これからの“働き方

達人(名人)の判断力を、様々な意思決定に活かす

■学問大分類:情報学・通信
■学問小分類:情報工学
■提供:静岡産業大学 経営学部 経営学科

生活のあらゆる場面の意思決定をAI(人工知能)が支援

例えば、サッカーの試合。チームプレーの戦術で意見がまとまらない時、AIが意思決定を助けてくれるという研究が進んでいます。そのしくみは、意思決定を形成する要素を構造分析・画像分析から導き出し、コンピュータがそれぞれのファクターの重要度や効果を計算。算出結果を選手にフィードバックすると、選手のパフォーマンス向上につながるというものです。その適応範囲は、生活や仕事などあらゆる場面に広がっています。
佐野典秀教授が取り組む研究の一つが、人間と機械の間の境界を扱うマン・マシンインターフェースの意思決定。原子力発電所や飛行機などの巨大システムは、自動運転が主流とはいえ、想定外の局面に遭遇すると人間の判断が重要になります。そんな時、どうしたらヒューマンエラーを低減した意思決定ができるのかをその分野の専門家の経験値を写し取って分析し、サポートする役割としてAIに期待を寄せています。

達人(名人)の判断を重視し、人の曖昧さを評価するAIへ

「凡人100人の回答の平均値を使ったシステムよりも、優れた意思決定ができる一人の達人(名人)の判断を使ったシステムのほうが素晴らしい意思決定につながる」と佐野教授が語るように、この研究では達人の主観的な判断に着目して意思決定の過程・構造を分析する研究を進めています。
その手法として導き出したのが「ファジィ積分」。ファジィ=曖昧と連想しますが、この研究の目的は「必ずしも1+1=2」にはならないという発想に立ち、達人の考え方をよりソフトに、柔らかく包み込んで、意思決定に反映させること。「ファジィ積分」を使って、意思決定の背景にある人間の主観や心の表現といったファジィ性を考慮して計算するコンピュータの活用を目指しています。いま、様々な分野の達人と呼ばれる人たちが次々と第一線を退いています。こうした時代だからこそ、達人の素晴らしい判断・意思決定を後世に残すための研究が求められているのです。

AIが出した答えに疑問を持てるような学びを

今を生きる経営者は、データサイエンスに基づいて、AIが提示する様々な回答を使って意思決定をしなくてはなりません。しかし今後、ビックデータを用いた客観的データだけでは判断が難しい時代がやってくるはず。そこで必要になるのが、経営の偉人と呼ばれる人の意思決定や判断を上手く写し取り、そこに自分の主観的な判断をベストミックスし、より良い意思決定に役立てられる支援システムを活用すること。そのためには、コンピュータが導き出した答えだけを鵜呑みにせず、人間の叡智を融合させて柔らかい判断を付け加えていくことが重要となります。
達人の判断力をこれからの意思決定に活かすこの学びは、まさに客観的な思考の中で、主観的な判断力を養うためのものと言っていいでしょう。「人工知能に踊らされず、自分の主観を信じて判断できる人を育て、次世代で活躍できる人材を社会に送り出したい」と佐野教授は未来のAI社会を想像しながら語っていました。

10年後のまちづくり

学生目線の「センキョ割」活動で、若者の投票率向上を目指す

■学問大分類:社会学・マスコミ・観光
■学問小分類:地域社会
■提供:静岡産業大学 経営学部 心理経営学科

投票に行く“きっかけ”となる活動に取り組む

令和3年の衆議院選挙の投票率は、戦後3番目に低い55.93%。年代別では10代が43.21%、20代が36.50%と若者の投票率の低さが際立ちます(総務省調べ)。静岡産業大学が位置する磐田市でも、センキョ割@磐田事務局が投票率向上を目指し、センキョ割活動を続けていましたが、思うような成果が出ていませんでした。この状況を打開しようと立ち上ったのが、経営学部の佐藤寛子准教授のゼミ生(当時3年生)です。若者の投票率を上げたいという思いが他の学生にも広がり、事務局と協同しながらセンキョ割普及活動や協賛店舗の開拓に取り組んでいます。
センキョ割は、投票に行く→投票済証明書を受け取る→投票済証明書を協賛店舗に提示し、割引などのサービスを受ける、という流れ。学生独自の視点で協賛店舗を開拓し、SNSでの情報発信、パンフレットやポスターなどの広報資料の作成、投票済証明書のデザインに挑戦しています。

