産業・企業を支える研究と活動

受け継がれた食文化を、新たな形で未来に残していく

■学問大分類:農学・水産学・生物
■学問小分類:水産学
■提供:東海大学 海洋学部×西伊豆町

失われつつある伝統食「潮カツオ」

静岡県伊豆半島にある西伊豆地域。伝統的な食材として親しまれているものに、「潮カツオ」があります。カツオの産地であった同地域で、長期保存を目的にカツオ一匹を丸ごと塩漬けにしたもの。塩辛い風味が特徴で、常温で1か月以上も保つことができます。別名「正月魚(しょうがつうお)」とも呼ばれて、古くから縁起物として地元で定着してきました。西伊豆町のみで生産され、伝統食として何百年にもわたり受け継がれてきたこの食文化が、時代の変化とともに失われつつあります。その理由のひとつが、鮮魚を低温管理されたまま輸送するコールドチェーンの発達です。昔と違って現在は、海から遠く離れた場所でも、簡単に新鮮な魚を手にすることができるようになりました。カツオを塩漬けし長期保存する必要性が薄れ、さらに製造の後継者不足も課題となって、時代から姿を消そうとしていました。

目指すは、栄養学の知見を活かした新商品

そんな「潮カツオ」に注目したのが、東海大学海洋学部水産学科食品栄養学研究室です。「潮カツオ」は、西伊豆地域だけの食文化であり、静岡県内でも、その存在を知らない人が珍しくありません。そこで同研究室では、観光客をはじめとした多くの人に「潮カツオ」という食文化に触れ、さらに発展・進化させていくことを目標に研究をはじめました。学生たちが最初に目をつけたのは、「潮カツオ」を栄養学的な知見から捉え、健康に役立てること。そこで、「潮カツオ」を使った他にはない独自の商品開発を研究の目的としました。西伊豆を訪れる観光客をターゲットに、データを収集して商品コンセプトを策定。試作を重ねて、基本的な処方を決定していきました。また、製造先や販売先の確保も重要です。西伊豆町民の方々をはじめ、静岡県の協力も得ながら、製造先・販売先を見つけ、商品化と販売に至りました。

学生の手から、食を育み支える商品が生まれる

2021年9月に商品化したのが『潮カツオDE塩分チャージ』。春から夏に多い50代以上の観光客をターゲットに、熱中症予防効果が期待できる潮カツオ粉末を配合した飴を開発しました。当初は西伊豆町内の飴屋さんなど限られた店舗のみの販売でしたが、現在では静岡県内の物販店や千葉県の国立歴史博物館にも販路が広がりつつあります。また、商品バリエーションの拡充として、潮カツオのおにぎりの販売や潮カツオのアイスクリームの開発が進行中。食品栄養学研究室では、「潮カツオ」の新商品開発だけでなく、未利用資源から「人々の健康や幸せに寄与する食品」を研究・開発しています。地元食品会社や自治体とのコラボを通して、学生たちは実社会で役立つ豊富な経験を手にしてきました。日本の食を育て支える研究に取り組む学生たち。その手からどんな食品が生まれていくのか、これからが非常に楽しみな研究です。

エネルギーと世界

調査研修船『望星丸』で、海洋資源開発に迫る

■学問大分類:地球・環境・エネルギー
■学問小分類:環境学
■提供:東海大学 海洋学部

海洋には、数多くの資源・エネルギーが眠っている

東海大学が所有する『望星丸』は、約2000トン規模を誇る大型調査研修船です。学生の海洋実習や、海洋資源の観測などを目的に建造し、遠く離れた外洋でのフィールドワークを可能としています。海洋学部は、資源開発を海洋に求めることから出発しました。海洋の鉱物・エネルギー資源には、実に多くの種類があります。「海底熱水鉱床」「コバルトクラスト」「レアアース泥」「ガスハイドレート」などが代表例。こうした資源の調査を効率的に行い、環境に配慮した形へと開発していくことが、海洋学部の研究のひとつです。実際に、海洋に出てフィールドワークを通して観察することを重視していることが本学部の特徴のひとつ。海域から試料採取・取得して、研究室で分析・解析していきます。また、国内外の研究機関との連携も多く、他の大学や学会との情報交換も欠かせません。こうしたさまざまな活動を通じた研究が、海に眠る資源の開発へとつながっていきます。

