10年後のまちづくり

AI&IoT技術は、医療分野や産業界の救世主になれるか!?

■学問大分類:情報学・通信
■学問小分類:情報工学
■提供:福井県 福井工業大学/工学部 電気電子工学科 芥子研究室

「医工連携」の未来を拓くAI&IoTセンター

下痢が止まらない。熱が高く息苦しい―。患者の悲痛な叫びから病名を推定できるテクノロジーがあれば、医師や看護師の負担を減らせるかもしれない。的確な医療機関の紹介までできるようになれば、医療人はもっと治療に集中できるはずだ。こうした医療の現場をはじめ、さまざまな領域においてAIやIoTを活用したシステムの開発に取り組んでいるのが、福井工業大学(FUT)電気電子工学科の教授であり、AI&IoTセンター長の芥子育雄氏である。
芥子教授の様々な研究活動のなかでも、特に注目を集めているのは「意味表現学習による病名推定」である。AIの学習手法である「意味表現学習」を駆使して、連携先の富山大学附属病院から提供された過去16年間の電子カルテをAIが学習し、疾病の診断と医療機関への案内までを可能とするものだ。ひと言で言うと「AIを医療分野に活用する研究」であり「医工連携」とも言えるものだ。

地域の社会改革(医工連携)、地域の産業創造、AI&IoT人材の育成を目指して

芥子教授はこれまで、大学や大手電機メーカーの研究所などでAIの研究に従事してきた。それらのキャリアを活かし、現在はAIによる学習をさまざまな分野に活用する研究に取り組んでいる。その一環としてセンター長を務めるAI&IoTセンターは、2019年4月に福井工業大学(FUT)が設置。AI&IoTを活用した地域の活性化に繋がる社会改革と産業創造を推進し、AI&IoT人材の育成に取り組んでいる。
AI&IoTセンターでは、芥子教授のほかにも多くの研究者が、これまでにない技術の開発に挑んでいる。「医工連携」においては、木森教授がAIによる画像認識で病変の位置を検出する画像診断システムの開発を推進している。八木教授が挑むのは、生物の視覚の情報処理を模倣した人工視覚デバイスの実現。中道准教授が取り組むのは、患者一人ひとりに合わせた制御が可能な人工呼吸器の開発だ。

Society5.0の実現に向けての牽引役に

AI&IoTセンターでは、さらに縦横無尽な研究活動を展開している。FUTがJAXAと連携して進めている高性能パラボラアンテナの構築計画、垂直離着陸・固定翼・自律飛行型ドローンリモートセンシング実証実験から得られるデータなどを掛け合わせてAI解析を行うなど、新しいデータの活用法にも期待がかかる。衛星やドローンからのデータをもとにAIが最適な稲刈り時期を示したり、衛星と地上IoTセンサからのデータをもとに町のあかりを計測して光害対策に活用するといったプロジェクトも進行中だ。福井県内の自治体や企業などからも、さまざまな共同研究や委託研究の依頼が寄せられている。
我が国では現在、Society5.0(AIやIoTの力を借りて、より快適で活力に満ちた暮らしを実現する社会)の実現に向けての取り組みが進んでおり、AI&IoTセンターはこうした動きを加速化させる牽引役としての役割も果たしている。

10年後のまちづくり

二酸化炭素削減の切り札。ニューラルネットワークで自律制御のエンジンを!

■学問大分類:工学・建築
■学問小分類:航空・船舶・自動車工学
■提供:福井県 福井工業大学/工学部 機械工学科 土屋研究室

二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする「バイオマス燃料」

石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料は、燃焼させることで「エネルギー」を生み出す。このエネルギーは、私たちがエアコンを使ったり、自動車に乗るなど、快適な生活を送るうえで欠かせないものである。一方、化石燃料は二酸化炭素などの温室効果ガスを発生することから、「地球温暖化を引き起こす」という大きな問題を抱えている。二酸化炭素の削減は世界的な課題の一つになっており、各国で様々な取り組みを進めているのだ。では、二酸化炭素を削減するためには、どうすればよいのだろうか。近年、化石燃料に代わるエネルギーとして高い注目を浴びているのが、植物などの生物資源を原料とする「バイオ燃料」だ。バイオ燃料は、燃料として使うことで二酸化炭素を排出するが、植物として育つ過程で光合成を行い、二酸化炭素を吸収する。そのため、二酸化炭素の排出量が相殺され実質ゼロになることから、二酸化炭素の削減に有効と言われているのだ。

