10年後のまちづくり

言葉から文化、そして共生社会の実現へ。静岡のまちで国際交流。

■学問大分類:文学・歴史・地理
■学問小分類:外国文学
■提供:静岡県 常葉大学/外国語学部 グローバルコミュニケーション学科

遠いけれど身近な国。日本で暮らすブラジル人は21万人。

 ブラジルと日本には強いつながりがあります。ラテンアメリカに移住した日本人の78%がブラジルに移住し、現在、同国に居住する日系人は約200万人。また1990年の出入国管理法の改定によって労働者として来日し、日本に暮らすブラジル人の数は大幅に増えました。法改定以降、移住してきた外国人の人数で多いのは、ベトナム人、フィリピン人、ブラジル人であり、現在21万人のブラジル人が日本で暮らしています。
 常葉大学の所在する静岡県は製造業が活発です。水産加工業が盛んな焼津市では、ブラジル人など外国人労働者が働いています。
 常葉大学の江口佳子先生は、外国人労働者とその家族が暮らす地域において、多文化共生のプロジェクトに携わっています。江口先生は常葉大学の外国語学部でブラジル文学を研究。ブラジルに対する造詣の深さを活かし、学生とともに外国籍住民の生活改善に取り組んでいます。

日本の大学では珍しいポルトガル語の授業。文化や風習も学ぶ。

 ブラジルで話されている言語はポルトガル語ですが、ポルトガル語を第二外国語として設置している日本の大学は、一部の外国語大学を除けば少数です。しかし、2019年の出入国管理法の制限の緩和により、今後ますます外国人との共生が進むでしょう。ポルトガル語を学ぶことは、多文化共生社会実現への一助になり、企業や公共機関で活用できる可能性も多いにあります。
 常葉大学の外国語学部は韓国語・中国語・スペイン語とともにポルトガル語の授業を設置しています。
江口先生の授業では、言語とともに、ブラジルの国家形成の歴史や日本とブラジルの人的交流、カーニバルやサッカー、カポエイラなど独自文化の意義、そして多様な食文化や音楽などについて学ぶことができます。先生が専門とされるブラジル文学に関しても、人種・格差・ジェンダーなどの現代の日本社会と共通するテーマの作品をもとに、学生と意見交換を行っています。

学生たちの視線・感性を活かして地域の多文化共生に貢献を。

 江口先生が関わる焼津市市民協働課との連携事業では、外国籍住民の生活改善プロジェクトで、学生が活動しています。行政が作成したアンケートを多言語化し、ヒアリング調査を行うことで、外国人が抱える問題を認識して、分析結果を焼津市に外国人施策として提案しました。
 また、静岡県警からの依頼で、「防犯ガイドブック」をスペイン語・韓国語・ポルトガル語に翻訳したこともあります。2021年度は、子育て中の外国人を対象とした、焼津市の公共図書館の案内作成と多言語化にも携わりました。
 江口先生の学科で学ぶ外国にルーツをもつ学生が、外国人の保護者向けの地域の進路ガイダンスで、自らの体験を話すこともあります。
 コロナ禍で留学がしにくくなっていますが、オンラインによる学習環境の整備も進んでいます。今後は多文化共生の課題をオンラインも活用し、大学・地域・国境を超えた交流を通し、協働して取り組みたい、と江口先生は語ります。

10年後のまちづくり

静岡市山間地域の人口減少対策に、独自の視点で学生たちが挑む。

■学問大分類:社会学・マスコミ・観光
■学問小分類:地域社会
■提供:静岡県 常葉大学/法学部 法律学科

地域社会の一員として学生と行政が意識を共有してテーマを選定。

 大学は地域社会の一部であり、そこで学ぶ学生は地域社会の一員。
 静岡県にある常葉大学法学部法律学科の望月久先生のゼミでは、人口減少や少子高齢化、外国人労働者の増加による共生社会の実現など、地域の抱える課題に学生がアプローチし、実際に具体性のある政策の立案を行っています。
 課題に取り組むのは3年生の学生たちです。静岡市職員を講師として招き、地方創生や経済・産業振興策、多文化共生、SDGsなどのテーマについて意見交換を実施。さまざまなテーマについて理解を深めたうえで、2021年のテーマとなったのは「人口減少が続く中山間地域の移住者増加策」でした。
 対象となった静岡市の中山間地区「オクシズ」は、静岡市全体の80%を占める豊かな自然が残る山間の地域です。地域特有の歴史ある文化や作物、美しい景観など素晴らしい地域資源に恵まれた地域ですが、そこに居住する住民は市全体の4%以下。人口減少が深刻な地域です。

