐れがあります。また、プラスチックに含まれる添加物が生体に悪影響を与えることも知られていますが、知見が限られているのが現状です。そこで、野坂研究室では動物プランクトンの飼育実験を行い、マイクロプラスチック捕食効率や速度などを明らかにしています。

微細藻類は高栄養価の生物で、最近ではサプリメントとしても流通しています。また、油分を多く含む微細藻類は次世代エネルギーであるバイオディーゼル燃料としても期待されています。
野坂研究室では、北海道寿都町の沿岸水から増殖能の高く、有用な成分を含む微細藻類を単離することに成功しました。この微細藻類は上記のサプリメントやバイオディーゼル燃料の原料には不向きですが、餌料の原料としては有用であると考えています。微細藻類は目に見えないため、我々の身近にも有用な微細藻類が潜んでいる可能性があります。野坂研究室では今後も人類にとって有用な微細藻類の調査を継続していきます。

海外に行くときに最初に遭遇することの一つに、実際には見ることはできないが、それが何であり、どのように機能するかを理解していないと、訪問者とその旅の目的に少なからず影響を与える可能性のあるものがある。それはいわゆる「文化」である。
ここ数年、日本とアラブ諸国の政治や経済、留学、観光などの諸分野の交流が深まっていくにつれ、双方の接触する機会が増えている。日本とアラブ間の地理的、文化的、経済的相互関係を考えると、このような国民レベルの相互交流は今後ますます広がり、深まっていくことだろう。ただ、言語と文化の壁により、互いの社会の情報を完全に理解できず受け入れられないことがある。イスラムやアラブ、中東地域といえば、馴染みのないイメージを思い浮かべる人が少なくないだろう。あまり日本で研究をする人が少なく、多くの方に、変わったことを研究していると思われている。つまり、アラブやイスラム教は、日本の伝統的な文化と、とても離れた所にある文化である。
文化の側からの言語に対するアプローチ、または、言語側からの文化に対するアプローチという分析方法には、マクロのアプローチとミクロのアプローチの二つがあると思われる。マクロとはいわば国際社会の観点から一つあるいは二つの文化にとどまらず、他文化社会の接触と融合というように、社会科学的な観点からの問題のアプローチである。ミクロとは個別の文化を、時には他言語や他文化と対照させながらさまざまな要素を手がかりに徹底的に追及していく、いわば人文科学的アプローチである。前者を私たちは「言語文化国際関係論研究」で、後者を「地域言語文化研究」で扱っている。本ゼミではこの二つの研究分野を中心に言語と文化というプリズムを通してアラブ中東地域・イスラム世界と日本の社会システムについて考える。
現在の日本はイスラム教徒やアラブ人を含む多様な文化や外国籍の異なる人々が住む多文化共生社会になりつつある。同時に、人々はさまざまな背景の異なった文化と行動パターンに遭遇することは日常の一風景となりつつあり、異文化コミュニケーションは、ごく限られた人たちだけに起こる珍しい出来事ではなくなっている。日本全体のこうした社会変化や、偏見や誤解、ステレオタイプといった障壁によって対立が蔓延する国際社会を前に、注目を集めているのが「見えない文化、深層文化」とも訳される「Hidden Culture」である。ここで言う「深層文化」とは、現代美術やアート、食べ物、オペラなどではない。そもそも「文化」という言葉自体は中立的な用語であり、良いものでも悪いものでもない。一般的に「文化」には、「見える部分」と「見えない部分」の両面があり、いわゆる「表層文化」と「深層文化」の2種類があるとされている。深層文化とは、人々が社会を秩序づけるために使用してきた集合的かつ歴史的思考や行動パターン、価値観、社会的取り決め、マナー、発想、および生き方等を指すものである。
このゼミを貫く基本テーマは、日本人とアラブ人が互いに感じる違和感に焦点を合わせながら、小さな異文化コミュニケーションによって生じるさまざまな誤解やすれ違いなどの文化摩擦を多様な角度から掘り下げ、一緒に考えてもらうことにある。そして、国際化や情報化に翻弄される現代社会の中で、日本とアラブの見える文化と見えない文化や価値観を見つめながら、「相互理解」ではなく、「相互知解」を目指していく。

ゼミで学習する分野・内容・進行方法
分野：1.言語文化国際関係論研究、2.地域言語文化研究：「カルチュラルスタディーズと言語行動研究、中東アラブ基礎研究・社会言語文化研究・翻訳通訳応用研究、言語・異文化コミュニケーションなど」

専門ゼミナールでは、設定したテーマに基づき、個人または共同で調査・研究を実践することを通じて、自ら考え問題を発見し、解決する能力を養う。
世界のボーダーを超えた世界人口の4分の一であるイスラム世界やアラブ、中東、または「アラブと日本の文化社会の比較事例についても関心・比較する視点をもってより深く理解したいと考える学生や、通訳や翻訳という職業とそのスキル、ノウハウなどを身につけたい学生を大歓迎。
アルモーメンゼミが求める人物像や育てたい人材：「よく学び、よく笑い、よく遊ぶ」。斬新な発想を持ち、粘り強く何事に対しても積極的で明るく前向きに取り組む姿勢を持ち、“自律”できる人。
本ゼミではゼミ生の多様性と個性を尊重し、優れた価値を提供できるグローバルな人材の育成を目指していく。「グローバルアラブ・イスラームスタディーズ」と「日本・アラブ言語文化思想の研究」と題して、国際関係論に於ける社会言語文化（文化外交や報道と翻訳通訳の関係、言語コミュニケーションなど）の問題を中心に、言語と文化というプリズムを通してアラブ中東地域・イスラム世界と日本の社会システムについて考える。