科学の目、工学の技術を駆使し、海の謎を解き明かす

海洋資源に関する開発には、多種多様な専門分野の知見が求められます。資源濃集過程のしくみ・原理を知るには、地質学・地球科学分野の視点が欠かせません。一方、探査や開発では工学的な知見が必要です。物理的な調査を行うには、電気・磁気・音響・重力などにも精通していなければなりません。また、船舶の構造に関する知識はもちろん、無人ロボットの設計・製作についても学びます。特に観測機器においては、研究目的に応じて研究者自らが製作するオリジナル品が多く、調査現場の状況に合わせた調整作業なども日常的に行っています。自然を相手にするフィールドワークには、学生個々の工夫や改善が求められる場面が多く、自分の目で自然を観察する力が養われていくと言えるでしょう。関連する分野が多く、学習範囲が広くなる大変さがありますが、それだけ海洋には大きな可能性が秘められているということです。

資源とエネルギーの未来を切り拓く

『望星丸』でのフィールドワークでは、1人ひとりが船舶作業(海洋観測・試料採取・データ解析)におけるそれぞれの役割を担い、多くの学生と共に行動することになります。集団の中における役割に責任を持って取り組むことで、社会性が養われる点も大きな利点です。海洋でのフィールドワークを共に経験した仲間は、いわば同じ釜の飯を食う関係。同じ志を持つ学友は、きっとその後の人生においても大切な存在となります。また、国内外の理学・工学・社会科学分野の専門家の方々と情報交換を図る機会も多く、それぞれの分野の専門知識と技術が同時に身についていきます。誰とでも話ができる高い人間力が、実社会でも通用する人材へと自らを高めてくれるでしょう。海洋資源に関する成因・探査・開発から、地域の環境アセスメントまで、幅広いテーマに取り組み、資源とエネルギーの未来を切り拓いていく研究が経験できます。

これからの“働き方”

インターネットはテレビや新聞に劣る? さらなる訴求力向上の可能性について

■学問大分類:社会学・マスコミ・観光
■学問小分類:メディア学
■提供:東海大学 文理融合学部

テレビ・新聞にあって、インターネットにないもの

私たちを取り巻くメディアは、テレビ・新聞・書籍から、インターネットに変わりつつあります。これは単にメディアがアナログからデジタルに移行したというだけではありません。双方はメディアとして全く異なる利点・特徴を持ち、担う役割や機能が大きく違うため、私たちの暮らしや社会全体を変化させています。例えば、インターネットのメリットは、見る側が知りたい情報を自由に選べる一方で、誰もが簡単に情報を発信できる点です。しかもテレビチャンネルのような枠や紙面などスペースの制限がありません。インターネットメディアには、テレビ・新聞を超える大きな可能性があり、用途の拡大が期待できます。ですがその一方で、インターネット上のコンテンツの品質が、テレビや新聞と比べてやや弱い部分があるということ。この問題を解決するためには、コンテンツ制作に関わるさまざまな技能が欠かせません。

高品質なコンテンツは、文理の融合から生まれる

Webサイトの構築には「プログラミング」など情報処理の知識・技術が必要です。一方、コンテンツの制作では「デザイン」や視聴者(ユーザー)を理解する「マーケティング」「心理学」に精通していることが欠かせません。従来は、プログラミングなどの理系知識と、デザインや心理学などの文系知識はまったく異なる学問分野として扱われ、これらを一度に学ぶ機会はありませんでした。ですが、上記でも述べたように、インターネットのメディアとしてのクオリティを高めていくには、異なる2つの分野の専門知識が必要です。文理の枠にとらわれることなく、文理が融合した専門知識と能力、スキルを持つ人材を育成するのが、文理融合学部での学びと言えるでしょう。プログラミングだけでなく、デザイン、心理、広報、マーケティングなど文系・理系双方の知識と技術を掛け合わせ、今まで以上のコンテンツ開発を目指していきます。

インターネットコンテンツに限界はない

東海大学 文理融合学部では、多種多様なテーマに基づく研究を行っていますが、地域社会学科の八尋剛規教授が取り組むのは、教育用コンテンツの研究。コロナ禍において遠隔授業のニーズが高まっていますが、単なる映像配信に留まらない新たな機能の研究・開発に挑んでいます。授業内容(動画の進行)に合わせて、関連コンテンツや教材情報を効果的に表示する機能がその一例。インターネットの特性を活かしたインタラクティブなコミュケーションを可能にする機能として、注目されています。インターネットを利用したコンテンツの可能性は、まだまだ限界が見えません。その用途は、業種や業界を問わず社会に広まっていくのは確実です。それだけに、新しいものに興味を示し、貪欲に知識や技術を習得する人材が必要とされていきます。文系理系の枠を超えた力が、これからのメディアを作り上げていくと言えるでしょう。