移住の前に「ゆるい」移住を。学生ならではの観点で方策を提示。

 3つのグループに分かれた学生たちは、インターネットからの情報や行政から提供された調査資料をもとに地域の現状分析を進め、静岡市の中山間地域「オクシズ」が抱える「新たな移住者が少ない」「認知度が低い」「住居が不足している」という課題を抽出します。
 その後、それぞれの課題について解決策を導き出しました。
 まず、「新たな移住者が少ない」ことについて。いきなりハードルの高い「本格的な移住」を進めるのではなく、まずは気軽に日帰りや短期滞在で地域住民との交流やお祭りなどのイベントの体験から始める「ゆるい移住」を積極的に進める方策を提案。
 また、子育て世代などにターゲットを絞った移住支援策が必要という意見も。さらに、地域内に情報発信力のある学生アルバイトを確保することで、SNSによる効果的な情報発信が期待できるのでは、という学生ならではの見解も示しました。

具体的な方策とともに、長期的な目標を見据えたビジョンが必要。

 「認知度が低い」という課題には、地域の特産品や自然スポットなどの魅力をそこに暮らす住民や観光客、イベント参加者、ボランティアの学生自らSNSや動画などで情報発信することを提案。「住居不足」に関しては、住宅所有者が物件を「空き家バンク」に登録しやすい補助金などの支援制度を設けることや、地域の木材を利用したマイハウス建設に支援を行う案などが出されました。
 これらの調査・検討結果を、大学に招いた静岡市葵区職員にプレゼンテーション。限られた時間と情報の中で、ここまでの提案をしたことを高く評価されました。現在、静岡市ではオクシズの人口減少対策プロジェクトが進められており、学生たちから提案があったプランについても検討を重ねているとのこと。さらに、「具体的な手段にとらわれず『何年か先、オクシズをどんな地域にしたいか』という目指す姿をイメージして考えることが重要」というアドバイスも受けることができました。

10年後のまちづくり

コミュニケーションツールとしての「ゲーム」づくりを体験。

■学問大分類:社会学・マスコミ・観光
■学問小分類:コミュニケーション学
■提供:静岡県 常葉大学/外国語学部 英米語学科

「ゲーム」のプレイから生まれる双方向コミュニケーション。

 静岡県にある常葉大学のピーター・ハーディケン先生は、学部の枠を超え「ゲーム」を活用したコミュニケーションを模索しています。
 特に自分たちが暮らす地域社会でのゲームの有効性を実証するため研究と実践を続けます。同先生は2017年、学内オープンスペースで既存や独自のカードゲームやボードゲームを、学生たちが楽しんでプレイしながら英語の習得も行う「トコハゲームラボ」を運営しています。
 講義などで語学を一方向から学ぶのとは違い、ゲームのルールを作る、ルールを共有する、ルールを人に伝える、ルールに基づきプレイする過程で、「教える者」と「教わる者」の枠を超えコミュニケーションが生まれます。またゲームやゲームデザインは、参加者が共に考え、コミュニティの価値観や何が重要かを考え、話し合う機会を提供します。この効果を地域社会の人的交流の活性化や問題意識の共有、地域に対する知識や愛着の育成につなげようというのです。

ゲームづくり、ゲームのプレイから、地域への知識・愛着を。

 近日中に完成するゲームの名前は「Flow」。5人プレーのボードゲームで、明治初期には林業で栄えた静岡県天竜川地域の歴史・経済・物流などのトピックをプレイしながら学べるというもの。
 さらに現在制作中のカードゲーム「DOKODA(ドコダ)」は一種の名前当てゲームで、静岡県内のさまざまなスポットや地域独自の習慣などのヒントが記されたカードに基づいて推測する、というものです。
 ゲーム開発においては学内外のワークショップの参加者が協力し、ゲームのテストプレイや静岡県内の情報提供をしてくれています。ゲームづくりのワークショップと地域のイベントを通して、学生たちは自分たちの地域についての知識と愛着を深めていきます。「コロナ禍が落ち着いたら、もっと積極的に学生たちをフィールドワークで活動させ、地域の人々と交流させたい」とハーディケン先生は語ります。

コロナ禍のいまだからこそ、必要な人と人との交流と「体験」。

 人々はネットを通したコミュニケーションに慣れ親しみ、情報収集のあり方や買い物もネットに依存するようになりました。これらは便利である反面、「人と人」の交流や「体験」を消極的にしています。そしてコロナ禍はその傾向に拍車をかけました。
 そうした時代だからこそ、コミュニケーション手段としての「ゲーム」や、それを作るための情報収集は有効だと語るハーディケン先生。
 現在、先生が計画しているのは、静岡県藤枝市にある自然体験施設「水車むら」での体験学習です。
学生たちは古民家で昔の農村の生活を体験しながら、その様子をSNSで世界へ発信。さらにこの体験を英語の解説つきの短編ドキュメンタリー映像にして配信し、静岡の魅力を世界に伝えます。
 コロナ禍で留学や海外研修が大幅に制限されている現在、いかに学生たちの体験や異文化コミュニケーションの機会を獲得して提供するか。ハーディケン先生は常に模索を続けています。