日本には短期的な利益の追求、拡大成長の経営ではなく長期的に地域との密接な関係を構築し、地域の恩恵を受けると同時に地域に貢献するというユニークな仕組みがあります。「持続型経営」の精神を大切にする「三方よし」を価値基準として長く存続するファミリービジネスについて研究しています。

具体的には、事業を次々に拡大していく海外の企業「拡大成長型経営」に対し、日本は独自の「持続型経営」すなわち、「身の丈」経営と呼ばれる身の丈にあった経営を心がける点も長く地域と共に繁栄し続けるポイントの一つです。海外の多くの人にとって、日本イコールテクノロジーというイメージはあっても、温故知新、すなわち、伝統と革新の融合、そして地域に根ざし、独自性の高い存続するための「経営システム」があることはまだまだ知られていません。研究室では今後も、こうした日本の経営哲学について学び、「持続型経営」の解明について研究していきます。

本研究室では知識の集積を目指すのではなく、経営学の基本的な知識・理論を把握しつつ、現場の実務家からも学び、「学術界と実務界」の整合性を取るために学生には「実践知」を身につけるように指導しています。そのためには「現場のファミリービジネスの実態を知ること」をテーマに「PBL（プロジェクト・ベース・ラーニング）」を実施しています。PBLを実施することにより、受動的に態度で授業を受ける姿勢を回避され、学生の皆さんに能動的に学び、企画する力、行動する力、コミュニケーション能力などの基本的な社会人スキルの開発につながると考えます。

これまでの理論と事例について議論しながら、グループワークを実施し、受講者の学生を６つのプロジェクト・チームに分け、ファミリービジネスに関わる課題などを自らの視点で見つけ、計６社との代表取締役・社長などマネジメント層にインタビューを実施し、リサーチ設計・データ分析・報告書づくり・成果発表などを実施しました。下記、2021年度の主な取材先となります。
プロジェクト１ 新江ノ島水族館(神奈川県)および株式会社マザー牧場 （千葉）
プロジェクト２ 湯もち本舗 ちもと （神奈川県）
プロジェクト３ 岩本楼本館（神奈川県）
プロジェクト４ 黄金湯（東京都）
プロジェクト５ 株式会社崎陽軒（神奈川県）
プロジェクト６ 桜なべ中江（東京都）

さらに、本研究室では上記の学術的な活動に加えて、３年次生を４つのチームに分けて研究室の諸活動・プロジェクトに取り込んでいます。①知識創造チーム　②メディア・チーム　③デザイン・チーム　④企画・実行チームとして活動しています。このような活動に携わるのは重要な理由があります。言ってみれば、経営学は「人間学」です。すなわち、人とどのように関わり、どのようなコミュニケーションをとり、どのタイミングでチームワークを図るかによって、達成したい目標に辿り着くかがかかっています。経営学は、「生きた学問」であり、自ら実践的に学び、「行動」を起してはじめて本質的な理解につながる学問だと考えています。リーダーシップ論を教室の中で、学んでも効果が薄く、組織論の試験で高い点数が獲得しても、現場では通用しないことが多い。そのために、本研究室では学生のうちに経営学を体験して研究室の諸活動を支える役割を果たしています。これらのチームで学ぶ主なスキルは、リーダーシップ、チームワーク、コミュニケーション力、企画力、映像編集、SNSの運営方法、ポットキャスト企画・制作、広告づくりなど多岐にわたります。

本研究室では、起業家、プロデューサー、クリエイティブディレクター、アナウンサー、データアナリストなど多岐にわたる業種の実務家の方々と接する機会を提供したくさまざまな立場のゲスト・スピーカーを招き、学生とリアルタイムでディスカッションの場を提供しています。これらの時間は学生らの就活のヒントや将来の経路に多くの示唆を得て刺激を受けさせる狙いで、下記のようなテーマでゲストを迎えています。

■「ワインツーリズムと地域活性化」
■「日本の伝統を次世代につなぐ～個と社会のウェルビーイング実現のために」
■「広告づくりの最初の話」
■「フリーアナウンサーが語る放送局の魅力―お仕事と就活で大事な『３つのこと』―」（開催予定）
■「プロダクトづくりの最初の話―クリエイティブディレクターの視点から―」（開催予定）
■「デジタルトランスフォーメーションで変わる社会　―外資系企業からの視点―」（開催予定）

また、フィールドに出向く「フィールドワーク」の時間を設けております。例えば、2021年度には、東京都内で「株式会社和える(aeru)」という会社で、日本各地の豊かな文化や伝統に触れながら、考える力（哲学する力）を育むプログラム“aeru school”に参加し、伝統文化を体験するとともに伝統産業品に触れ、事業承継の重要性を身をもって考えることを目的としたものである。ワークショップ参加を通じて、「事業承継」という課題を理論のままで理解するのではなく、実際に商品に触れながら認識してもらった。

昨今の社会情勢が著しく変化しており、従来型の縦割り、深ぶり型の教育体制は、限界に達しつつあるように考えます。そうした限界を超えるために、「イノベーションの父」と呼ばれるシュンペーター氏が提唱した「新結合」という概念を元に、東海大学の多種多様な専門領域の特性を活かして経営学のみならず、他学部の副専攻を同時に利用して頂き、領域横断的な知識を身につけつつ、地域と連携を取りながら、研究成果を実社会に活かすことを目指します。