センキョ割を通して「人」に伝える力を育む

センキョ割活動には、投票率向上や政治への関心を高めることだけでなく、地域貢献やまちづくりという目的もあります。学生は、店舗や事業主をはじめ、行政や市民の方々と未来のまちづくりの視点を共有する対話の中で、センキョ割活動への理解を促し、協賛を呼びかけました。そんな学生の声が多くの人に届き、令和3年度の協賛店舗数は3か月で17店舗から51店舗へと増加。また、活動の中では、アポイントの取り方、名刺の渡し方、プレゼンテーションの仕方などを実践し、社会人としての振る舞いやコミュニケーション力を磨きました。
一方、デザインが得意な学生は、磐田市選挙管理委員会に投票済証明書の新デザインを提案。磐田市民や磐田の魅力を取り入れたデザインは有権者の皆さんに大好評でした。広報用パンフレットも学生のアイデアで図やイラストを入れてリメイク。独自のSNSを開設し、学生目線でセンキョ割の情報を発信しています。

若者の政治への関心を高め、よりよい市民社会の実現へ

センキョ割活動を通して、若者にセンキョ割の趣旨や内容を届ける手段や、魅力的なサービスを工夫するだけでは解決しない課題があることに学生は気づきました。自分たちの手で社会を変えられるという実感の欠如です。
磐田市内の大手スーパーチェーン5店舗が協賛に加わるなどの成果を通して、学生は「思いだけでなく、社会貢献の理念や具体的なビジョンが伝わることが大切。そうすれば、どんな店舗も話を聞いてくれるし、賛同してくれる」と語り、社会の構成員としての自覚と連帯感を持つようになったと振り返ります。そして、多くの店舗や事業主が選挙を通した未来のまちづくりに賛同してくれたことで、一人ひとりが主体的に行動することの大切さを実感したようです。
佐藤准教授は「社会は生き物。自分たちの手でつくり変え、創造していけるもの。未来社会を担う一市民としての責任と自覚を地域社会から世界に繋いでほしい」と学生への思いを語っていました。

これからの“働き方

保育士の働きやすい環境づくりが、子どもたちの笑顔につながる

■学問大分類:教育・保育
■学問小分類:保育・幼児教育
■提供:静岡産業大学 経営学部

深刻な保育士の人材不足は、なぜ、起こるのだろうか?

近年、保育の現場では、保育士の負担の大きさが社会問題になっています。保育士の仕事は子どもと一緒に遊んだり、お昼寝したりと、のんびりしたイメージを持たれがちですが、実際は、子どものお昼寝中も書類の作成や会議への参加など多くの業務があります。また、発表会などがあれば、保育士は大好きな子どもたちのために、ついプライベートの時間を割いて衣装や小道具などを作ることも珍しくありません。
経営学部の山田悟史教授は「保育士は子どもたちの命を守る大事な仕事です。保育士が過度な負担で身を削るようでは、長続きするシステムとは言えない」と語ります。保育士のなり手が減ることは保育環境の悪化につながり、結果として子どものためになりません。
保育士の離職率を下げ、結婚や出産を理由に保育業から離れた潜在保育士がもう一度就業しやすくするためにも、保育士が全力で子どもたちに向き合える環境作りが重要になるでしょう。

これからの社会で求められるのは、保育士自身の多様性

山田教授の研究室では、保育士の髪色に関する研究を進めています。保育園や幼稚園は教育現場なので髪色は黒もしくは地毛の色とされている所も少なくありません。しかし、保育や教育の内容と保育士の髪色は本来関係がなく、大切なのは子どもや保護者がどう感じるか、です。
山田教授は「子どもたちにとって保育園は家庭の次に広がる社会です。子どもが憧れる保育士はもっと多様であるべきと考えます。子どもだけでなく保護者にも多様性のある環境でこそ、多様性を認める心が幼い頃から育まれていくのだと思います」と語ります。
髪色に限らず、保育士だから、あるいは教育者だからという理由で無意味に制約し、単一的になることは、子どもにも保育士にも良い影響を与えません。保育士が笑顔で働けるように改善できることは少しずつでも改善すべきであり、それがゆくゆくは保育士の人材確保や業務負担の軽減などにもつながるのではないでしょうか。

保育現場のICT技術導入により、子どもへの支援の質を高める

現在、保育園や幼稚園では業務の効率化や情報共有のためにICT技術の導入がすすめられており、山田教授もICT技術を使って保育士の負担を減らし、子どもたちへの支援の質を高めるための研究を考えています。
例えば、運動遊びを一から考えて計画書を作るのではなく、子どもの年齢や遊びの系統、時間などを組み合わせると遊びの内容がいくつか提示され、そこから適したものを選択すれば計画書が作られるプログラムやデータベースを構築することで業務負担の軽減を図れます。また、そのデータベースを各保育園や幼稚園からアクセスできるようにし、先生方が行った遊びの情報を蓄積することで、研修に行かなくても情報共有が可能です。
健全な保育環境を整えていくことは共働き世帯だけでなく、経済全体を支える重要な役割があることが認知されつつあります。保育士の労働環境の改善に向けた取り組みが、現代社会を支える力の一つとなっているのです。