産業・企業を支える研究と活動

心と体を癒す「ヘルスツーリズム」で、地域の魅力を発信

■学問大分類:社会学・マスコミ・観光
■学問小分類:観光学
■提供:東海大学 人文学部×豊後高田市、NPO長崎鼻BKネット、(株)油花、(一社)SPALOHAS俱楽部、(株)FoundingBase

観光資源のポテンシャルを引き出すプロジェクト

日本には、優れた観光資源を持ちながらも、その魅力を産業に活かせていない地域が少なくありません。大分県豊後高田市の長崎鼻エリアも、そのひとつでした。周囲を海に囲まれ、海水浴場やキャンプ場に適したリアス式海岸や遠浅の砂浜、菜の花畑があり、豊かな自然環境が大きな魅力となっている地域です。温泉施設もあり観光資源に恵まれていましたが、いずれも規模が小さく、観光客のほとんどが日帰り客という状況でした。こうした観光資源の整備とPRの強化を図り、宿泊客を増やしたり、観光滞在時間を長くしたりすることが、産業化に向けた課題となっていました。そんな同市と、東海大学が共同で立ち上げたのが「清潔・安全・快適な”パーフェクト・ビーチ”プロジェクト」です。温泉や自然環境などのヘルスツーリズムの要素を取り入れたこのプロジェクトは、地域・大学・企業が手を組み、魅力的な地域づくりと観光振興を目的として、2016年にスタートしました。

観光がもたらす地域・人・産業への深い影響

毎年、3年生の科目「フィールドワーク演習」では、学生たちが実際に現地を訪れ、観光資源の現状とポテンシャルを抽出。課題を明確にして、地域づくりの方向性と訴求ポイントを総勢数十名で検討しました。その中でも数名の学生は、1か月ほどをかけて現地に滞在し、ビーチスタッフとして働きながら卒業研究に取り組みました。”パーフェクト・ビーチ”プロジェクトでは、海岸部を主体とした事業と位置づけ、海辺の環境整備を重視。リゾートキャンプ場や海水浴場の整備を実施しました。また、「花とアート」をテーマにした癒しの空間整備や、年間を通して集客が見込める魅力ある滞在型コンテンツ・メニューの確立に貢献しました。都市圏からの女性層や若者を中心とした観光客をターゲットに、観光消費額の増加を図ることが目的です。また同時に、地元産業の活性化、雇用の拡大、定住促進も実現し、持続的な地域活性化につなげることを目指していきました。

体験こそが、成長の糧となる

地元自治体、地域おこし協力隊、NPOなど現地スタッフと学生による交流の中から、さまざまな提案が生まれたこのプロジェクト。アイデアを活かした企画を社会実装することで、長崎鼻エリアは観光地として大きく発展し、コロナ禍においても過去最高の訪問者数を記録しました。また温泉施設では、温泉効能アンケート調査を実施し、「日帰り客は宿泊客よりも温泉効果を実感している」という知見を日本温泉地域学会で発表。5年間におよぶプロジェクトの実施は、2021年の国交省地域づくり表彰、恋人の聖地大賞、グッドデザイン賞のトリプル受賞につながりました。さらに、温泉地としての豊後高田市への注目も高まり、2022年の日本温泉科学会の開催地にも選ばれています。地域の魅力や多様性に触れ、課題の解決を図っていくことが、人文学部での学び。研究やゼミ活動を通して得る経験が、学生1人ひとりの成長の糧となる学習に取り組んでいます。

10年後のまちづくり

港町からベッドタウンへ。求められる新たなまちづくり

■学問大分類:社会学・マスコミ・観光
■学問小分類:地域社会
■提供:東海大学 人文学部

時代の変化と共に変わりゆく町の姿

静岡県には、「用宗(もちむね)」という地区があります。もともとこの地区は漁業や農業を主産業として発展した歴史を持ち、今も漁港内では多くの漁船が行き交っています。特に有名なのが、「用宗のしらす」。恵まれた漁場と独特の加工技術があり、「しらすの町」としても知られてきました。そんな特色を持つ同地区ですが、静岡市中心部への交通アクセスが良いことから、現在ではベッドタウンとしての色合いが濃くなりつつあります。若い世代の定住は歓迎すべきことである一方で、新たな町の課題が浮かび上がってきました。その一つが、世代が異なる町民同士の交流や地域行事への参加者の減少です。用宗には今もさまざまな住民組織がある他、祭りなどの地域行事がしっかりと受け継がれています。しかし、その担い手不足が深刻化していたのです。もともとの住民と都心部から流入してきた住民との関係性が希薄になる中、何か打つ手がないかと頭を悩ませていました。