燃料に応じて最適な条件を判別する仕組みを研究

例えば、軽油の代替燃料である「バイオディーゼル燃料」は、ディーゼル車や船舶、航空機、農機・建機など、さまざまな機械に用いられている。ディーゼルエンジンで動く機械の燃料をバイオディーゼル燃料に変えれば、それだけで二酸化炭素の削減に大きな効果を発揮するのだ。もちろん、単にバイオディーゼル燃料に変えればよいわけではない。なぜなら、燃料はそれぞれ特性が異なり、使用する燃料によって出力や着火温度に違いが出るからだ。そのため、燃料に合わせて適切な条件に変える必要がある。そこで福井工業大学の土屋高志教授は、ディーゼルエンジン用の燃料種類を自動的に判別し、最適な条件に調整するための方法について研究している。この研究では、ニューラルネットワークという脳の神経を模倣した数学モデルを使うとともに、灯油や軽油など4種類の燃料を用いて実験を行い、データを収集しているのだ。

ニューラルネットワークで、自ら考え、適応する自動車をつくる

今回の研究では、ニューラルネットワークの層の数を増やすことによって燃料判別の正答率を高められたほか、学習法の変更により学習時間そのものを短縮することができた。今後はデータ量をさらに増やし、さまざまな環境で実験を行っていく予定だという。そして、その先にあるのは、自動車の制御への応用。もしも、自動車が燃料に応じて最適な条件を判別・最適化できるようになれば、どの燃料を選んだとしても無駄に使わずに済むのだ。また、バイオディーゼル燃料にも応用できれば、二酸化炭素の削減にも貢献することへの期待が高まるだろう。最後に土屋教授は、これから大学に進む高校生の皆さんへのメッセージとして「この研究は、自動車に限らず、さまざまな分野に応用することが可能です。自動車やエンジン、制御、プログラミングなど、さまざまな学びを得られるので、広い視野を研究に取り組むことができます」と話す。

10年後のまちづくり

工学・理学・医学など複数の学問を連携させ、災害に強い「まち」をデザイン

■学問大分類:工学・建築
■学問小分類:土木工学
■提供:福井県 福井工業大学/工学部 建築土木工学科 竹田研究室

災害大国日本でまちづくりを行うために、大切な「考え方」とは?

災害大国の日本。これまで、地震や津波、大雨など、さまざまな災害を経験してきたが、近年は災害が増加する傾向にある。そのため、まちづくりではこれまでの「快適性」に加えて「防災」の視点も踏まえた設計・デザインが重要となった。加えて、日本は少子高齢化が急速に進む課題もある。一方、生活自体が多様化しているため、こうした社会構造の変化にマッチしたまちづくりをする視点も求められている。福井工業大学で防災・減災に関する研究に取り組んでいる竹田周平教授は、「多様な社会ニーズを受け止め、地域の人々と十分にコミュニケーションを取りながらまちづくりを行うことが、今の日本に求められている」と話す。特に大切なのは、そこで暮らしている人々に「共感」すること。なぜなら、共感によって人々の「真の課題」が見つかり、それによって、ハードだけでなくソフト面からまちづくりを行うことができる「デザイン思考」が重要となってくる。

行政や企業と共同して、感染症対策ができる装置を開発

竹田教授は、フィールドワークや経験を大切にしている。「フィールドワークの授業では、阪神淡路大震災をテーマに取り上げ、事前に詳細に調査し、実際に神戸に行って被害の状況や復興の過程について学びます」と竹田教授。学生たちはこの授業を通じて被災した人々に思いをはせ、まちづくりに関する多くのヒントを得ているのだ。また、竹田教授のゼミでは、理学や工学、医学など、さまざまな学問を横断して、防災・減災に関する研究を進めている。近年は新型コロナウイルスの感染症対策をしながら医療ができる「テント式の簡易陰圧室」を行政や企業との協力により開発した。これは医学と工学の連携である。しかし、どんなにすぐれた機械やシステムでも、災害時に機能しなければ意味を成さない。そこで医療従事者や研究者に試作品を使ってもらい、意見を取り入れて「現場の人々が使いやすい装置」を開発。この装置は、すでに各地の病院に導入されている。