用宗で起こっている問題は、社会が抱える問題

この課題を解決するため、町内会から相談が寄せられたのは、2014年のこと。新たな地区の祭りを創り、地域の賑わいを取り戻したいと、町内会の方々は考えていました。「地域の担い手不足」という課題は、用宗地区に限ったものではありません。日本のいろいろな地方では、若者世代の流出によって、地元産業の衰退や防災体制の脆弱化、地域文化の衰退といった問題が多く起こっています。その影響から若者世代の中には、世代が異なる人との交流や地域行事への参加経験がほとんどなく、社会性を身につける機会を失っている人が珍しくありません。この現在の社会が抱える課題に取り組むため、学生たちによる『用宗ゼミ』が立ち上がりました。研究活動の目的は、地域住民と協力した祭りの企画・運営、地区で開催されている朝市の実態調査などです。

地域の中で、1人ひとりが役割を持つことの大切さ

用宗地区に暮らす住民の方々と学生による協業の成果は、着実に表れ始めています。例えば、学生ならではの視点を通じた地域の魅力の再発見。学生たちが原動力となって、世代や性別を超えた地域内のつながりが生まれています。一方、学生にとっても、たいへん学びの多い研究となり、多くの成果を手にすることができました。用宗における調査は、学生の卒業研究のテーマとして、非常に価値のあるものです。また、公の場でも研究成果が高く評価されています。静岡県東部地域の大学等が集まる「富士山麓アカデミック&サイエンスフェア」で活動・研究成果を発表し、大きな反響を呼びました。これまでに培ってきた地域との関係性を基に活動記録をまとめ、さらなる提案に取り組んでいきたいと考える『用宗ゼミ』。現在はコロナ禍の影響を受けて、祭りの企画運営が休止となっていますが、情勢を見極めた上での再開にも大きな期待が寄せられています。

産業・企業を支える研究と活動

地域開発を通して、SDGsの基本理念を学ぶ

■学問大分類:国際・国際関係
■学問小分類:国際関係学
■提供:東海大学 国際文化学部×JICA

大きなポテンシャルを秘めた北海道開発

豊富な資源や広大な土地を持つ北海道。その発展が国全体に大きな影響を与える期待から、政府は「北海道」という特定地域の開発を目的とした「北海道総合開発計画」を策定しています。計画において実施するのが、北海道の強みである「食」と「観光」を戦略的な産業として育てていくこと。また、豊富な資源を活かしたブランディングの強化、北海道が持つさまざまなポテンシャルを最大限に活用して、『世界の北海道』の実現を目指しています。同計画では、「食」「農業」「観光」などにおける専門家が集まり、さまざまな視点から課題の解決や気運の醸成を図る取り組みが行われています。東海大学 国際文化学部の学部長である平木隆之教授は、国際協力機構(JICA)北海道センターが所管する政府開発援助事業「地域開発計画管理研修」のコースリーダーを務め、地域開発パターンの比較研究に取り組んでいます。

北海道を研究対象に、国際協力・交流活動を考える

同計画では、「食料・農業」「観光づくり」「地域づくり」など、他分野にわたる取り組みが現在も実施されています。観光分野の取り組みとして挙げられるのが、訪日客を対象とした北海道ドライブ観光の促進。民間の地図会社との協業によって、アプリ開発に取り組んでいます。また、食料・農業も重点分野の1つです。農業者が自由に経営展開できる環境の整備、農業に関わる業界全体の課題の解決を図っています。国際文化学部では、同研修を管轄する国際協力機構(JICA)北海道センターに、インターンシップ学生を派遣する他、ゼミや卒業研究のテーマとして地域開発を取り扱うなど、さまざまな形での研究を進めています。他にも、外務省対日理解促進プログラムへの参加などを通して、多くの学生たちが国際協力・交流活動に対する理解を深めています。