一つひとつの取り組みを地道に積むことで、災害に強いまちになる

地域に向けた活動も、積極的に進めている。竹田教授は地域の子どもたちに向けて「防災教育」を行っているほか、地域の高齢者や介護を必要とする要支援者が災害時にスムーズに避難できるよう、避難行動に関する調査・研究も行っているのだ。例えば防災教育では、子どもたちが自分たちで防災について考えられるような方法を取り入れている。もしも目の前にがれきがあったら。寒く凍える日に避難所で過ごすことになったら―。子どもたちは被災時のさまざまなシチュエーションに遭遇しながら、自分で考え、行動する力を育んでいるのだ。しかし竹田教授は、「まだまだ考えていくべきことがたくさんあります。災害時に避難する方向を示す標識を街中に設けたり、要支援者が避難行動と健康増進を兼ねた防災散歩を定期的に行うなど、今後も防災・減災のための取り組み一つひとつを地道に積み重ねていき、災害に強いまちを実現したい」と語った。

エネルギーと世界

磁気力制御を利用したリサイクルおよび環境浄化技術の開発

■学問大分類:地球・環境・エネルギー
■学問小分類:原子力工学
■提供:福井県 福井工業大学/工学部 原子力技術応用工学科 三島研究室

カーボンニュートラルへの取り組みの一環として、再評価される原子力発電

地球温暖化を背景に、CO₂を排出しないエネルギーとして再び脚光を浴びている「原子力発電」。福島第一原子力発電所事故をきっかけに原子力発電所は不安視されその稼働率も低減されたが、一方で原子力発電の安全性を高める規制が見直され、世界的に再度注目されているのだ。こうした中、原発事故による放射線汚染土壌の浄化として、磁気力制御を利用して分離回収する研究をしているのが福井工業大学の三島史人教授である。放射性物質は粒子径の小さな粘土鉱物に多く吸着しており、その粘土鉱物を選択的に分離することが重要である。特にセシウムイオンの吸着サイトを持ち、常磁性を示す小粒系の粘土鉱物を選択的に分離できれば、さらなる減容化につながると考えられる。そこで常磁性粒子の磁気分離について、淘汰管(流体制御)と磁気分離装置(磁気力制御)を組み合わせ分離する手法を検討しているという。磁気力制御によって、この他にも海洋マイクロプラスチックやレアメタルなどの有価資源などの分離回収もできるという。

様々な物質を磁気力によって、遠隔・非接触で分離可能に

「本研究室には様々な磁場発生源や設備があり、用途に合った磁気分離法の開発が可能です。リサイクルや分離除去できないとされてきた物質、人体に影響があり危険とされる物質を、磁気力によって遠隔・非接触で分離できるようになります」と話す三島教授。磁気力利用の分離方法の開発には、分離対象物の磁気的および化学的な性状を確認する測定作業、物質に対する最適な磁気力の制御が必要である。磁石の力で物質を分離する一見単純な方法であるがゆえに、詳細を検討している企業や研究室は世界的にも少ない。三島研究室のように様々な磁場発生源を所有し、分離実験環境がある中で磁気力を利用すれば、様々な物質を分離することが可能だ。「資源に乏しい日本にとって、循環資源の再利用は重要な課題です。磁気分離法を多くの人々に利用いただき、循環型社会になくてはならない技術に成長させたい。メインストリームでなくても最終的に行われている化学処理の前処理としての適用でも良いと考えています」。

社会を生き抜く人間力を、研究を通して養成

この研究室では、学生はどのようなスキルを身につけ成長することができるのか、三島教授は次のように話す。「この研究では、最終的に磁石で物質を吸引できる一方、磁石で分離するまでには様々な条件出しが必要です。その物質の分析結果だけでなく、生成プロセス、分離後の用途に見合う分離精度なども精査した上で検討するため、考察力(論理的思考)が養われます。分離条件の決定については計算と実験による検討が行われますが、実際の実験では当然ながら上手くいかないことが多く、忍耐力も鍛えられます」。処理量が多い実験では役割分担のある複数人で行う場合も多く、チームワークが鍵を握るという。このため学生はコミュニケーション能力を得られ、大きな声で明瞭に話せるようになる。実験リーダーとなる際には的確な情報を伝達指示するための計画立案が必要なため、自身だけでなくチームのスケジュール管理能力なども自然と醸成されるでしょう。