未来を担う「国境なき社会人」

今、SDGs(持続的開発目標)への注目が高まる中、平木教授のゼミでは、学生自身の出身地域について、SDGsに関連するテーマを扱うことを推奨しています。SDGsの基本理念は、世界を視野に入れるグローバリズムではなく、世界の人々すべてに人間として必要な生活を保障するユニバーサリズムに基づいているからです。研究に取り組んだ学生たちは、国際協力・交流の担い手の育成には、自身が暮らす国や地域に対する理解が、その出発点となることを学習しました。国際協力・交流は、語学力に長けた一部の人による活動ではありません。多くの人々が関わるユニバーサルなものであると理解すれば、活動に参加する学生が増えていくはずです。自分が暮らす国や地域への理解をきっかけに養われるのが、国・地域の違いを受け容れる寛容な力。そんな力を持つ「国境なき社会人」が、数多く生まれようとしています。

10年後のまちづくり

魚の多様性の解明が、漁業の未来につながっていく

■学問大分類:農学・水産学・生物
■学問小分類:生物学
■提供:東海大学 生物学部

魚類の「種(しゅ)」を解明することの大きな意味

全世界の漁業生産量のうち、天然の水産生物が占める割合は、50%以上です。また、養殖業では天然の水産生物を餌として利用しているため、漁業に与える影響は数字以上に大きなものとなっています。それだけに、持続可能な漁業の実現は、世界の食生活・食文化を支えていく上で非常に重要です。そのために欠かせないのが、天然の水産生物である魚たちの適切な管理と利用。海に住む魚たちが、どの時期に、どの場所で、どんな暮らしをしているのか、魚類の「生理」「生態」「行動的特徴」を解明する必要があります。さらに、人間の存在が魚類にどのような影響を与えているのかを解き明かすためにも、多様な魚類の「種(しゅ)」を正確にして、全世界共通の学名を与えなければなりません。こうした基礎研究こそが、分類学です。東海大学 生物学部の武藤准教授の研究室は、日本周辺を含む西太平洋の海に分布する魚類の分類学的研究に取り組んでいます。

魚類を分類する方法とは?

分類学的研究で重要なステップとなるのは、異なる種同士を何かしらの方法で識別すること。異なる種は、原則として互いに交配して遺伝子を交換できないため、遺伝子解析が主な手法となります。遺伝的な特徴で違いが確認できれば、それは別種であることの証明になるからです。例えば、サバ科のグルクマ属というグループは、西太平洋の熱帯・亜熱帯域において、非常に重要な天然の水産資源になっています。この属には、3つの異なる種が含まれるとされてきましたが、外部形態が酷似しているため、3種をまとめて1種と扱われることがあったり、別種で扱うことがあるなど、混乱が生じていました。武藤研究室は調査に取り組み、これらの3種は遺伝的特徴が異なる別種であることを確認しました。さらに、外部形態をあらためて詳しく調査し、明確な見極めポイントも見つけ、グルクマ属の3種を持続的に利用していくための基盤づくりに貢献した実績があります。

地道な基礎研究が、未来を大きく変えていく。

このように、多種多様な魚類を正しく理解し、その生態や自然環境、人間が与える影響を理解していくことが、持続的な漁業の在り方に大きく役立っていきます。もし、本来は別種である種を同一種として認識していたり、その逆のことが起こっていると、魚類の正しい管理や持続的な水産業の発展ができなくなってしまいます。そういった意味でも、分類学的研究は非常に重要な学問です。基礎研究は、目の前の研究がどのような形で社会に役立っていくか見えづらい側面もありますが、人類や国全体といった大きなレベルで考えると、持続可能な社会づくりに基礎研究は欠かせません。その一端を担う研究に取り組めることが、同研究室でのやりがいであると武藤准教授は言います。いつの時代も、未来を作るのは小さな一歩の積み重ね。分類学には、未来を大きく変える力があると言えるでしょう。

10年後のまちづくり

遺伝子で探る!地域性を活かした持続可能な動物生産

■学問大分類:農学・水産学・生物
■学問小分類:畜産学
■提供:東海大学 農学部

輸入穀物に依存する日本の畜産システム

現在日本の畜産では、ウシを育てるために濃厚飼料というエサが多く用いられています。タンパク質が豊富で、短期間での肥育が可能な飼料ですが、原料のほとんどを海外から輸入した穀物に頼っている点が弱点です。海外の情勢や気候変動の影響によって、原料が不足する可能性が大きく、日本の肉牛生産システムは脆弱であると言わざるを得ません。この課題を解決するヒントを握るのが、熊本県の特産品となっている「褐毛和種(あかげわしゅ)」という品種です。この品種の特徴は高い放牧適性にあります。「熊本の草を食み、熊本の土を耕す」と言われるほど、地域の物質循環への貢献度が高く、持続可能な畜産を実現する大きな可能性を秘めた品種であると考えられています。しかし、代表的な和牛品種の黒毛和種や海外にも多い肉用種と比べると、褐毛和種は遺伝的特性に不明点が多いのが現状です。その特性の解明に、東海大学が取り組んでいます。

褐毛和種がにぎる畜産の未来

農学部 動物科学科の松本大和准教授の研究室が取り組むのは、褐毛和種の生産数拡大につながる研究です。褐毛和種の育種改良を目的に、3つの課題について研究を進めています。(1)おいしさに関わる遺伝子の探索、(2)遺伝病発症因子の把握、(3)毛色決定機構の解明です。(1)のおいしさに関わる研究は、将来的な生産性の向上に大きく寄与します。一方の(2)と(3)の課題は、褐毛和種の安定的な生産に欠かせません。遺伝病の発症因子や異毛色を引き起こす原因が分かれば、これらの影響を未然に防ぐことができるからです。同研究室ではDNAレベルでの成果が表れはじめ、いくつかの研究結果は、褐毛和種だけではなく、世界中のウシ品種にも応用できることが示唆されています。日本の畜産業界だけでなく、世界のウシ生産への貢献につながるものとして、大きな期待が寄せられている研究です。

ラボでの研究が、世界の畜産システムを変えていく

突然変異が遺伝子の機能に対して具体的にどのような影響を与えるのかについて、今後同研究室では詳しく解明していく予定です。培養細胞やマウス等の動物実験を用いて、RNAやタンパク質を対象とした解析に取り組んでいきます。そのため、実験室でのラボワーク中心の研究である点が特徴です。「手を動かすことが好きで、継続して物事に取り組める人が、成果を挙げやすいように感じます」と学生を指導する松本准教授は言います。また、研究を通して、実験を着実に行うための計画性や調査能力を養うことが可能です。さらに、研究発表の場では、プレゼンテーション能力や論理性も磨かれると言えるでしょう。ひとつひとつの実験と向き合い、得られた結果に対する意味をしっかりと考えながら、学生たちは日々の研究に取り組んでいます。その努力が、日本の畜産、さらには世界の動物生産の未来を大きく変えていくかもしれません。

エネルギーと世界

草がエネルギーになる⁉~セルロース系バイオマス原料の栽培~

■学問大分類:農学・水産学・生物
■学問小分類:農学
■提供:東海大学 農学部

バイオマスが招く「農業」と「エネルギー」の新たな問題

農業は、人間が生きていくのに必要な「衣食住」の原料を作り出す大昔からある産業です。今の時代はこれに加えて「エネルギー」も人間の暮らしや産業に必須のものとなっています。これまでは、石油などの化石燃料に頼っていましたが、そうした資源は有限であると同時に、使えば使うほど地球温暖化ガスが出ることから、カーボンニュートラルで再生可能なエネルギーが求められています。その1つが、植物から生まれた生物資源であるバイオマスの利用です。新たなエネルギーとして注目を集めていますが、一方で問題も起こりつつあります。それが、穀物価格の高騰です。食用や飼料用のトウモロコシなどを利用すると、食料との奪い合いが起こります。また、原油価格が値上がりすると、バイオマス利用を見込んでトウモロコシが極端に値上がりし、他の穀物価格の高騰を引き起こしかねません。実際に2008年には、劇的な世界規模での食料価格の高騰が起こりました。

荒地でも育つ草がエネルギーになる

こうした問題を解決するのが、植物の実から得るでんぷんを使うのではなく、茎や葉のセルロース(細胞壁)を利用する方法です。その利点は、植物栽培のように優良農地を使わなくても、荒れ地や湿害が起きやすい耕作放棄水田でも栽培できること。東海大学 農学部農学科の阿部教授の研究室では、エリアンサスというサトウキビ近縁の多年生イネ科植物に注目しています。エリアンサスは、荒れ地や休耕水田などでも簡単に栽培でき、多くのバイオマスが得られる点が大きな特徴です。同研究室では、山間地の水田転換畑で栽培する研究を行うと同時に、過疎地域の村おこしにつながる産業として、発展・普及させる活動にも取り組んでいます。例えば、阿蘇地域では草原での放牧が減り、多くのススキが毎年春先に無駄に燃やされています。こうした野草のバイオマスへの有効活用が、エネルギー問題を解決すると同時に、地域産業の活性化にもつながると考えているからです。