10年後のまちづくり

たかが雨水。されど雨水。飲料水やエコ、防災の視点から世界が注目

■学問大分類:地球・環境・エネルギー
■学問小分類:環境工学
■提供:福井県 福井工業大学/環境情報学部 環境食品応用化学科 笠井研究室

生活用水の全てを雨水に頼る、そんな離島の現状を打開したい

世界の中でも雨が多い国、日本。適度な雨が降り、梅雨や台風、雪など気候にも恵まれている。水道やダムなどのインフラ整備が充実し、全国どこでも飲料水に困ることはないと思われがちだ。そんな中、すべての生活用水を雨水でまかなっている場所がある。長崎県五島列島のひとつ「赤島」だ。面積は0.51km²ほどの小さな離島に、10人程度の島民が生活している。「赤島」には水道施設がないばかりか、井戸などの生活に利用できる水源もない。頼りの綱は、雨水のみである。こうした課題を解決するために、一つの計画が動き出した。雨水活用の研究家であり、福井工業大学環境食品応用化学科の笠井利浩教授と、同大デザイン学科の近藤晶准教授、研究室の学生を中心に構成されたプロジェクトチーム「しまあめラボ」である。

雨水を水源とした給水システムが完成

笠井教授がはじめて「赤島」を訪れたのは2016年のこと。雨水を溜めた各家庭のタンクが頼みの綱という厳しい状況を目の当たりにして、さっそくアクションを起こす。前述の「しまあめラボ」を発足させ、2017年には「赤島」に雨水を水源とした給水システムを構築するプロジェクトに着手。雨水活用システムの先進事例の構築に挑んだのだ。
夏休みには3週間にわたって学生と島に滞在。雨を集める「雨畑」と、その雨水を集落へ運ぶ送水管の整備に取り組んだ。現地での苦労が多いシステムづくりは3年間におよび、ついに完成の日を迎える。現在はシステムを利用してもらいながらデータを収集。雨水タンク内の貯留雨水を適切に管理できる「雨水タンクのスマート化」をはじめ、システムの改善にも力をこめる。

雨水の有効利用は、いまや国際的なトレンドに

エコロジーの観点から近年、世界で話題なのが「Rainwater harvesting(レインウォーター ハーベスティング)」という考え方だ。雨の恵みを活かし、水循環の健全化に貢献する試みであり、「しまあめラボ」のプロジェクトは代表例といえる。その功績は大きくJST「STI f or SDGsアワード」や「ジャパン・レジリエンス・アワード」などでも受賞を果たしている。
「雨水活用システムは、赤島に限ったものではありません。私の研究室の最終目標は社会で雨水活用が普通になる事。そのために企業と家庭用雨水タンクを商品化するなど、全国への普及にも積極的に取り組んでいます」と語る笠井教授。雨水活用はまちづくりの観点からも重要であるとも話す。「各住宅が雨水タンクを設置して雨水を利用するようになれば、『断水時に水に困らずに済む』『豪雨でまちから排水しきれない雨水が引き起こす、内水氾濫を減らすことができる』などの効果も期待できます」。

10年後のまちづくり

行政のための広報ツールとなる新しいグラフィックデザインの提案

■学問大分類:芸術・表現・音楽
■学問小分類:デザイン
■提供:福井県 福井工業大学/環境情報学部 デザイン学科 近藤研究室・三寺研究室

まちづくりの観点から身近な道路のことを考える

みなさんは、新しい道路の開通や補修工事の完了を伝えるニュースを見聞きした時、「知らなかったなぁ」と思ったり、「いつの間にやっていたの?」と疑問を感じたりしたことはありませんか?全国に広がる道路は人やモノの円滑な移動や流通に欠かせないものであり、事業は綿密に計画され、完了までに長い時間が必要です。福井県では、2040年を見据えた道路整備の基本方針である「将来ビジョン」を策定し、昨年3月に公表しました。自治体の公共事業は、人々が安全に暮らすための社会基盤をつくるために不可欠であり、自治体の予算の中でも大きな割合を占めます。しかし、これまではハード面の政策が強調され、大規模で完成までに時間を要することから、事業の概要や進捗が住民に広く知られにくい傾向があります。「将来ビジョン」には、道路にかかわる防災や環境、地域活性化など福井県の社会的課題が多く含まれており、まちづくりを考える上でも重要です。