農業に留まらない幅広い知見が役立つ研究

阿部教授は「どんな技術にもプラスとマイナスの面がある」と言います。例えば、バイオエタノール利用の先進国であるブラジルでは、アマゾンの森林破壊が進んでいます。また、セルロース系バイオマスであっても、輸送やエネルギーへの加工過程で多くの燃料を使ってしまえば、大きなマイナスになってしまいます。それだけに、単に栽培技術を開発するだけの研究では不十分です。でんぷんや糖を原料にするバイオエタノールと比較して、セルロース原料にはどんな技術的な問題があるのか。さらに深く考え、どんな利用・加工法が適しているのかを追求する必要があります。研究の対象は、農業とエネルギー分野に留まりません。セルロースをエタノールにするには微生物や化学の知識が必要であったり、有効な利用方法を考えるには産業技術に関する知識が求められます。化学・産業・地域振興・コンピュータなど、幅広い分野への関心が活かされる研究と言えるでしょう。

産業・企業を支える研究と活動

「健康寿命」を伸ばし、長生きしたくなる社会を実現

■学問大分類:農学・水産学・生物
■学問小分類:生物学
■提供:東海大学 農学部×製薬会社

平均寿命は長くても、健康寿命は短い日本

世界でもトップレベルの長寿国として知られる日本。ですが、健康に充実した生活を送れる「健康寿命」は、およそ10年も短いと言われています。年を重ねるごとに何かしらの健康上の問題を抱え、生活の質(QOL)が下がってしまう人が少なくありません。できることなら、いつまでも健康に長生きしたいものです。そのカギを握るのが、生活習慣病によって早まる老化を予防すること。例えば糖尿病などを患うと老化が早く進み、急速なQOLの低下を招いてしまいます。しかも、生活習慣病の多くは痛みが少なく、自分でも気づかないうちに症状が進行してしまうこともあります。そのため、生活習慣病を積極的に予防する意識が持ちにくいと言われています。自分の生活習慣が良い状態にあるのか、それとも悪い状態にあるのかが、簡単には判断できません。こうした背景から生活習慣病患者の数は減らず、国の医療費を圧迫する原因の1つにもなっています。

生活習慣病を予測する機器の開発

誰もが健康な人生を長く送れるように、生活習慣病の発症を早期に予測して予防ができないか。この問題に着目した研究に取り組んでいるのが、東海大学 農学部 食生命科学科です。永井竜児教授の研究室では、生活習慣病の発症を予測できる機器を開発しています。糖尿病や動脈硬化によって蓄積が増加する老化物質「AGEs(エージーイー)」を測定することで、生活習慣病の予防に役立てようという研究や、どんな病気によってAGEsが増加するのかを測定したり、生活習慣の不良によって老化が促進するメカニズムを解明している他、生活習慣病を予防する食品成分の探索も行っています。すでに、製薬会社や工学系企業との共同研究によって、機能性食品や測定機器を製品化して販売しています。同研究室で学んだ学生の中には、卒業後に大手企業の研究員として採用され、研究成果を産業分野で役立てています。

誰もが長生きしたいと思える社会づくり

高齢化社会を迎え、医療費が国家財政を圧迫している現在の日本。例えば、生活習慣的な要因が関係する糖尿病の場合、その医療費は1兆2000億円以上とも言われています。国民が健康で長生きできる社会を作っていくことが、いかに重要であるかが分かる数字ではないでしょうか。そんな社会的にも非常に意義のある研究に取り組めるのが、永井研究室の魅力の1つ。医療に加えて、アンチエイジングにも役立つ研究として注目を集めています。また、学生にとっては、単に専門的な知識が身につくだけでなく、難しい問題も論理的に考え、最適な答えへと導く力も養うことが可能です。学生たち1人ひとりが社会的問題点を考え、研究の目的を明確にして、その方法、結果、考察までを深く追求しています。誰もが安心して、ずっと長生きしたいと思える社会を担う研究に、一緒に取り組んでみませんか?