道路事業を広く伝えるリーフレットを学生がデザイン

2040年の実現をめざす「将来ビジョン」を特に若い世代に広く知らせるため、福井県の土木部道路建設課は、福井工業大学環境情報学部デザイン学科の三寺潤教授に、「将来ビジョン」の今後の広報活動について相談しました。その結果、同校でデザインを学んでいる学生がイラストレーションを用いた紹介リーフレットの制作を担当することになりました。リーフレットの企画から制作まで一貫して携わった学生は、まず50以上にもおよぶ事例研究を探り、リーフレットの形状や色、コンセプトなどが異なる3つのデザイン案を作成しました。そして、リーフレットの方向性を踏まえたプレゼンテーションを県の担当職員の前で行い、選ばれた案にさらに修正を重ねていきました。学生を指導したデザイン学科の三寺教授と近藤晶准教授は、「学生はお盆休み中も取り組んでいて、何度か相談を受けました」と、学生の制作への熱意と自主性を強く感じたとのことでした。

公共事業の大切さを子どもにも伝わるやさしいデザインに

完成したリーフレットは三つ折りの両開きで、上部を丸くカットして福井の山並みを表現しています。子どもにもわかりやすいように「みらいのどうろのおはなし」と名付けられました。内容は、「将来ビジョン」の中で挙げられた社会的課題とその対策としての5つの基本方針を説明し、見開きのイラストと5つのブロックに分けて読みやすくしています。イラストやフレーズには、親しみを感じる表現も意識されています。「福井県職員の方々の要望に応えることはもちろん、頭で考えたことを形にするために印刷業者の方とのやり取りする中で学ぶことも大変多かったです。イラスト専用のソフトにも慣れました」と、担当した学生は制作のやりがいを語ってくれました。このリーフレットは今後、県内の公共施設などに配置される予定です。地元の学生の活躍が、公共事業の広報活動に新しい風をもたらし、地域の未来を担う子どもや若者にも伝わっていくことでしょう。

これからの“働き方

これからの働き方に合わせた次代の地方都市のあり方を考える

■学問大分類:経済・経営・商学
■学問小分類:経済学
■提供:福井県 福井工業大学/環境情報学部 経営情報学科 近藤研究室

テレワークやアドレスホッパー。働き方が変われば地方都市のあり方も変わる

近年、働き方改革により推奨・提案されているテレワークなどの新しい働き方。皮肉にも、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で多くの方に認知されるところとなりました。しかしこれらは感染症対策以外にも「会社に通勤することなく、どこにいても仕事ができるようになる」など、働き方に自由度を与えることができる施策としてさまざまなメリットをもたらします。人々の働き方が多様化することで、首都圏などから自然豊かな地域に移住する人や、アドレスホッパー(賃貸物件や持家など特定の住居を持たずに、土地を移動しながら生活する人)などが登場するなど、全国各地の人口分布にも影響があると考えられます。実際、リモートワークやオンライン授業などの普及により、これまで都市圏に集中していた人たちが地方に分散しているという事例が報告されており、これからの地方都市のあり方にも大きな影響をあたえています。

メッシュデータを分析し、地方都市の変化を紐解く

研究室では、全国のさまざまな地方都市における人口分布の集約と拡散に関して「メッシュデータ」を用いた分析に取り組んでいます。メッシュデータとは、地図上を格子状に区切ったデータのこと。国勢調査データなどを利用して都市の人口の増減を地図上のメッシュごとに色で表示させていくことで、都市の市街地の人口がどのように変化しているかなどを見える化していきます。これにより都市機能が集約しているのか、拡散傾向にあるのかなどを調べて、都市政策の判断に活用できるようにしようという研究です。人口分布は、「働き方の多様化により、どこでも働くことができるようになった」ことの影響度や、人口減少や過疎化など、社会が抱えるさまざまな課題の影響を判断、検証するには最良の指標のひとつ。時代に合わせた新しい地方都市づくりが課題となっているなか、これからの地方都市の政策に役立つさまざまな情報を提供できるはずです。

これからますます求められる、データを適切に読み取り、活用していく力

データは、適切に分析できてこそ意味があります。福井工業大学の経営情報学科では、この研究以外にもさまざまなデータを適切に読み取り、活用していく研究や学びがたくさんあります。ときにはAI(人工知能)などの先端情報技術を活用して、膨大なデータから必要な情報を整理したり、統計学などのスキルによって、一見ただの数値の羅列であるデータを「使える情報」に変換するなど、「データサイエンティスト」としての力を養成。インターネットの普及などにより、現代ではだれでも簡単にさまざまなデータを得ることができます。さらに、IoT技術の進化などにより、私たちが扱うデータは、これからもさらに増え続け、データから正しい情報を得て、分析、判断できる力がより一層、重要になってくることでしょう。

10年後のまちづくり

転倒予防を通して、誰もが「自宅に引きこもらない生活」を実現する

■学問大分類:体育・健康・スポーツ
■学問小分類:健康科学
■提供:福井県 福井工業大学/スポーツ健康科学部 スポーツ健康科学科 杉浦研究室

介護施設や病床数が不足する中、要介護のリスクを低くするには

超高齢社会と呼ばれる昨今、2021年9月における日本の高齢化率は29.1%。高齢者の増加は2042年で止まるが、高齢化率は高まり続け、2065年には38.4%に達すると推計されている。「高齢者が過ごしやすい『まちづくり』が検討・展開されていますが、何かのトラブルにより『自宅に引きこもる生活(要介護)』となった場合、未来の日本は理想とは異なる姿になるかもしれません」。こう話すのは福井工業大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科の杉浦教授である。現代日本の問題に「要介護者の増加」がある。介護施設や病床数不足により、介護サービスを受けられない者が生じることも懸念されている。また、要介護認定の原因として、認知症や脳血管疾患、衰弱、転倒等が挙げられる。ここで注目したいポイントがある。認知症や脳血管疾患、衰弱は生活習慣が大きく影響するが、転倒は回避し続ければ要介護のリスクを低くすることが可能なのだ。

転倒回避には、日常生活では求められない身のこなしなどが必要

老若男女問わず、誰にでも起こりうる転倒を避けるためには、具体的にはどうするべきか。杉浦教授は以下のように話す。
「人は転倒を回避するため、とっさに1歩踏み出したり、手をついたりする必要があります。これらには足関節背屈力(つまづき防止)や股関節外転・内転筋力(ふらつき時の側方へのステップ)、握力(ふらつき時のつかまり)、平衡能力(ふらつき時の姿勢回復)、敏捷能力(ふらつき時の反応や素早い一歩)などの能力が必要とされ『通常の日常生活では求められない身のこなし』や『安定した移動に必要な能力とは異なる身体能力』も求められます。したがって、転倒回避能力を正しく評価し、その能力を高めるための運動を提案することが重要と考えます」。そして今後は、2つの観点から研究を進めていくという。

人の幸福度を向上させるため、新しいことに挑戦し続ける

「転倒する者は『虚弱』の印象が強いですが、転倒は不意に生じるイベントであり、元気な人でも転倒します。つまり、転倒は『虚弱に伴う転倒』と『積極的な活動に伴う転倒』に大別されますので、グループ別に検証を進めていきます。また、『足の形状』や『立位時の足幅や歩行時の歩隔』には個人差があります。これらを考慮した転倒回避能力の評価も進めていきます」と研究方針を語る。
最後に、本学部・学科に向いている学生は「人の幸せを望む奉仕の心」と「新しいことに挑戦する勇気」を有する人だという。最初は学外での活動や人前での指導に抵抗があるかもしれないが、対象者の笑顔や成果を通してやりがいを感じるようになる。「スポーツや健康に関する勉強に加え、人との接し方や指導法も学ぶことができます。社会人としての基礎力(コミュニケーション能力、一般常識など)の習得も可能なため、就職の幅を広げられます。」と話す。